総合的に目配せできるオーケストラ用プラグイン・エフェクト・バンドル

VIENNA SYMPHONIC LIBRARYVienna Suite
オーケストラ制作をサポートするプラグイン・バンドル

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Vienna Suite オープン・プライス(市場予想価格/65,100円前後)オーケストラ楽器ライブラリーで知られるブランド、VIENNA SYMPHONIC LIBRARYからオーケストラ専用プラグイン・エフェクトのバンドル、Vienna Suiteがリリース。日本でパッケージ版として発売されるのは初めてだが、実は筆者はダウンロード版でしばらく前から使用しているので、早速レポートしていこう。

部屋鳴りの新しい選択肢としてのリバーブ・プラグイン


Vienna Suiteはオーケストラ制作をサポートするプラグイン・バンドルで、コンボリューション・リバーブ(上の画面)、EQ、コンプレッサー、リミッター、マスターEQ、マルチバンド・リミッター、エキサイター、パワー・パン、アナライザーという9つがバンドルされている。全体的に"エグイ"タイプのプラグインではなく、印象ではコンボリューション・リバーブもかなり現実的な部屋鳴り感がするので、レコーディング・スタジオでストリングスなどのレコーディング経験が無いと、少々もの足りない感じかもしれない。しかし現実的に残響が3秒も残るようなレコーディング・スタジオというのは存在しないし、実際は1~1.8秒程度の残響の密度や質感に対して響きがあ~だこ~だという会話をしているのだ。筆者も最初に使用したときは"ん?ちょっと地味?"と思ったが、小編成の弦アレンジに使用したところアメリカのスタジオの"ウッディ"な響きを思い出した。また"VIENNA"="クラシック" のイメージが強いかもしれないが、最近の"北欧ジャズ系"の薫りもする。筆者の経験上では、編成の大きいアンサンブルほど、実はシンセでシミュレーションしやすい。編成が大きい→スコアリング・ステージも大きい→リバーブも長め、で聴感上違和感がないが、編成が小さいと長いリバーブは不似合いになるので、短いタイムの中の密度や質感がより重要になる。リバーブ・タイムを長く設定した音色も良いのだが、本誌読者はリバーブ・プラグインは複数所有しているだろうから、"部屋鳴り"の新しい選択肢として検討する価値があると思う。自宅で録音したアコギやボーカルに適度な部屋鳴りを足すのにもGOODだ。

リアルタイムがうれしい周波数スペクトラムの表示


EQについて、最初は"EQもいろいろ持っている"と思ったのだが、使ってみてナルホドと思った。まず一番の特徴がプラグイン・ウィンドウに周波数スペクトラムをリアルタイムで表示できること。オーケストレーションという作業は同じ音域のフレーズに、複数の楽器をレイヤーすることが頻繁にある。これは、そのフレーズを強調させるためというよりも、異なった楽器をブレンドして異なる音色を作り出すために行うのだ。その際、生楽器を使ったレコーディングとサンプリング・ライブラリーを使ったアレンジの一番の違いは、楽器同士での"溶け込み"具合である。生の演奏者は自分の演奏しているフレーズとユニゾンしている楽器があればそれを聴き取り、アンサンブルになるように自ら努めてくれる。ライブラリーの場合は、基本的にはそれぞれが"より本物らしく"を目指して制作されているので、楽器同士のまざり具合が生と同じようにはいかない。この周波数スペクトラムを監視できると、レイヤーしたことによってダブついている部分を即座に目視して修正することができる。シンセを使ってのオーケストレーションの場合はとにかく"引き算"のEQが大切。これはプロの現場的にはかなりポイントが高い。コンプレッサーで特筆すべきは"OPTO"スイッチ。説明するのは難しいのだが、息づかいを少々強調したいときにオン。マルチバンドのコンプレッサーでも似たような効果を引き出せないこともないが、不自然になりがちだ。エキサイターもこれまた絶妙。"COLOR"スライダーを100%にすると奇数ハーモニクスが、0%にすると偶数ハーモニクスだけを強調できる機能がある。大きい編成のアンサンブルの中で、今よりもう少し強調させたいと思っている楽器があるがレベルは上げたくない......そんなときの調整に有効だ。アナライザー(画面1)で一番気に入っているのが"NOTE"。これは入力信号の中で最も大きな音をノート名で示してくれる機能で、自分でアレンジした楽曲なら、"あ、バスーンとチェロがダブついてるな"とすぐに作曲家的に判断できる。打ち込みのオーケストレーションに精通した
VIENNAならではの現場レベルで非常に有効な機能だ。Vienna Suiteは、総合的に"帯域と位相"により精密に目配せできるような組み合わせになっている。

▲画面1 アナライザー。解析した中で一番大きい帯域の
音名(画面では"C#2")を表示してくれる


『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年12月号より)
VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
Vienna Suite
オープン・プライス (市場予想価格/ 65,100円前後)
▪Mac/Mac OS X 10.4以降(10.5対応)、PowerPC G5以上のCPU(INTEL Core 2 Duo/Xeon以上を推奨)、※Convolution ReverbのみPPCプロセッサー非対応、VST/AudioUnits/RTAS対応▪Windows/Windows XP/Vista(32ビット/64ビット)/Windows7、INTEL Pentium 4/AMDAthlon 64以上のCPUを推奨、VST対応