細かな演奏法のニュアンスも表現可能なパーカション・シンセサイザー - サンレコ〜音楽制作と音響のすべてを届けるメディア

KORGWavedrum

saidrum（ekoune sound）

パーカッション・シンセWavedrumを大幅に改良&進化させたニュー・モデル

KORG Wavedrum　オープン・プライス（市場予想価格／50,000円前後）1994年にKORGが発売したパーカッション・シンセWavedrumを大幅に改良&進化させたニュー・モデルが登場しました。音源部にDSPによるアルゴリズム36種類とPCM音源（ヘッド用100種類／リム用100種類）を組み込んだ斬新なパーカッション・シンセサイザーです。

出音も感度も良好　プリセット・サウンドは合計100種類

到着してすぐ電源を入れ、メイン出力をミキサーにつないで準備は完了。外観は初代のウッディなデザインから打って変わって近未来的な円盤のような感じで、重さは２kgとかなり軽量。254mmの皮張りのヘッド部と、それを取り囲むシルバーのリム部、それに左右のノッチ部をたたい
たりこすったり、押し込んだり、ひっかいたりして音を出すわけです。早速プリセットをポンポン変えながらたたいてみたところ、出音の素晴らしさとレスポンスの良さに思わず感動しました。"打てば響く"マシンとはまさにこのことでしょうか。ヘッドとリムの裏側に取り付けてあるピックアップのセンサーも感度がすこぶる良く、指やスティック、マレット、ブラシなどのたたく強さの度合いよって敏感に反応してくれます（指でこする動作まで）。ヘッドの中央や周縁など、たたく位置によってパーカッション内部の響きやピッチもごく自然に変化していき、"フィジカル性が全面に出た革新的な楽器"という印象を持ちました。プリセットは36アルゴリズム＋ヘッド／リム合わせて200種類のPCM音源で作られたものが100プログラム用意され、ポピュラーな打楽器のスネアやタムをシミュレートしたものから、トーキング・ドラムやアフリカン・マリンバ、ウォーター・ドラムなど個性的なパーカッション、スケールを設定してフレーズまで演奏できる琴やシタールまで世界中の多種多様な楽器の音色が収められています。弦楽器をたたいて弾くなんて普通はあり得ませんが、たたくことでスケールに合ったキーがランダムに発生したりもするんです。

音の合成や配置の割り当てなどプレイヤー独自のカスタムも可能

また資料によると、たたいた音に対してPCM音源とアルゴリズムの音色合成（アナログ、倍音加算、ノンリニアなど）が同時に使えるということで、例えばPCM音源はタブラ、アルゴリズムはシタールに設定して同時に発音させるなんていうことも可能です。これはヘッド部分とリム部分のそれぞれに対して設定することができるので、合計４個の音を組み合わせて多重演奏するというすごワザもできてしまいます。さらにアルゴリズム内部のパラメーターをエディットすることで、現実には存在しないようなオリジナルの楽器にしてしまうことも可能。例えばヘッド側をジェンベ＋スティール・ドラム、リム側をカリンバ＋トライアングルという組み合わせにすれば、ヘッドを弱くたたいているときはジャンベだけが鳴り、強くたたくとスティール・ドラムが混ざってくるなんていう設定もできるのです。さらにリム側のトライアングルをシミュレートしているアルゴリズムのディケイを最大にして金属系のドローンな持続音に変化させたり、本機内蔵のリバーブやディレイを駆使することで１台で極めて自由度の高い表現が可能です。内蔵の圧力センサーも優れていて、ヘッドをグッと押し込むことでたたいた音とは違う効果を得ることができます。例えばアルゴリズムを"Tabla"に設定してみると、軽くたたいているときは高
音部のタブラ音だけが発生し、ヘッドの中央をグッと押し込むと低音部のバヤの音がボヨ～ンと出てきます。さらにこのヘッドを押し込んだときのピッチの変化の仕方や胴鳴りの音の余韻の長さなども好みに応じてパラメーターで調整することができます。こういったところの音の出し方はプレイヤーの熟練度具合によって違ってくると思うのですが、もはやそういう音も自ら調整することでよりイメージに近い演奏が可能なのです。個人的に好みだったのは、主に陶器や金属のつぼ、梵鐘（ぼんしょう）をアルゴリズムでシミュレートしたもの。ダイナミック・レンジが広いので深い響きと共に倍音成分も非常に気持ちいいです。そのほか、ウォーター・ドラムをシミュレートした音などは筒の中を流れる水の量や筒の口径まで調節可能で、気付けばその土地の人になった気分で無心になって楽しんでしまいました。とにかく手軽で持ち運びが楽、どんなシチュエーションにも対応できてしまう楽器です。