USBデバイスも再生メディアに利用可能なCDJシリーズ最新機種

PIONEERCDJ-2000
ディスクがなくてもプレイ可能なCDJ

PIONEER CDJ-2000 オープン・プライス(市場予想価格/185,000円前後)プレイバック1994年、DJといえばバイナル・オンリーの時代に登場したCDJ-50から15年の月日がたちました。スクラッチ?できますけど、それがなにか? 2001年のCDJ-1000の登場で世界中のDJブース内のアナログ派、CD派の形勢は見事に逆転。DJミキサー、DJMシリーズとともにPIONEERが提案した新しいスタイルは世界中のDJに受け入れられ、クラブに革命を起こしました。そして進化し続けたCDJ-1000シリーズに変わって登場したのが、このCDJ-2000です。千の位が変わるってことは間違いなく新たな革命。そして2000ってのは小生ら20世紀少年にとってはいまだに未来への夢の記号ですからね。期待が膨らみます。

多彩な情報を表示可能なディスプレイ 瞬時に任意の個所へ飛べる新機能


早速、本機をあえてマニュアルも一切読まずに現場に持ち込み触れ合ってまいりました(写真1)。

▲写真1 DJプレイ中の筆者とCDJ-2000。ジョグ・ダイアルのほか主要な操作子が明るく点灯、ディスプレイの大きさも含めて操作性向上に貢献している


設置されていたCDJ-1000MK2とケーブルを差し替え、まずはセッティング。写真で見たときはそのディスプレイの大きさから、結構デカイだろうなと思っていたのですが、大きさもCDJ-1000とほぼ同じです。今までのボタンなどのレイアウトもほぼ同じ個所にあるので、初めてこれが現場に置いてあっても問題なく使うことができます。WAVの音源でまとめられている小生のディスクを挿入してみると、今までは一つ一つ切り替えないと見ることができなかったトラック名や時間表示、WAVE表示が大きなカラー・ディスプレイで一望できることに感動しました。トラック・リストも同時に6曲まで見ることができます(写真2)。

▲写真2 ディスプレイは見やすいカラー仕様。トラック・リストは6曲まで一度に表示され、タイトルなどはもちろんBPMやジャケットまで表示される


そのディスプレイ横に新設されたダイアルを回してみるとカーソルが次曲に移動するという仕組み。しかも、ディスプレイの右側には選択したトラックのタイトルはもちろん、BPMやアーティスト名、アルバム名、さらにはジャケット(カラー!)まで表示されます。コメントも書き込めるようになっているので、これは役に立ちそうです。そして触ってみたくなるのが、新たな機能として搭載されたWAVE表示の下にあるNEEDLE SEARCHという横長のタッチ・パネル(写真3)。

▲写真3 ディスプレイの下にある目盛りのついたタッチ・パッドがNEEDLE SEARCH。上のWAVE表示を見ながら、タッチすれば任意の個所をすぐにモニターできる


これ便利ですよ。今までは、"この曲ってブレイク後はどんな感じだったっけ?"ってときは一時停止ボタン押してから、SEARCHの早送りボタンでモニターしながらその個所が来るまでひたすら長押ししていたのですが、これだとWAVE表示を見ながら指先一つでピッとその個所まで一瞬で行ったり来たりできます。こうやってできた新たな浮いた時間でいくつもの新たなアイディアが生まれることでしょう。そして目新しいのはLOOP IN OUTボタンの下の4-BEAT LOOPというボタンです。試しに小節の頭で押してみると、そこから自動的に4拍のループになりました。スゴイ。そしてこのボタンにはLOOP CUTTERとも書いてありますので、もう一度押してみます。なんと4拍のループが2拍に!これはDJMシリーズのエフェクト、ROLLですね。この音にフロアも反応してきたのでミキサーでローをカットしディレイで飛ばしつつ、もう一回LOOP CUTTERをポチッと押せば、ブレイクの完成です。この機能も素晴らしいです。今までDJMのマスターでかけたROLLで同じことをやるとEQが効かなかったのですが、直接CDJでできることになったことで、DJMのエフェクトやEQが使えます。これはデカイですね。一晩で使えるアイディアとスキルが増えて興奮しました。現場も無事大盛り上がりで終了したことですし、本機の"2000"たるさらにすごい部分を語ろうではありませんか。

CUEポイントなどの仕込みも可能な付属ソフトRekordbox


本機はCD/DVDという既存メディアに加え
て、USBメモリー、USBハード・ディスク、そしてSDカード内のオーディオ・ファイルを再生可能になりました。小生のプレイは現在、100%デジタルなんですが、トラックをダウンロードで購入したり、制作したトラックをファイル・サーバーで受け渡したりと、ここまでは"なんか、おれって21世紀に生きてんなあ"って感じなんですが、最後のCDに焼くって行為だけが、過去に戻るというか、なんだか未来っぽくねえなあと感じていたんです。それゆえに、きっとやがてはコンピューターでDJすることになるだろうと思っていました。しかし、制作時にはコンピューターの波形を見ながら眉間にシワを寄せながら作業をしていることもあり、"DJはコンピューターでやりたくないなあ"というたそがれ気分を、本機は見事に解消してくれました。本機は直接USBハード・ディスクやUSBメモリーから楽曲を読み込み、プレイできるのですからまさに革命です。政府はエコポイント付けてもいいんじゃないでしょうか。さらに付属の楽曲管理ソフトRekordbox、この存在もデカイです(画面1)。

▲画面1 付属ソフト、Rekordbox。WindowsとMac双方に対応しており、プレイリストの作成、CUEやLOOPなどのポイント設定などが可能。逆に、CDJ-2000でプレイした楽曲の履歴やCUE情報などをRekordboxへフィードバックすることもできる


名前もヤバイですが、DJ魂を刺激する作りになっており、本機を120%使い切るには必要不可欠であります。ビジュアルもコンピューター内のCDJ-2000といった趣きでデザインもカッコイイです。コンピューター内のAPPLE iTunesの楽曲はもちろん、プレイリストも瞬時に読み込めます。USBデバイスへの書き込みも簡単に行えます。楽曲管理ソフトというだけあって、非常にシンプルな作りで無駄な機能がないのが本当に使いやすいです。まさにその名の通り、自宅のレコード棚からDJバックに詰め込んで出かける感覚そのものです。その昔、レコードの頭にシールをはっていたような感覚で、CUEポイントやループの設定といった仕込みをして、そのデータをSDカードやUSBメモリーに詰め込んで現場へゴー。プレイ後は選曲履歴を持ち帰り、MySpaceなどにプレイリストなんかも正確にアップできます。移動時間が長いDJ稼業にはホントいいソフトです。現在、小生はプレイの際に同じトラック・リストのディスクを2枚ずつ現場に持って行くのですが、本機はそれも解放してくれました。LAN接続にてCDJ-2000(または弟分のCDJ-900)を接続することにより、USBデバイス内の楽曲ファイルを共有できるのです。小生のような昭和の男は、ついさっきまで同じ内容のUSBメモリーを2個持って行かなくちゃと思っていたのですが、この機能を使えばなんと1個でいい。2台あれば、別のUSBメモリーを挿せるんで、これまたいろいろなアイディアが出てきそうですね。このリンク機能、市販のスイッチング・ハブを使えば最大で4台まで接続できるので、グループでDJユニットなんかやってるチームには持ってこいでしょうし、バック2バックなんかも突然、人のネタも使うこともできちゃうんで、盛り上がりそうですね。そして極めつけはこの機能、スイッチング・ハブを使ってコンピューターと本機を直接LANケーブルでつないで、楽曲ファイルをロードしたり、プレイができるようになるそうです(12月以降に予定されているアップデートで可能になるとのこと)。そのほか、本機はボタンやテンポ調節つまみなどの操作情報をMIDI出力できるので、USBでコンピューターと接続してDJソフトのコントローラーとしても使うことができます。CDJなのにディスクがなくてもOKって、完全にああ未来、2000ッス。本機の登場により、DJはCD-RやDVDなどのメディアの特性や劣化に左右されることなく常に最高の音質でプレイすることができます。昔、"むじんくん"のCMでUFOの中でDJやってるやつがありましたが、まさにそんな感じです。DJソフトともまた違うスタイルの提案で、小生は大賛成です。ラララ~。

▲リア・パネル。左からメイン出力R/L(RCAピン)、コントロール端子、S/P DIFデジタル出力(コアキシャル)、LINK端子、USB


『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年12月号より)
PIONEER
CDJ-2000
オープン・プライス (市場予想価格/185,000円前後)
▪再生可能メディア&ファイル/CD/CD-R/CD-R W/DVD±R/DVD±RW/DVD±R-DL/USBデバイス/SDメモリーカード、MP3/AAC/WAV/AIFF▪USBストレージ対応ファイル・システム/FAT12/FAT16/FAT32/HFS+▪周波数特性/4Hz〜20kHz▪SN比/115dB以上▪全高調波歪率/0.0018%▪外形寸法/320(W)×405.7(D)×106.4(H)mm▪重量/4.6kg