女性ボーカルに最適化されたハンドヘルド型のコンデンサー・マイク

NEUMANNKMS 104 Plus
従来モデルであるKMS 104に比べ低域の特性が見直され、ロックおよびポップスなどでの女性ボーカリストに適したマイク

NEUMANN KMS 104 Plus 91,350円今回紹介するマイクのNEUMANN KMS 104 Plusは、従来モデルであるKMS 104に比べ低域の特性が見直され、ロックおよびポップスなどでの女性ボーカリストに適したマイクとなっているそうです。世界のスタジオで圧倒的なシェアを誇るNEUMANNが、ステージ向けハンドヘルド型コンデンサー・マイクをブラッシュアップしてきたということで、自然に期待も高まります。

低域から高域までスムーズな出音 近接効果もごく自然な印象


KMSシリーズは、ライブ・ステージ向けのボーカル用に設計されたコンデンサー・マイクです。データ・シートによれば、このKMS 104 Plusは単一指向で、150Hz過ぎから緩やかにロールオフしており、5cm以内の距離では近接効果が強くなっています。また、今回試したのはシルバー・モデルですが、ブラック・モデルもあります。マイクの表面は高級感漂う梨地仕上げで、汗をかいても滑りにくくなっています。持った感じですが、これぞハンドヘルドといった感じで太過ぎず細過ぎず、片手でしっかりとホールドできます。重量も安心できる重さで、長時間使用しても疲れにくいと思います。付属のホルダーは小ぶりで、"挿し込む"というよりも上から"はめ込む"タイプのようです。ただし、マイクの太さ自体は他社のダイナミック・マイクと同等ということもあり、どこの会場に行ってもホルダーで困ることは無さそうです。早速、自分の声(34歳男)で音を出してみました。さすがはNEUMANN、低域から高域までスムーズに出ます。近接効果が強いという話でしたが、ごくごく自然で、口をグリルに密着させてもブーミーな感じにはなりません。グリル内には比較的厚めのスポンジが封入されているのですが、それによる高域の減衰はみじんも感じられず、ポップ・ノイズを効果的に抑えてくれます。

ハンドリング・ノイズの少なさは特筆もの 芯のあるしっかりとした中低域


次に、女性ボーカル向けということでバンド・スタイルの女性ボーカリスト2名に使ってもらいました。まずはハンド・マイクで歌うポップス系の方で試してみたのですが、最初に気付いたのはハンドリング・ノイズの少なさです。通常使用ではほとんどノイズらしいノイズは聴こえませんし、MCをしながらスタンドに装着するような場面でもほとんど気になりませんでした。数々のボーカル・マイクを使ってきましたが、このハンドリング・ノイズの少なさは特筆ものです。また、このボーカリストはステージ上を動き回るのですが、単一指向ということもあり、多少正面から外れることがあってもしっかり音を拾ってくれます。しかし音の回り込みは最小限で、ハウリング・マージンも十分にあります。バラードのAメロのようなウィスパーに近い歌い方でも埋もれることなく、輪郭がしっかりしています。続いてスタンドへ装着した状態で、ロック系のギター/ボーカルの方に使ってもらいました。このボーカリストは常にグリルへ密着して歌うタイプなのですが、素晴らしい低域が拾えます。世の中のマイクは高域を奇麗に収音するマイクは数多く、それが場合によっては耳障りなこともあるのですが、このKMS 104 Plusはすごく自然です。キンキンした感じもせず、音程感のしっかりした低域と空気感のある高域を拾ってくれます。
ボーカリスト本人にも好評でした。自然な近接効果と単一指向のおかげで、歌うポイントや距離をさほど気にせず、歌うことに集中できるという評価を頂きました。試しにハイトーン・ボイスの男性ボーカルにも使ってみました。バンド・サウンドに埋もれがちなボーカルなのですが、ハイトーンを犠牲にすることなく、芯のあるしっかりした中低域を拾うことに成功しました。ついでと言っては何ですが、ギター・アンプにも使ってみました。SHURE SM57と2本立てで使用したのですが、程良い空気感のおかげでバッキング・パートではバンドになじませやすく音圧もしっかりしていますので、KMS 104 Plus1本で十分です。ソロ・パートになったらSM57を足し、多少浮かせるという使い方が僕の手法にぴったりハマリました。総合すると、やはり女性ボーカルのような芯を出しにくいボーカルに向いている印象です。しかしながらオールマイティに使える地力を持った素晴らしいマイクです。低域から高域まで自然に拾う周波数特性、ブーミーに決してならない近接効果、ハンドリング・ノイズの少なさ、どこを見ても欠点らしい欠点は見つかりません。あえて挙げるとすれば価格でしょうか。しかしコスト・パフォーマンスは決して低くありません。というより、価格以上の働きを見せてくれます。時間があればレコーディングにも使用してみたかったのですが......きっと予想以上の性能を発揮してくれると思います。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年10月号より)
NEUMANN
KMS 104 Plus
91,350円
▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪指向性/単一▪ダイナミック・レンジ/132dB▪最大音圧/150dB(THD:0.5%)▪外形寸法/48(φ)×180(H)mm▪重量/300g