手のひらサイズを実現した1イン/2アウトの高音質USBオーディオI/O

APOGEEOne
旅先、出先のセッションなどに手軽に持ち歩くのにベストなオーディオ・インターフェース

APOGEE One 29,800円もともとAPOGEEの製品は僕の回りでは結構人気がありました。かくいう僕も音質の温かい感じが好きだったので、かねてから"使ってみたい"と思っていました。まず本機のデザイン、すごくいいっすねぇ......この色、サイズ、軽さ、機材っぽくないので、持ち歩いていても仕事気分にならないところもいいですね。

本体にマイクを内蔵し、とっさのレコーディングにも対応


本体トップ・パネルには、同社のFireWireインターフェースのDuetと同じように、真ん中に大きなエンコーダー・ノブが付いていて、あとは入力と出力のレベルを確認できるLEDインジケーターがあるくらい。このノブは押し込むことでスイッチも兼ねていて、入出力の切り替えも可能です。リア・パネルにはUSBポートとブレークアウト・ケーブル・ポート、フロント・パネルにはヘッドフォン/スピーカー用の出力端子(ステレオ・ミニ)があるのみ。またDuetにも付属したコントロール用のソフト、Apogee Maestroも付属します。また本機はMac専用で、使用するときはドライバー・ソフトをインストールしたコンピューターとUSB 1.1で接続するだけ。電源もバスパワーで供給されますので、電源アダプターも必要なく、最大24ビット/48kHzで録音することが可能(サンプリング・レートは44.1/48kHzから選択)。ちなみにコンピューターのシステム必要条件はINTELもしくはPowerPC G5プロセッサー搭載のMacで、OS X 10.5.7以上となっています。機能面を見ていきましょう。入力は1チャンネル、マイク/ライン(Hi-Z対応)から選択。実際の接続はブレークアウト・ケーブルを介してマイクはXLR、楽器類はフォーンにて行います。マイク入力はファンタム電源も搭載しているので、コンデンサー・マイクも使用可能。それに加え、本体にエレクトリック・コンデンサー・マイクも備えているので、軽いバンドのセッションも、ささっと高品質な音でレコーディングすることができます。このとき、セッション中に急に盛り上がってできた曲やギターのフレーズ、ボーカルのフロウなどもそのまま内蔵マイクで録っておけば、そのまんま後で本番テイクの素材としても使えちゃいますね。それら録音レベルの調節も、フロント・パネルのエンコーダー・ノブを回すだけ。いちいちアプリケーション画面をコンピューターの画面側で開く必要はありません。先述した通り、マイク/ラインの入力の切り替えもこのエンコーダー・ノブで行います。実に直感的! クール!そして出力はヘッドフォン・アウトとスピーカー・アウト両対応となっています。出力レベルも録音レベルのときと一緒で、エンコーダー・ノブを長押しして切り替え、ノブを回すだけ。また、エンコーダー・ノブを約1秒間押し続ければ、出力をミュートすることも可能。とにかく、すべての操作がこのノブでできてしまうのです。

アナログ・シンセやベースに合う温かみのあるサウンドの質感


それではいよいよ実際に使っていきましょう。今回はアナログ・シンセで試してみます。まず、普段筆者が所有するオーディオ・インターフェースを使って、シーケンスで鳴らしたアナログ・シンセなどを録音するとき、少なからずオーディオのタイミングが後ろにずれてしまうことがあるのですが、本機はそれもあまり気にならず、タイミングが合う感じ。また、そういったときに使用しているアナログ・シンセはMOOGやDOEPFER A-100が多いのですが、これらは直接プレイバックしているときとレコーディングした後では音質が変わって聴こえてしまうことも多いのです。特にサイン波の包み込むような質感は、オーディオ・インターフェースに実装されるマイクプリの個性に左右されやすいものの1つだと思っているのですが、本機を使って録音したところ、独特の温かみがありカチカチしない感じのサウンドが好印象でした。シンセにとどまらず、ベース系のふくよかな音を録音するようなときにはもってこいだと思います。機会があれば、エレキギターやベースも試してみたいですね。基本的に、すべての作業を少ないツマミでアクセスできるように、シンプルな作りにこだわっているように思えます。ゆえに、ポケットに入れて持ち歩けるサイズに収まっちゃっているわけです。全くかさばらないので、旅先、出先のセッションなどに手軽に持ち歩くのには本当にベストなオーディオ・インターフェースだと思いました。いやいや、こんなに小さいのに、やってくれます。言うなれば"ヘビー級の技を出せるライト級ファイター"って感じですかね。

▲入力部。左がブレークアウト・ケーブル・ポート、右がUSBポート(USB 1.1)



▲出力部。ヘッドフォン/スピーカー出力(ステレオ・ミニ)は共用


『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年10月号より)
APOGEE
One
29,800円
▪ビット・レート/24ビット▪サンプリング・レート/44.1kHz/48kHz▪付属品/USBケーブル、ブレークアウト・ケーブル、Apogee Maestro▪外形寸法/280(W)×190(D)×74(H)mm▪重量/0.6kg

▪Mac/INTELもしくはPower PC G5プロセッサー搭載でMac OS X 10.5.7以上、最低1GB以上の空き容量(2GB以上推奨)