名門ピアノ・ブランドの最高機種を精密にサンプリングしたソフト音源

VIENNA SYMPHONIC LIBRARYVienna Imperial
大容量ピアノ・サンプリング音源のメルクマールとなるであろう、最高峰の名にふさわしい製品

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Vienna Imperial オープン・プライス(市場予想価格/94,500円前後)高品質な大容量オーケストラ・ライブラリーで知られるVIENNA SYMPHONIC LIBRARYの新製品は、気合いの入ったピアノ・ソフト音源だ。タイトルにあるように、ウィーンの名門ピアノ・ブランドBÖSENDORFERの最上位モデル、Imperial Model 290-755を収録。元になったピアノといい、収録内容の充実ぶりといい、最高峰の名にふさわしい製品となっている。

1音当たり約1,200種類 実質約500GBものサンプルを収録


大容量ピアノ音源という割に、本ソフトのディスク容量はDVD6枚とCD-ROM1枚で計50GB。意外に思う向きもあるかもしれないが、これは独自の圧縮技術によるもので、付属の専用プレーヤー・ソフト(Windows XP/Vista/Windows7、Mac OS X 10.5以上対応)により、解凍しながら再生することで500GB相当の容量を実現している。もちろん、このプレーヤーはスタンドアローンだけではなく、プラグインでの使用も可能で、VST/Audio Units/RTASに対応する。単に容量だけでなく、その内容もすさまじい。サンプル録音には、特別な光学センサーと自動演奏機構を使用し、人の演奏では不可能な等間隔100段階ベロシティによるサンプルを実現。さらに、リリース・サンプルでは強さだけでなく、音の長さ別にサンプリングしている。これにより、まだ十分に弦が鳴っている状態から、弱く消えるように音が無くなる直前の消音まで忠実に再現している。さらに、他弦の共鳴も、同時にどの弦が押されているかの違いごとに収録。もちろん、ダンパー・ペダルを踏んだ状態も再現する。これらのサウンドを、オンマイク(ボディ内)、オフマイク(観客の位置)、プレイヤー(演奏者位置)の3個所で収録。その結果、1音当たりのサンプル数は最大1,200にも及ぶ。1機種のピアノに500GBも使用しているのもうなずける内容だ。

音質はBÖSENDORFERらしい乾いた木質感を再現


サウンドはさすがというか当然というか、非常に優れている。シンプルな単音による演奏でも、細かく設定されたベロシティ・レイヤーとリリース・サンプルによる生々しさは、サンプリング特有の単調さとは無縁。さらに両手を使うような演奏では、押さえている弦により刻々と残響状態が変化し、実にピアノらしいサウンドが楽しめる。また3ポジションのサウンドも、それぞれ説得力がある。オンマイクは、いかにもレコーディングといったサウンドで、各音域の位相もよくそろっている。プレイヤー位置でのサウンドは、ピアノを弾く人にとってはなじみ深い、眼前にピアノがあるかのようなサウンド。オーディエンス位置のサウンドは、基本的にデッドでアンビエントは少なめで、ピアノ自体の鳴りをたっぷりと録っているのが好ましい。いずれもサンプリング・リバーブとの相性が良く、試しにかけてみたところ、非常に良い結果が得られた。全体的な音色だが、やはりBÖSENDORFERらしく、カラっと乾いた木質感が美しい。高音域は輝かしく典雅、中音域は転がるように軽やかで、低音域は堂々と真っ直ぐに音が伸びる。Imperialならではの、下に8鍵付け足された拡張低音域も実にたくみに収録されている。BÖSENDORFERというと、クラシック向けのイメージを持っている人が多いかもしれないが、この軽く華やかなサウンドはポップスにも良く合うだろう。こういったサンプリング音源の場合、原理的に楽器そのものの音ではなく、誰かが弾いたその楽器の音を演奏することになる。つまり、ピアノの場合は、ピアノそのものではなく、誰かの弾いたピアノというわけだ。その場合、当然タッチ、特に指と鍵盤の当たる音の質や、鍵盤を押し込む深さが問題になる。例えば、非常に硬質なタッチによって演奏されたピアノ・サンプルは、やはりどのように演奏しても硬質なタッチになるし、逆もまたしかり。筆者自身、製品としては丁寧に作られていても、タッチがどうしても気に食わなくて、購入したもののほとんど使っていないピアノ音源があった
りする。しかし本ソフトの場合、演奏は機械的に鍵盤を下げるソレノイド機構によるので、基本的にはタッチを持たない。また、押し下げる深さもよくそろっている。そのため、演奏者のコントロールできる範囲が広く、演奏による自由度がとても大きい。ピアノだから実現できたサンプリングの方式だが、今後のサンプリング音源を考える上でも、非
常に興味深い製品といえるだろう。あらゆる意味で、大容量ピアノ・サンプリング音源のメルクマールとなるだろう製品、ぜひ一度耳にしてみてほしい。なお、この細かいベロシティやリリース・サンプルを体感するためにも、試奏は、良質なピアノ・タッチのマスター・キーボードで行うことを強くお勧めしたい。
VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
Vienna Imperial
オープン・プライス (市場予想価格/ 94,500円前後)
▪容量/50GB▪パッケージ/DVD-ROM6枚+CD-ROM1枚

▪Windows/Windows XP/Vista32ビット版/Vista64ビット版/Windows7、INTEL Core Duo/AMD 3GHz以上を推奨、3GB以上のメモリーで1.5GB以上の空き容量、VST2.4/RTAS/スタンドアローン対応 ▪Mac/Mac OS X 10.5以降のマシン、INTEL Core Duo以上を推奨、3GB以上のメモリーで1.5GB以上の空き容量、VST2.4/RTAS/Audio Units/スタンドアローン対応