ワイアレス・コントローラーで遠隔ミックスもできる新鋭DJツール

WACOMNextbeat X-1000
タッチ・センサー技術を投入し、全く新しい演奏スタイルを可能にしたデジタルDJツール

WACOM Nextbeat X-1000 169,800円ペンタブレットで有名なWACOMが独自のタッチ・センサー技術を投入し、全く新しい演奏スタイルを可能にしたデジタルDJツール=Nextbeat X-1000をリリースした。既に多くのDJの間で話題の本機は、ファイル・プレーヤー、DJミキサー、エフェクター、サンプラーのオールインワン化に加え、本体の一部をワイアレス・リモコンとして取り外せる意欲的なツールだ。

取り外し可能なコントローラー部 3バンドEQやエフェクトも完備


外観はマットなブラックでとてもスタイリッシュ!! 本体はほぼアナログLPジャケットと同サイズで、レコード・バッグにも入る大きさだ。重量も軽いため、持ち運びも全然苦ではないだろう。パネルは大きく分けて左側がプレーヤー部、右側がコントローラー部。プレーヤー部でチャンネルA&チャンネルBに楽曲を割り当てて再生するのだが、視認性の良い大型液晶ディスプレイを搭載しているため、トラック名や時間、波形の状態、BPMなどプレイ中に必要な情報が一目で確認できる。また、ディスプレイではチャンネルAに関する情報をオレンジ、チャンネルBの情報をグリーンで表示するのだが、これは各種ボタンやツマミに至るまで共通しており、この色分けが操作性を向上させている。再生できる楽曲ファイルは最高24ビット/48kHzのWAV/AIFFのほか、MP3やAACなどのフォーマットにも対応。本体にハード・ディスクは内蔵されておらず、ファイルの再生にはコンパクト・フラッシュを挿して使う(64GBまでサポート)。ちなみに本機をUSBでパソコンにつなげれば、簡単にパソコン上の楽曲ファイルをコンパクト・フラッシュへ送ることも可能だ。続いてコントローラー部を見ていこう。前述したタッチ・センサーは指圧と指座標の高速検知が可能になっており、実に細かく自在にコントロールできる。中央がいわゆるターンテーブルで(と言っても実際には回らない)、外周にピッチ/ボリューム/クロスフェーダーが配置されていて、A/Bボタンでチャンネルを切り替えながら調整。 このターンテーブルを指で操作しながらミックスしていく流れだ。ターンテーブル上部には3バンドEQのほかにローパス&ハイパス・フィルター/ディレイ/フランジャー/フェイザー/リバーブの6種類のエフェクトも用意されている。これらはチャンネルA/B個別、もしくはマスター・チャンネルに切り替えでかけることができる。そして最大の目玉は、パネル右上の"GO!"ボタンを押すと、このコントローラー部をリモコンとして取り外せること。ワイアレス通信距離は約15mで、DJブースを飛び出してプレイできるなど、既存のDJのプレイスタイル自体を激変させる可能性を秘めているのだ。

高精度タッチ・センサーで直感的に操作 大バコでも映える音圧も素晴らしい


では、実際に現場でプレイ。接続端子類は、デジタル出力(コアキシャル)とマスター出力に加えて、チャンネルA/Bの各出力も用意。またマイク入力とヘッドフォン端子はフロント側に付いていて操作性を考えた仕様になっている。実際に操作してみると、ターンテーブル/ミキサー/エフェクターの各操作において、タッチ・センサーがうまく機能しているのが分かる。ターンテーブルは触れる指が1本ならピッチ操作、2本ならグラブ操作ができ、スクラッチしながらの頭出しも可能。一時停止中はターンテーブル1周を1曲の長さとして現すため、ダブル・タップで 頭出しや任意のポイントへジャンプもできる。またCONTROLツマミを押し込むと、ターンテーブルがエフェクト・コントローラーに切り替わり、指を回転させるスピードや方向に応じてパラメーターを操作できる。なお、リモコン時のコントローラー部に関しては、操作のレイテンシーは10ms未満に抑えてられているという。確かに反応の遅 れはほとんど感じない。リモコンの動力は単三乾電池×4本で約5時間稼働するので十分だろう。そして、特筆すべきはサウンド出力がとてもしっかりしていること。大バコで鳴らしても、某CDターンテーブルに引けを取らない音圧で、バッチリ"クラブ・サウンド"を演出できた。タッチ・センサーやワイアレスを生かした操作感、そして多機能を一台に盛り込んだ本機は、これらからのDJスタイルを変えていくだろう。私自身、プレイ中にそれを肌で感じることができた。それはアナログ/CDターンテーブルを初めて扱ったときのあの震えるような感動を味わうことができたからだ。

▲リア・パネル。左からチャンネルA/B出力とマスター出力(すべてRCAピン)、デジタル・アウト(コアキシャル)、コンパクト・フラッシュ・スロット、USB。ヘッドフォン端子はフロントに用意


『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年10月号より)撮影/川村容一
WACOM
Nextbeat X-1000
169,800円
▪周波数特性(1kHz、-20dB)/マスター出力:20Hz~20kHz(±0.5dB)、ヘッドフォン出力:20Hz~20kHz(±1dB)▪対応ファイル形式/WAV、AIFF(共に最大24ビット/48kHz)、MP3、AAC-LC▪外形寸法/300(W)×85(H)×300(D)mm▪重量/2.5kg