ALESISMasterControl
DAWを核とした次世代のオールインワン・スタジオ
ALESIS MasterControl 124,950円筆者が初めて就職したスタジオは、当時ではまだ珍しかったプロダクション所有の小規模なスタジオでした。SSLの卓やSONY PCM-3348は無くとも、ALESIS ADATを駆使して大手スタジオに引けを取らない作品を送り出してきました。そのADATでスタジオの方向性に革命を起こしたALESISがDAWを核とした次世代のオールインワン・スタジオとも言えるMasterControlを発表。我が青春を捧げたALESIS製品の実力を、早速検証していきたいと思います。
26イン／６アウトとパワフルな入出力 ヘッドフォン出力も２系統装備
MasterControlは多彩な機能があるので、まずは概要を説明します。本機はFireWire接続のオーディオ・インターフェースとフィジカル・コントローラー、コントロール・ルーム・セクションが一体化した製品で、オーディオI/O部は最高24ビット／192kHzに対応。入出力はファンタム電源とインサートが付いたMIC/LINE入力×２、LINE入力（TRSフォーン）×６のアナログ８ch＋S/P DIF、S/MUX対応のADAT入力２系統（S/P DIFとADAT１系統はどちらかを選択）の最大26イン、LINE出力（TRSフォーン）×６とパワフル。HUIモード対応のコントローラー部は、100mmモーター・フェーダー×８＋マスターの計９本を装備。各チャンネルには３バンク切り替え可能なロータリー・エンコーダー、セレクト／ミュート／ソロ／録音待機の各ボタン、ほかにアサイナブルなボタンが８個×2バンク用意されています。コントロール・ルーム・セクションは２系統のヘッドフォン出力やDAWからの信号を自由に割り当てられる出力、スピーカー切り替え専用ボタン、トークバック機能などスタジオワークで重要な部分をしっかりとサポートしています。
パキッとした中高域が今っぽいマイク・プリアンプ
ここからは"自宅でのボーカル・レコーディングおよびミックス"を想定して検証していきます。今回はコンピューターの置いてある部屋をコントロール・ルーム、隣の部屋をブースに見立てたので、６系統ある出力の1-2をモニター・スピーカー、3-4をブースの小型ミキサーへの２ミックス送り、５を単独送りに設定しました。そしてブースにコンデンサー・マイクを立てて本機のファンタム電源付きのマイクプリに接続といった感じで、手早くセッティングは完了。さて実際にレコーディングしてみます。マイクプリの音の印象は非常にクリア。パキッとした中高域は最近の音楽の傾向によくマッチしていると感じました。トークバック機能を使えばブースとのやり取りがストレス無く可能で、コントロール・ルームでは本機のノブでモニター・スピーカーの音量を調整したり、オケのバランスをフェーダーで調整したり、トランスポートを使ってパンチインや設定したマーカーへ早送り／巻き戻しなど、普段我々が行っているスタジオワークを自宅環境で、しかも１台で構築できる時代が来たのかと非常に感慨深いものがありました。さて無事レコーディングも終わったので、ここからはミックス開始です。ミックス時は複数のスピーカーで確認をしながら調整をしていきたいので、GLOBALメニューからOUTPUT A/B/CをDAW OUTの1-2に設定し、今回はAをパワード・モニター、BをYAMAHA NS-10M、Cをラジカセに接続し、切り替えて作業しました。フェーダーの感触は軽過ぎずちょうどいい感じで、レスポンスも非常に良好。センドなどをアサインしたノブも少し重めものが採用されており、微調整に向いた作りだと感じました。今回は自宅録音を例に挙げて検証しましたが、筆者は最近、生楽器＆打ち込みのバンドのステージでマニュピレートする機会が多く、ライブ中にDAWを使ってリアルタイムでバランス取りやエフェクト処理を行いたいと考えていたので、本機には非常に興味を持ちました。まだまだ紹介しきれないくらい豊富な機能があるので、店頭のデモ機などに触れて、体験してみてください。
▲リア・パネル。左よりGAINノブ、MIC/LINE入力（XLR／TRSフォーン・コンボ）、INSERT（TRSフォーン）が各２系統、LINE INPUT（TRSフォーン）×６、MON/LINE OUT（TRSフォーン）×６、ヘッドフォン出力×２、フット・スイッチ用端子（フォーン）、MIDI IN/OUT、ADAT入力（オプティカル）×２、S/P DIF入力（コアキシャル）×１、FireWire端子×２
（『サウンド＆レコーディング・マガジン』2009年9月号より）撮影／川村容一（トップ・パネル）
ALESIS
MasterControl
124,950円
▪ゲイン・レンジ／＋9.1dB〜＋59.2dB（マイク・プリアンプ）、−7dB〜43.1dB（ライン・プリアンプ）▪外形寸法／486（Ｗ）×95（H）×368（D）mm▪重量／3.5kg
▪Windows／Windows XP/Vista、INTEL Pentium 4 3GHz以上のCPU、512MB以上のRAM▪Mac／Mac OS X 10.4以上、Power PC G5以上（INTEL Mac対応）、512MB以上のRAM
