専用DSP搭載でバーチャル・モニター機能などが使えるオーディオI/O

FOCUSRITESaffire Pro 24 DSP
専用DSPを搭載し、入力エフェクトとモニター・リバーブおよびVRM(バーチャル・リファレンス・モニタリング)機能を有した上位機種

FOCUSRITE Saffire Pro 24 DSP オープン・プライス(市場予想価格/44,800円前後)FOCUSRITEから16イン/8アウト、24ビット/96kHz対応のFireWireオーディオ・インターフェース、Saffire Pro 24シリーズが発売された。今回は専用DSPを搭載し、入力エフェクトとモニター・リバーブおよびVRM(バーチャル・リファレンス・モニタリング)機能を有した上位機種、Saffire Pro 24 DSPを紹介する。

小柄なボディながら16イン/8アウトを実現


まずは入出力関係から。フロント・パネル左からHi-Z対応のマイク/ライン入力1~2(XLR/TRSフォーン・コンボ)、それぞれのゲイン・コントロール、48Vのファンタム電源スイッチ、Inst表示LEDを配置。中央に各種LEDレベル・メーターや各種インジケーターがあり、その右隣にモニター・セクションと2系統のヘッドフォン出力とそのボリュームが並ぶ。メインとなる入力端子を前面に配置し、4系統あるアナログ入力のすべてをハード上のレベル・メーターで確認でき、その上Dimやミュートを含むモニター・コントロールもパネルに配置するなど、シンプルながら使い勝手が十分に考えられたレイアウトだ。リア・パネルにはライン入力3~4(TRSフォーン)、ライン出力1~6(TRSフォーン)、ADAT入力(S/P DIFへ切り替え可能)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、MIDI IN/OUTなどが並ぶ。加えて、内蔵ミキサーにはDAWからの出力を再びDA Wなどへ戻せるループバック・バスが2chあるので合計で16ch。出力はアナログ6chとS/P DIFがステレオ1系統で計8chとなる。コンピューターはWindows XP/VistaおよびMac OS X 10.4以上に対応し、6ピンのFireWireケーブルで接続してのバスパワー駆動が可能だが、ポートが1つなのでデイジーチェーンの終端にしか接続できないのが注意すべき点だ。これらの設定やDAW(ASIO/Core Audio対応)との接続などを操作するのが、付属ソフト"Saffire MixControl"である。先の16chにDAWからの信号8chを加えた24chをソフト内の16インのミキサーにアサインする。ミックスは最大8つ(モノラル時。ステレオ時は最大4つ)作成でき、その24chにミックス8系統を加えた最大計32系統のオーディオを8chのアウトへ自在にアサインできる。これによりヘッドフォン1と2で違うバランスのモニターを作ったり、5.1chモニタリングも可能だ。加えてゼロ・レイテンシー・モニタリング・モードも備えるなど、自由度はかなり高い。

使える4種のエフェクトを実装 多様な再生環境を再現するVRMも魅力


音色、操作感をアコギの録音でチェック。マイクプリは素直で伸びやかなキャラクターを持ちフォーカスがハッキリしているので、しっかりした音像が得られる。LINE/INSTの切り替えはソフト上で行うが、ハード上にも物理スイッチがある方がゲインを設定しやすい気がした。また入力1~2ではソフト上でコンプ、EQ、ゲート、リバーブをかけ録りできる。1960年代のサウンドをモデリングしているというコンプは使いやすく反応も良い。軽くピークを押さえたり、深めにかけて荒々しいサウンドを得たりと幅広く使える。EQは中域パラメトリック2バンド、ハイパス/ローパス・フィルターが2バンドの計4バンド仕様。それぞれのエフェクトのオン/オフ、接続順はチャンネルごとに設定できリンクも可能。各ポイントで、エフェクトを通った音と通る前の音のどちらも選択できるので、ルーティングの幅が広がるだろう。モニター・リバーブは"Size" "PRE-FILTER" "AIR"のパラメーターを持つだけだが、その調整によりさまざまな残響を作り出せる。ただ、センドがプリ固定なのが残念。複数のミックスを作れるが、センドや設定はすべて共通なので、ぜひポストとの切り替えを組み込んでほしいところだ。続いて1番の目玉であろうVRM。これはさまざまな環境やスピーカーのサウンドをヘッドフォンでシミュレートする機能で、プロ・スタジオ/リビング/ベッドルームの3種類の部屋と、スタジオ御用達のものからテレビのスピーカーまで15種類のスピーカーとの組み合わせで構成される。"ヘッドフォンに失われがちな空間的なステレオのイメージや遠近感を補う"とのうたい文句の通り、空間的残響が付加され、それぞれのキャラに沿ったフィルタリングが成されているようでなかなか面白い。ただ実際の環境と比べると、ややオフ気味で、ぼやけた印象。音像を詰める......というよりもヘッドフォンの補助的に使用すると全体像の確認に役立つのではないだろうか。この価格帯でこの音質や機能面の充実度には目を見張るものがある。とりわけルーティング自由度が高いので、アイディア次第で多様な使い方ができるであろう。

▲リア・パネル。接続子は左からS/P DIF入出力(コアキシャル)、MIDI OUT/IN、ADAT入力(オプティカル、S/P DIF切り替え)、ライン出力1〜6(TRSフォーン)、ライン入力3〜4(TRSフォーン)



▲付属のコントロール・ソフトSaffire MixControl。画面上部にミキサー部、下にエフェクト部が配置される


『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年9月号より)
FOCUSRITE
Saffire Pro 24 DSP
オープン・プライス(市場予想価格/44,800円前後)
▪AD/DA変換/最高24ビット/96kHz▪外形寸法/215(W)×45(H)×220(D)mm▪重量/1.5kg

▪Windows XP SP/Vista以上、ADMもしくはINTEL Pentium 900MHz必須(1.5GHz以上を推奨)、512MB以上の空きメモリー▪Mac OS X 10.4以上、Power PC G4 Dual 1GHz以上、512MB以上の空きメモリー