ポップスや劇伴でも"使える"臨場感あふれるクラシカルなクワイア音源

EASTWESTQuantum Leap Symphonic Choirs
5部合唱+女性ソロで構成。付属ソフトで子音/母音のコントロールも可能

EASTWEST Quantum Leap Symphonic Choirs オープン・プライス(市場予想価格59,800円前後) EASTWESTのQuantum Leapシリーズは、ハイクオリティな大容量サンプリング音源として知られており、筆者自身も複数の製品を愛用中だ。そんな同シリーズに新たな音源が登場した。定番オーケストラ音源のSymphonic Orch estraと同様の、Symphonicの名を冠していることからも興味津々、早速チェックしてみよう。 

クラシカルな合唱5部と女性ソロ・ボイスを網羅的に収録


Quantum Leap Symphonic Choirsは、その名の通りクラシカルな合唱(Choirs=クワイア)音源だ。収録サウンドは、合唱の標準的な編成であるソプラノ、アルト、テノール、バスの混声4パートにあわせボーイ・ソプラノも収録。これは声変わり前の男声による合唱で、ソプラノとアルトの中間あたりの音域だが、独特の軽やかさと透明感がある。生々しさを避けたい場合など、ポップスや劇伴などでも"使える"サウンドだ。これら合唱5部は、それぞれ単独に演奏可能で、パートごとに独立したラインを書くような本格的なアレンジにも対応する。さらに、ソプラノとアルト、テノールとバスをバランスよく組み合わせた、女声(Womens)/男声(Mens)パッチも収録。クラシカルに声部を独立させるような書法をとりたくないとき、ボイス・サウンドをキーボードでコード演奏したいときにも対応する。アレンジの初期段階などで、とりあえずサウンドを"あてて"みたいときにも重宝するだろう。合唱はいずれも大編成で、シンフォニックの名にふさわしい雄大なサウンドを堪能できる。さらに、女声のソプラノとアルトに関しては、ソロのサウンドも収録。和音演奏も可能なので、三人で三声を担当するようなポップス系のアレンジにも対応する。個人的には、クワイアに足して、ソロで芯を作るような使い方が効果的だと感じた。 

さまざまなマイク・ポジション "歌うソフト"Word Builderも装備


演奏エンジン、つまりソフト音源本体は、EAST WESTオリジナルのPlay音源だ。基本的な仕様はQuantum Leapシリーズと共通する。一画面でほぼすべてのエディットが可能という見通しのよい操作性を持っているので、ほとんど"初見"で使えてしまうだろう。全パートに関して、3ポジションで同時録音されたサンプルを収録。いずれもホール録音で、ステージ上の近接位置(Close)、指揮者の位置(Stage)、客席の位置(Surround)のマイクを自由にブレンドし、自然なホール・サウンドを演出できる。これは、同社のSymphonic Orchestraと同様の構成で、実際に両者を組み合わせて鳴らしてみたところ、音の混ざり具合が非常に良い。まさに、オーケストラに合唱団が加わったかのように響いてくれる。もちろん、Play音源に装備されたリバーブ・エフェクトやエンベロープによる余韻のコントロールも可能。さらに、ショート・ディレイによるダブル・ボイスも行える。定番の効果が簡単に得られるのが、非常に気に入った。また、それぞれのパートは、アー、ウーなどのすべての母音にあわせて、子音もすべて収録。ムーやドゥーのような有声音、シュやチッのような無声音など、ほぼすべての要素を網羅しているので、スキャットからウィスパー的な表現まで幅広く使用できるだろう。これら、母音や子音のサウンドは単独でも使用可能だが、付属のソフト、Word Builderを使用すると、さらに強力だ。これは、Play音源のMIDI入力段の手前に挿入して用いる、一種のMIDIエフェクター。あらかじめ言葉を入力しておくと、それに応じてPlayエンジンの子音や母音を発音するように指令を送ってくれる。適当に言葉を入力して、キーボードを弾くだけで、"歌う"大合唱サウンドが得られるのは、非常に楽しい。しばらく夢中になってしまった。もちろん、言葉ではなく、"ブン""ハー"のようなスキャットも簡単に行える。ちなみに、セッティングは超簡単だ。期待通り、EASTWEST Quantum Leap Symphonic Choirsは、大合唱音源の決定版とでもいうべき内容を持っている。クオリティが高くダイナミック・レンジの広いサウンドは、雄大から繊細まで、さまざまな表現に耐えうる。ビブラートの有無が選べるのも実用的だ。さらに、Word Builderの装備は、膨大な母音や子音のサンプルを手軽に使うことを可能にした。特に任意の発声でスキャットできる効果は絶大で、これができるだけでも、この音源が欲しくなるほどだ。合唱音源を検討している人はもちろんだが、何かアコースティック系でサウンドの幅を広げたいと思っている人も、ぜひチェックしてみることをおすすめする。(サウンド&レコーディング・マガジン2009年7月号より)
EASTWEST
Quantum Leap Symphonic Choirs
オープン・プライス(市場予想価格59,800円前後)
■Windows/Windows XP SP2以降(Vista 64bitネイティブ対応)、INTEL Pentium4 3GHz以上のプロセッサー(Core 2 Duo2.5GHz推奨)、3GB以上のメモリー(4GB推奨)、37GB以上の空きハード・ディスク容量、DVDドライブ、iLok、USBポート、インターネット接続環境 ■Mac/Mac OS X 10.4以降、G5 2.0GHz以上のプロセッサー(Core 2 Duo2.5GHz推奨)、3GB以上のメモリー(4GB推奨)、37GB以上の空きハード・ディスク容量、DVDドライブ、iLok、USBポート、インターネット接続環境