コスト・パフォーマンス抜群のクラスA真空管チャンネル・ストリップ

PRESONUSStudio Channel
フル・パラメーターのコンプレッサーと3バンドEQを装備

PRESONUS Studio Channel オープン・プライス(市場予想価格/40,000円前後) PRESONUS Studio Channelは、クラスA真空管マイク・プリアンプ搭載のモノラル・チャンネル・ストリップです。実はサウンド・ダリには、同社の2chマイクプリMP20を導入しており、そのサウンドには十分に満足しています。筆者にとってこのMP20はワン&オンリー的な重要なポジションにある機器なので、今回のStudio Channelにも大いに期待してしまっているわけです。本機はチャンネル・ストリップとしての機能はすべて搭載していて、それプラス、真空管のサウンドが得られます。さらにDI入力も搭載されているのですから、"不満のふの字"もありません。それに、何と言っても恐ろしくリーズナブルな価格設定。"すごい世の中になったものだなー"というのが本音です。企業努力のたまものです。 

低価格を実現しながら音作りに必要な機能を網羅


Studio Channelのパネルは左から右へ、そのまま信号の入力から出力の流れになっており、インプット・セクション、コンプレッサー・セクション、メーター、EQセクション、アウトプット・セクションの順になっています。まず、インプット・セクション。インプット・ゲイン(10〜54dB)の後段にチューブ・ドライブというノブがあり、12AX7真空管でのサチュレーション具合が調整できます。リア側のマイク/ライン入力だけでなく、DI入力もフロントに装備。ファンタム電源、フェイズ反転、−20dB PAD、80Hzでのローカットといったスイッチも並んでいます。コンプレッサー・セクションは、スレッショルド、レシオ(1:1〜10:1)、アタック・タイム(0.1〜200ms)、リリース・タイム(0.05ms〜3s)、メイクアップ・ゲインと、コンプレッサーとして考えられるパラメーターをフル装備。ソフト・ニーとハード・ニーの選択、アタックとリリースのオート設定も可能です。また、本機では通常コンプ→EQの順に接続されていますが、EQ→コンプに切り替えることも可能となっています。続くパネル中央にはVUメーターがあり、これをゲイン・リダクション・メーターとして使用することもできます。そしてEQは3バンド・パラメトリック。LOW(20〜300Hz)/HIGH(2〜20kHz)ではシェルビングとピークの切り替えが可能です。MID(200Hz〜3kHz)はバンド幅(Q)の調整も可能となっています。各バンドのゲインは±10dB。さらにその右には、本機全体のマスター・ボリュームがあります。 

面白いほど効く3バンドEQとナチュラルなコンプレッサー


今回は、ボーカル、ベース、アコースティック・ギター、スネア・ドラムなどの収音で実際に試してみて、本機のサウンドを探ってみました。実は、最初の印象は正直あまり良くありませんでした。価格を考えれば当たり前のことです。しかし、ある瞬間から、その印象は完全になくなりました。通常、自分が機器を使う場合は、まず一つのセクションをオンにして微調整をした後、次のセクションをオンにする......のですが、そうやって使っているうちにこのStudio Channelの最も見逃しやすく、そして一番意味を持ったスイッチがあることに気づいたのです。それはバイパス・スイッチでした。本機はEQやコンプにバイパス・スイッチがあり、バイパス・オンにするとランプが点灯します。要するに、"バイパスすること"がイレギュラーであり、"EQやコンプが接続された状態"がレギュラーという考えなんだということです。ベースを試したときに最初はサウンドが細いと感じたのですが、EQやチューブ・ドライブ、そしてコンプを調整すると何ら問題無い、素晴らしいサウンドに変化しました。ボーカルに関してはエッジがあるとてもナチュラルなサウンド。スネアでも素晴らしくディテールを表現してくれます。アコーステック・ギターについてはベース同様、最初は若干薄く感じましたが、EQやコンプを調整することで、とてもグルーブのあるサウンドに変化しました。このStudio Channelの素晴らしさは、サウンド・メイキングに尽きると感じます。ことEQに関してはとても面白いぐらいに効きます。マスタリングで使えるようなナチュラルさはありませんが、楽器のサウンドそのものを変化させてしまいそうなぐらいに効くのです。一方、コンプに関してはこのEQとは逆でとてもナチュラルに、品のいい使い方に向いているようです。ガツンともかけられますが、ビンテージ機器のようなミラクルなハード・コンプにはなりません。しかし、生楽器やボーカルを録音することが本機の目的なのですから、これは当然でしょう。同じことがチューブ・ドライブにも言えます。ガツンとひずむというよりは、若干のサチュレーションを加えて、サウンドに広がりや深みを持たせるのには非常にいい働きをしてくれます。サウンド・ダリにあるMP20もそうですが、PRESONUSの特長はナチュラルさやハイファイ指向にあるのだと思います。今回は24ビット/48kHzと24ビット/192kHzの両方で試してみたのですが、やはり192kHzでは本機の価格がクオリティに反映されている印象がありました。しかし48kHzの箱の中で表現にするには何ら問題の無い、素晴らしいチャンネル・ストリップでした。それにしても4万円前後でこんな物が手に入るのですから、すごい時代です!studio_channel-front_copy_big

▲リア・パネル。左から電源コネクター(AC16V)&電源スイッチ、オプションのデジタル・カード用スロットに続き、アウトプット(XLR&TRSフォーン)とライン入力(TRSフォーン)、マイク入力(XLR)が並ぶ


サウンド&レコーディング・マガジン2009年7月号より)

撮影/川村容一(フロント・パネル)

PRESONUS
Studio Channel
オープン・プライス(市場予想価格/40,000円前後)
■ダイナミック・レンジ/115dB以上 ■周波数特性/10Hz〜50kHz ■内部オペレーティング・レベル/0dBu=0dB ■マイクプリ・ゲイン/−6〜+66dB ■ノイズ・フロア/−96dB(マイクプリ) ■入力インピーダンス/マイク:1.3kΩ、ライン:10kΩ、インストゥルメント:1MΩ ■出力インピーダンス/51Ω ■外形寸法/483(W)×44(H)×140(D)mm ■重量/2.3kg