
AKAI PROFESSIONAL APC40 オープン・プライス(市場予想価格/50,000円前後)ラップトップ・コンピューターを使用したライブ・パフォーマンスが当たり前となってきた昨今。ABLETON Liveは即興的な使い勝手の良さで、ジャンルを超えて多くのユーザーに支持されてきました。ですが、その良さを生かせるコントローラーに出会えず、日夜MIDIマップを追求しているユーザーも多かったことでしょう。そんな皆様、お待たせしました! the NAMM Show 09で発表されて以降、YouTubeなどにも動画がアップされ、世界中のLiveユーザーが注目していたAPC40がいよいよ発売されます。かくいう僕も発売を心待ちにしていた1人、胸の高鳴りを抑えつつ、チェックしていきましょう。
しっかりした作りのボディ 専用だけに設定も楽々
まず目を奪われるのは、そのルックス。AKAI PROFESSIONALとABLETONとの共同開発だけあってMPCライクな外観。トップ・パネルのパッド、フェーダーの配置はLiveのセッションビューを踏襲しているよう。大きさは自宅にあるMPC2500と同じ程度で、重量も重過ぎず軽過ぎず。想像していたよりもコンパクトで、現場への持ち込みも問題なさそうです。また多少ハードに扱っても安定感がありますし、パッドやノブもしっかりしています。コンピューターとの接続はUSBケーブル1本でOK。ただし電源供給は付属のACアダプターを使用します。USBバス・パワーでは動作しないのでご注意を。


▲画面① Liveの環境設定>コントロールサーフェスでAPC40を選択するだけで、基本的なマッピングは完了

▲画面② APC40がLiveに正常に認識されると、セッションビュー上にAPC40のクリップラウンチボタンと対応した8×5の赤い枠が表示される
Liveのセッションビューに完全対応 クリップラウンチボタン
それでは、各部位の機能を見ていきましょう。このひときわ目を引く8×5個のパッドはクリップラウンチボタンといって、Liveのセッションビュー内のクリップ(ループ素材)を再生/停止できます。このボタンの並びは、セッションビュー内に現れた赤い枠の中のスロットの配置をそのまま表しています。ボタンはクリップの状態によって内蔵LEDが色分けされています。無点灯は空スロット、オレンジはクリップがセットされているが停止中、グリーンが再生中、レッドが録音中といった具合。これによってプレイ中の状況が一目で分かりますし、一度に複数のクリップを操作することも可能です。しかも、セッションビューの赤い枠はトップ・パネル右側のBANK SELECTキーにより上下左右に一段ずつ移動でき、クリップラウンチボタンもそれに追従するので、8×5個を超えるクリップを使用したLiveセットも操作可能です。また、SHIFTキーを押しながらBANK SELECTキーを押すことで、左右8つ、上下5つずつ移動させることもできます。クリップラウンチボタンの右側にある縦に5個並んだボタンがSCENE LAUNCHボタン。セッションビューの横一列(シーン)を同時に再生できます。その下に並んでいるのがCLIP STOPボタン、その下がTRACK SELECTIONボタンで、選択中の8つのトラックとマスター・トラックが選択可能。後述するDEVICE CONTROLセクションと併用します。さらにその下には3段に並んだボタンとフェーダーがあります。まず1段目はACTIVATIONボタンで各トラックをミュートできます。2段目はSOLO/CUE、3段目にはRECORD ARMボタンもついており、ライブの下準備、トラック制作などにも重宝しそうです。そして一番下には8本のトラック・フェーダーと、マスター・フェーダーが装備されています。もちろん各トラックのボリュームがアサインされているので、Liveを活用したDJプレイの際にもすぐ使えそうです。そして、マスター・フェーダーのすぐ上のノブはCUE LEVEL。親切過ぎます!
多彩なノブとスイッチでLiveの機能をコントロール
続いて、トップ・パネル右側上部にある、8個のロータリー・エンコーダーと4つのボタンで構成されているのが、TRACK CONTROLセクション(写真①)。4つのボタンには各トラックのPAN、SEND A、SEND B、SEND Cがアサインされています。このボタンで目的の項目を選択し、8つのノブで制御します。このノブにもLEDが付いており、パラメーターの値が一目で分かります。またAPC40ではSEND Aの値を右100に振り切ったままバンクをSEND Bに切り替えた場合、値は左0に戻ります。パフォーマンス中のミスも減る、有り難い仕様です。

▲写真① TRACK CONTROLセクションは、4つのボタンで機能を割り当て、8つのロータリー・エンコーダー(Liveの8トラックに対応)でコントロールする。その下は左からSHIFTキー、画面②の赤い枠を動かせるBANK SELECTキー、TAP TEMPOはNUDGEにも対応している
その下が前述したDEVICE CONTROLセクション(写真②)。選択したトラックにインサートしているエフェクトやインストゥルメントを8つのノブで操作します。このセクションは8つのバンクがあり、8×8=64個のパラメーターをアサイン可能。バンクの切り替えは、セクション下の8つのボタンをSHIFTキーを押しながら選択します。人によって操作したいパラメーターも違ってくると思うので、LiveのMIDIマップ機能を使い、好みに合わせて各機能をアサインしていくのがいいのではないでしょうか。

▲写真② DEVICE CONTROLセクション。8つのロータリー・エンコーダーには、選択したトラックにアサインされているデバイス(エフェクトやインストゥルメント)のパラメーターが自動的にアサインされる。トラックに複数のデバイスがアサインされている場合は、右下の2つの矢印キーを使ってデバイスを選択可能
ノブの下にある8つのボタンはコマンド・コントロール・ボタンとして機能します。まず、CLIP/TRACKボタンは、Liveのクリップビューとトラックビューを切り替えます。その右にあるのがDEVICE ON/OFFボタン。トラックビューで選択したデバイスのオン/オフを切り替えられ、右にある2つの矢印キーでデバイスの選択が可能です。2段目にあるのがDETAIL VIEWボタン(詳細ビューの表示切り替え)、REC QUANTAIZATIONボタン(MIDIレコーディング時のクオンタイズのオン/オフ)、MIDI OVERDUBボタン(オーバーダブ・スイッチのオン/オフ)、METRONOMEボタン。ほかにもクロスフェーダーや、トランスポート、タップ・テンポと、Liveのありとあらゆるパラメーターやコマンドが手元で操作可能になっています。すご過ぎる。と、駆け足で各セクションの説明をしてしまいましたが、ここまでを見てきただけでもLiveのユーザー・インターフェースをそのままハード化したと言っていいほど忠実に再現されていることがお分かりかと思います。
LED点灯で視認性良く操作が可能 ボタンの打感も良好!
最後に、にわかAPC40ユーザーの僕ですが、実際に操作してみた感想を。まず、何と言ってもクリップラウンチボタンは秀逸です。MPCシリーズのパッドを指先サイズにした感じで押し具合も気持ちいいし、このサイズが絶妙。指2本で連打もできるギリギリの大きさです。8×5個という配置も、即座に状況を把握しながら、なおかつ一度にできるだけ多くのクリップを表示させるのにはいい数だと思いました。セッションビュー上に出る赤い枠も、シンプルですごく分かりやすいです。ボタンごとのLEDによる視認性の良さは、バンクを切り替えた際にすごく重宝しました。僕は、多いときは10×20以上のスロットを使うこともあるので、クリップを全部アサインするのは無理だと思っていましたが、可能になってしまいました。各スロットにワンショットのドラム・サンプルを割り当てれば、まんまMPC的にも使えそうです。しかもパッドが計40個。デイデラスが使用しているコントローラー、monomeをつい思い浮かべてしまいます。しかし、Liveとの親和性は間違いなくこっちが上でしょう。APC40とLiveは最新で最強の組み合わせだと思いました。現状に物足りなさを感じている諸兄は間違いなく買いです。僕は買います!(サウンド&レコーディング・マガジン2009年7月号より)
撮影/川村容一
■Windows/Windows XP/Vista、1.5GHz以上のプロセッサー、512MB以上のRAM(1GB以上を推奨) ■Mac/Mac OS X 10.3.9以降(10.4以降を推奨)、Power PC G4以上のプロセッサー(INTEL製プロセッサーを推奨)、512MB以上のRAM(1GB以上を推奨) ※ABLETON Live 7最新版以降に対応