コンパクトなボディに高品位サウンドを搭載した手軽なDAWシステム

CAKEWALKSonar V-Studio 100
オーディオI/O&フィジカル・コントローラー+DAWソフトに単体レコーダー+ミキサーまで組み合わせた音楽制作システム

CAKEWALK Sonar V-Studio 100 オープン・プライス(市場予想価格70,000円前後)今年2月に発売されたSonar V-Studio 700は、フィジカル・コントローラー/オーディオ・インターフェースとDAWソフトを組み合わせた音楽制作システムとして話題を呼んでいる。今回紹介するSonar V-Studio 100(以下、V-Studio 100)は、その小型版である。700と100という数字の並びは、かつてのROLANDのシステム・シンセをほうふつさせ、ぐっとくるものがある、というのは余談として、早速そのシステムをチェックしてみた。

簡単な設定で高品位なサウンド 単体ステレオ・レコーダーとしても機能


V-Studio 100はオーディオ・インターフェース部分のV-Studio 100ハードウェアと、DAWソフトウェアSonar VS(V-Studio 100特別版)の組み合わせだ。ハードウェア部分は8イン/6アウトのオーディオ・インターフェースとしてだけでなく、MIDIインターフェース、フィジカル・コントローラー、さらにWAVでの録音が可能な単体ステレオ・レコーダーとしても機能する。ハードウェアとコンピューターの接続は、USBケーブル1本だけ。ハードウェアのドライバーとSonar VSをインストールしてしまえば、あとはマイクを接続するなり、Sonar VSでプラグイン・シンセを立ち上げるなりして、すぐに音楽作りが始められる。まずはハードウェアの部分を見てみよう。オーディオ・インターフェースとしては、最高24ビット/96kHz、対応ドライバーはWDM、ASIO、Core Audio。Sonar VS以外のDAWで動作確認済なのはWindowsではSonar 8シリーズ、Mac(ハードウェアのみ)ではAPPLE Logicとなる。入力端子はマイク入力2ch(XLR、ファンタム電源)、ライン入力4ch(TRSフォーン×2、RCAピン×2)で、そのうち1chはHi-Zにも切り替え可能だ。出力端子はライン出力6ch(TRSフォーン×4、RCAピン×2)。S/P DIFデジタル入力(コアキシャル)も1系統用意されている。CAKEWALK_SONAR_VS-100F

▲フロント・パネル。左から、マイク入力(XLR)/ライン(TRSフォーン)/SENSツマミを備えたINPUT1〜2、SD/SDHCカード・スロット、ヘッドフォン端子。なおINPUT1のライン入力はHi-Z入力にも切り替え可能


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▲リア・パネル。左から、電源スイッチ、ACアダプター端子、USB端子、MIDI IN/OUTが並ぶ。入力セクションにはINPUT3/4(TRSフォーン)、INPUT5/6(RCAピン)、INPUT7/8(S/P DIFコアキシャル)、ファンタム電源切替スイッチが見える。出力セクションはOUTPUT1〜4(TRSフォーン)、OUTPUT5〜6(RCAピン)となっている


まずは、別のオーディオ・インターフェースで作っていた曲を立ち上げ、ヘッドフォンで音を聴いてみて、ちょっと驚いた。音の分解能が高く、100Hz以下の低音もよく聴こえるし、左右の広がりもとてもクリアなのだ。マニュアルに"ハイエンド仕様のオーディオ・インターフェース"とあるのはだてではない。音のクオリティは一瞬、USB接続であることを忘れたほどである。ヘッドフォン出力の音量が大きいのも好感が持てる。次に、インプットにマイクやライン楽器を接続して録音してみた。マイク、ライン入力ともにノイズが非常に少ない。入力された信号が、色づけされることなくそのままクリアにデジタル変換されている印象を持った。"厳選されたパーツを採用し、透明感のあるサウンドを実現"というマニュアルの表現にまたしてもうなずいたところである。アナログ入力6chには、ベーシックな機能を持ったコンプ(パラメーターはスレッショルド、レシオ、ゲイン、アタック、リリース)/EQ(3バンド)をかけて録音することができる。各チャンネルにはCOMP/EQボタンのON/OFFを切り替えるボタンがあり、さらに左上のボタンでコンプかEQを選択し、ノブでパラメーターの設定をするようになっている。また、デジタル・リバーブも内蔵していて、4種類のリバーブ・タイプ(ECHO、ROOM、SMALL HALL、LARGE HALL)とセンド・レベルをディスプレイ上で設定することができる。V-Studio 100で面白いのは、ハードウェアがレコーダーとして機能することだ。設定によってch1〜6のミックス、ch1/2のステレオ、ch1のモノラルと入力ソースを選択できる。録音媒体はSD/SDHCカードで、単に2トラックのレコーダーとしてだけでなく、あらかじめSDカードにバックトラックを仕込んでおけば、それを聴きながらダビングも可能だ(録音されたトラックはSDカードに別トラックとして記録される)。つまり、自宅でバックトラックを作っておき、外のスタジオにハードウェアだけを持ち出して、歌やギターの演奏を録音してくることができるのである。

ハードウェアからのコントロールでSonar VSの操作効率をUP


Sonar VS(画面①)は、Sonar 8とは画面のレイアウトが異なり、オーディオ・トラック数が64に限られている。またプラグインの種類が異なるといった違いがあるが、基本的な機能や操作は共通している。現在のDAWではトラックの画面とミキサーの画面を切り替えながら作業するやり方と、トラック画面だけで進めていくやり方の2つが主流なのだが、Sonar VSでもこの両方が可能だ。DAW初心者にはチュートリアルが用意されているので、画面に導かれるままに一通りガイド・ツアーを済ませれば、Sonar VSの操作はすぐに覚えられる。また、打ち込み/生録など音楽スタイルに応じて異なるテンプレートがあるので、これを使うとスムーズに作業が進められる。CAKEWALK_SONAR_VS-TRK_EDIT

▲画面① Sonar VSのトラック・ビュー。左側のトラック表示部でミュート/ソロ、エフェクターの選択などの操作ができる


プラグインの中では、ボーカル用のチャンネル・ストリップのVX-64 Vocal Stripやエレキギター用のGuitar Rig LE、プラグイン・シンセのRapture LEが強力だ。エフェクト、インストゥルメントともに充実しているので、このシステムだけでスタジオ・クオリティの音源を制作することが十分できる。ハードウェアのトップ・パネルはSonar VSのフィジカル・コントローラーとしても使用でき、Sonar VSのオプション・メニューからコントローラー/サーフェス・ウィンドウでVS-100を指定すれば、すぐに機能する。パネル右側にあるチャンネル・ストリップ・セクションでは、タッチセンス対応の100mmモーター・フェーダーでボリューム・コントロールができるほか、トラック選択ボタン、パラメーターを選択するASSIGNとその値を変えるVALUEつまみ、ミュートのON/OFF、ソロのON/OFF、録音待機のON/OFFが操作できる。その下のトランスポート・セクションでは、再生や停止、録音などの操作が可能だ。これによって、マウスを動かす頻度が下がり、作業効率はかなり上がる。また、SonarにはACT(Active Controller Technology)と呼ばれる機能があり、ディスプレイ上でアクティブになっているプラグインに、パネル左上のR1〜R4のつまみを、さらに設定によって左下のインプット・セクションのつまみとボタンをアサインすることがでる。このときコントロールされるパラメーターは、Sonar VSのプロパティ・ページで確認可能だ(画面②)。この機能は、実際に使ってみるととても便利。WAVESやPSPなど他社のプラグインもACTに対応しているものがあるので、よく使うプラグインのパラメーターをアサインしておくといいだろう。ちなみにLogicではハードウェアはMackie Controllerとして認識され、トップ・パネル右側のトランスポートとトラック関連のスイッチ/ノブが使える。CAKEWALK_SONAR_VS_Control

▲画面② Sonar VSのプロパティ・ページ画面。ハードウェアに接続したフット・スイッチやモーター・フェーダーの動作に関する設定も行うことができる


V-Studio 100の最大のポイントは、ハードウェアの音の良さだろう。オーディオ・インターフェースとしてノイズが少なく、分解能が高いのは、ホーム・レコーディングのクオリティを上げるのに大いに価値がある。またレコーダー機能も、盲点をつかれた感じで面白い。これからDAWに取り組もうとする人はもちろん、オーディオ・インターフェースの買い替えを考える人にも魅力的なセットになっている。(サウンド&レコーディング・マガジン2009年7月号より)
CAKEWALK
Sonar V-Studio 100
オープン・プライス(市場予想価格70,000円前後)
■AD/DA変換/最高24ビット/96kHz ■USBオーディオ・インターフェース/録音:10チャンネル、再生:6チャンネル ■外形寸法/282(W)×181(D)×70(H)mm ■重量/1.9kg(本体のみ)

■Windows/Windows XP/Vista、INTEL Core1.5GHz以上(96kHz使用時は1.7GHz以上を推奨)、メモリー1GB以上(2GB以上を推奨)、8GB以上のハード・ディスク空き容量(7,200rpm以上を推奨) ■Mac(ハードウェアのみ使用可)/Mac OS X 10.4.11以上/10.5.6以上、INTEL Core、メモリー1GB以上、6GB以上のハード・ディスク空き容量(7,200rpm以上を推奨)