脚色の無いフラットなサウンドと密閉感が魅力のモニター用ヘッドフォン

SENNHEISERHD 380 Pro
耳全体をスッポリ覆う押さえつけがしっかりしたタイプ

SENNHEISER HD 380 Pro オープン・プライス(市場予想価格21,000円前後) 最近はヘッドフォンやイヤホンがかなり充実していますよね。電器店などに行くと、毎回増えていて驚きます。今回届いたSENNHEISER HD 380 Proもそのうちの1つ。さて、これはどんな製品なのか。早速見ていきましょう。 

軽量で周波数特性が広いモニター用ヘッドフォン


ポータブル音楽プレーヤーや携帯電話、そしてコンピューターの進化によって、音楽を楽しむ機会や場所は格段に広がりました。いろいろな状況に合わせた形、構造、機能、性能......ヘッドフォンも多様化が進んでいて、それはそのまま、音楽の楽しみ方の多様化を現しているのだと思います。しかしその反面、あまりに選択肢が多くて迷うことも多く、まさに"うれしい悲鳴"。なんともシアワセな時代になったもんです。ただその際、スペックなどに注目することによって音を聴く前にかなり候補を絞ることができます。さて、それでは本機はどういった製品なのでしょうか。本機は、"密閉ダイナミック型ヘッドフォン"。ダイナミック型は、一般的にダイアフラムという振動板が前後に動いて音を出します。ユニットの前面の空気を振動させて音を発しますが、それと同時に振動板は後ろの空気も振動させています。コーン紙の前面を指で押さえて振動を邪魔すると鳴り方がおかしくなってしまうように、後ろ側も自由な状態が理論上最も効率がいいのです。後ろ側を邪魔しない"開放型"の方が特性的には自然ですが、それなのにあえてふさいでしまっている"密閉型"は何か理由があってそうしている(=音漏れ防止のため)という感覚があれば、ヘッドフォンの候補を絞るときに役立ちます。そして、"周波数特性8Hz~27kHz"。これだけではこの数値がどういう測定方法で、その特性のカーブがどうなっているのかまでは分からないので音質に関してまでは言及することはできないのですが、"周波数特性が広い"ということは分かるので、携帯電話での観賞用などでは無いということが明白です。また箱の記載から、本機は軽く、着脱式で片出しのコイル・タイプのケーブルを使用することが分かります。以上から、本機はモニター向けに作られているということが見えてきます。 

全体を見渡せるフラットな出音 ボーカル録音にも適した遮断性


さて、それでは早速実物をチェックしてみます。パッケージを開けると、本機が平たく畳まれた状態で、ラップトップ・コンピューターのケースを一回り小さくしたような付属の平面型のキャリング・ケースに収まる形で入っています。左右のアジャスターは、左右別々にカチカチと調整できるタイプ。またケーブルは、ユニットの左側から片出しのコイル・タイプ。パッケージに"Replaceable"の記載がある通り、着脱式ケーブルです。装着感としては、耳全体をスッポリ覆うタイプ。ユニット自体が縦長になっていて、大きく耳を覆う感覚です。押さえ付けがしっかりしていて、かなりの密閉感です。はじめは"ちょっとキツイかな?"とも思いましたが、慣れてしまえば気持ちいいくらいで、ちょっとのことでは外れそうにありません。さらに太ももあたりを本機で挟んで音を出してみると、音漏れがかなり抑えられているのが分かります。これならボーカル録りでも全く問題無いと思います。さてさて、それではサウンドのチェックです。聴いた感じ、やはりモニター用に作られているだけあってフラットです。低域や高域を誇張することも無く、全体を明りょうに見渡せるタイプ。500Hz~1kHz辺りがちょっと盛り上がっているような感じがありましたが、慣れれば痛過ぎない中域で、下の方にワイドにしっかり伸びている音源ほど、低~中域のつながりが奇麗に聴こえました。低域は、ロックなどのようにベースの位置がちょっと腰高で、低音が立つイメージだったのですが、ROLAND TR-808のキックでも十分低域の方まで聴こえます。とは言え全体的にやはりメインは中域で、楽器演奏やボーカル録りなど、音楽制作に最も重要な部分がしっかりと聴こえますので、モニター・ヘッドフォンとしては十二分な能力を有していると思います。先ほどの装着感からも分かるように、制作時のような音量で音楽を再生している最中に、目の前で手をたたいてもほとんどその音が聴こえないほどの密閉性。手を後ろに回してたたいてみると、もう全く聴こえません。外界の音はかなりシャットアウトします。僕にはキツめの装着感なので、長時間の作業に耐えられるかは分かりませんが、それほど密閉性がかなり高いので、外界の音が大きい環境、例えばライブ会場やフィールド・レコーディングなどには重宝するかもしれませんね。本機は十分な性能を有していると共に、その密閉性の高さを利用してさまざまな使い方ができそうな製品です。モニター用ヘッドフォンを探している方は、必ず試聴をしてほしいのですが、本機もぜひその候補に入れてみてください。(サウンド&レコーディング・マガジン2009年7月号より)

撮影/川村容一

SENNHEISER
HD 380 Pro
オープン・プライス(市場予想価格/21,000円前後)
■形式/密閉ダイナミック型 ■周波数特性/8Hz〜27kHz ■インピーダンス/54Ω ■重量/235g(ケーブル除く)