上位機の音質と3種類の指向性を備えた低価格コンデンサー・マイク

AUDIO-TECHNICAAT2050
低価格AT20シリーズのフラッグシップ・モデル

AUDIO-TECHNICA AT2050 オープン・プライス(市場予想価格29,800円前後)これまでAUDIO-TECHNICAのマイクをいろいろ使ってきました。その中でも大口径ダイアフラム系でよく使っていたのがAT4050とAT4060です。同社マイクの特徴は何と言っても癖のないフラットな音色。そして過大入力にもかなり耐えられるためソースを選ばずにオールラウンドでボーカル、エレキギター、アコギ、ドラムのトップなどに使える重宝なマイクとして認識してきました。そんな中、同社からAT2020をはじめ、低価格なAT20シリーズがリリースされ、特に海外のホーム・レコーディングではかなりの話題と人気を集めています。そして今回、そのAT20シリーズのフラッグシップ機種であるコンデンサー・マイク、AT2050がリリースされました。この価格帯でどこまで"TECHNICAサウンド"が引き継がれているのか。早速チェックしてみましょう。

無/単一/双指向を切り替え可能 ハニカム構造のダイアフラムを搭載


まず、AT2050がほかのAT20シリーズと違うのは、指向性を無/単一/双の3種類から選べる点です。無指向にしてアンビエンス・マイクとして使用したり、かなりの高SPLにも耐えられるので双指向にしてギター・アンプにも使えそうですし、また価格が安いので2本購入してM/S録音を行うなど、いろいろとレコーディングの幅が広がりそうです。また、同時に発売された単一指向のコンデンサー・マイク、AT2035(オープン・プライス/市場予想価格19,800円前後)とも共通する特徴として、新開発のダブル・ウェーブ・ダイアフラムを搭載しています。このダイアフラムにはハニカム形状の凹凸が付けられており、高感度、高S/Nを実現しているとのこと。そのほか、80Hzのハイパス・フィルター、−10dBのPADも装備しています。

明るくスピード感のある音 ポップスやロック、打ち込み系に最適


では、実際に録音してみます。マイクプリは、同社製マイクとの組み合わせでよく使っているGRACE DESIGN Model 201を使用し、DIGIDESIGN 192 I/O経由でPro Toolsに録音しました。まずはアコギから。マイクの素の音を確認するためコンプなどは挟まずに録ってみます。最初の印象は"さすがAUDIO-TECHNICAだなぁ"というもの。AT4060と大まかな感じは似ています。ただ価格を考えれば当然ですが、AT2050は中低域の情報量がすこし少なく、3〜4kHzと8kHz辺りにピークがあり、アコギの箱鳴りよりもアタックが強調される感じでドンシャリになるという印象を受けました。しかし、マイキングによって理想の音は必ず得られるバランスに仕上げられています。ロック系の曲で、アコギを今っぽい明るめの音で録りたいときにはかなりハマるでしょう。指で弾いたときもEQなどせずとも明るくてオケに埋もれないスピード感のある音が録れました。次は歌です。AT4060を使う際はマイクプリの後にコンプのUREI 1176LNとEQのTUBE-TECH PE 1Cを入れ、高域を少し持ち上げて明るさを出したりしているので、今回もオケに合わせて少しEQしました。最初にAT4060で録った後、AT2050に差し替えたのですが、AT2050ではEQをバイパスしてコンプだけで録っても、ちょうどいい感じのところにピークがあり、EQ無しでも全くいける感じで録れました。また、情報量の少なさも宅録など部屋の環境が整っていない場所では逆に良い面もあって、ノイズをあまり拾わないでくれるため、そういった場所でボーカルを録るにはちょうどいいと思いました。そのほか、いつも録音しているMonkey Majikのブレイズにも歌ってもらったのですが、ハスキーな部分がちょうど心地よく収録できました。男性ボーカルで、例えばSONY C-800Gなどが合うような感じの声にはハマるマイクです。さらに、双指向でエレキギターをオンマイクで録ってみました。これは以前からAT4050とSHURE SM57の組み合わせで、MARSHALLのアンプを録っていたので、結構いけるのではないかと思ったからです。実際に録ってみると、やはり周波数帯域の印象は同じで空気感もありつつ、あまり中低域が分厚くなり過ぎずにオケによくなじむという、いつもの感じで録音できました。指向性を変えても上位機種のサウンドがしっかり受け継がれているなぁと感じました。総合的にみると、とても明るくスピード感のあるすっきりとした音が特徴です。特にポップスやロック、打ち込み系には最適でしょう。音数が少なくて雰囲気を求めるような録音にはあまり向かないかもしれませんが、オケの中で1つだけ前に出したいときや、はっきり聴かせたいときなどにはかなりの戦力になることは間違いありません。仕事で使うなら迷いなくボーカル・マイクのチョイスに入るし、アコギのアタックで聴かせたい場合にも使ってみたいと思わせるクオリティです。宅録などでは、このマイクさえあればトラックのクオリティが上がるのは間違いないでしょう。(サウンド&レコーディング・マガジン2009年6月号より)
AUDIO-TECHNICA
AT2050
オープン・プライス(市場予想価格29,800円前後)
SPECIFICATIONS ■型式/DCバイアスコンデンサー型 ■指向性/無、単一、双 ■最大入力音圧レベル/149dB(1kHz@1%THD) ■外形寸法/52(φ)×171(H)mm ■重量/412g ■付属品/ショックマウント、ポーチ、変換ネジ