ギター/ベース録音に必要なすべてのエフェクトを備えたプラグイン

LINE6Pod Farm Platinum
78種類のギター・アンプと28種類のベース・アンプ、そして97種類のエフェクトを収録

LINE6 Pod Farm Platinum 43,050円もはやDAWでの録音が主流となっているこのご時世。アンプ・シミュレーターもソフトが主流であるにもかかわらず、ハードウェアとして残り続けているものの一つとしてLINE6 Podシリーズが挙げられるだろう。そんな同社から、先ごろPodシリーズのフラッグシップ機Pod X3 Proが発売され、そこにPod Farmというプラグインが付属した。これは単体でも発売されているソフトだが、今回はその上位版にあたるPod Farm Platinumをチェックしてみる。

MARSHALL系のひずみやFENDER系のリバーブ感をリアルに再現


Pod Farm Platinumは、エフェクターとギター/ベース・アンプ、そして録音するためのスタジオとマイクなど、録音に必要なアイテムががそろったプラグイン。WindowsとMacに対応し、RTAS/Audio Units/VSTに対応している。本製品の売りは、サウンドはもちろんのこと、何と言っても各アイテムのチョイスのしやすさ。ブラウザーには各ブランドのアンプやエフェクターがカテゴリー別でグラフィカルに表示され、マウスでドラッグすることでiTunesのCover Flowモードのように回転させて選択できる。あとは任意のモデルを下画面にドラッグすればいい。それらアンプの種類を見れば、前述のPod Farmでは18種のギター・アンプと5つのベース・アンプの収録だったが、本バージョンではなんと78種類のギター・アンプと28種類のベース・アンプを収録。ほとんどのブランドを網羅していると言っていいだろう。FENDER Deluxe ReverbやVOX AC30、MARSHALL JCM800など名機のシミュレートに加え、近年流行のDIEZELやENGLといったモデルも追加。またGRETSCH 6156やGIBSON GA-18などマニアックな小型アンプがあるのも印象が良い。これらの各アンプはキャビネットを24種類(ベース・アンプは22種類)から選択することができ、アンプの設置位置のシミュレートやダイナミック/コンデンサーといったマイクのチョイスも可能。同じアンプでもさまざまなアレンジができる。すべてのモデルの本物を聴いたことは無いが、以前友人のDIEZELの音を聴いたことがあり、その印象と比較してもシミュレートの仕上がりは良いと思った。爆音(音圧)感と低域の抜け具合は抜群で、ごう音のサウンドには最適だ。またMARSHALL系はPod同様に素晴らしく、中でもJCM800は独特のひずみ方や中低域の抜けが良い。そして個人的にはFENDER系の仕上がりが非常に気に入っている。Twin Reverbのどっしりした低音のヌケや、Vibroluxの中域のパンチの効いた感じはリアルに再現されている。また私感だが、Pod Farm Platinumが他社のアンプ・シミュレーター・プラグインと比べて群を抜いているのは、FENDERのスプリング・リバーブの感触だと思う。FENDERのアンプはリバーブがかかると元気さが1.5倍増す。"FENDERアンプの個性はこれだ!"と言っても過言ではない。私も他社のアンプ・シミュレーターを所有しているが、それと比べても本プラグインは本当に気持ちのいい見事なサウンドだ。

生々しいテープ・エコーやプロ・ユースのマイクプリもモデリング


アンプのほかにも魅力なのがエフェクター。こちらもPod Farmでは29種類しかなかったペダル・エフェクターが、なんと97種類も用意されている。往年のELECTRO-HARMONIX Big Muffや日本が誇るIBANEZ Tube Screamerなどはもちろん、ベース用のMAESTRO BassBrassmasterなども装備し、こちらもリアルだ。本誌3月号でのPod X3 Proのレビューでも書いたことだが、アナログ・エフェクターのチョイスも好印象。私自身も所有していていまだに活躍中のBOSS CE-1のシミュレートもかかり方と音の太さが良いし、ほかにも、例えばMAESTRO Echoplexなどのテープ・エコーのシミュレートは素晴らしい。独特のコンプ感はもちろんのこと、テープがヨレて音がランダムに変化していく感じや、フィードバックが段々ひずんでいく感じも生々しい。特にROLAND RE-201はディレイ・パターンのバリエーションもとてもよく再現されている。これだけのために本製品を入手したいくらいだ。さらには6種類のマイクプリのシミュレートもある。APIやNEVE 1073などプロ・スタジオでスタンダードとされているものばかりだ。録り終えたソースのサウンドが物足りないと思ったときに使用してみたり、ミックス時に通常のプラグインとしてトラックに使用するのも有効だ。本プラグインはアンプ・シミュレートのみならず、アウトボード感覚でテープ・エコーやスプリング・リバーブなどをさまざまな素材に使用できる、便利なマルチエフェクターと言えるだろう。(サウンド&レコーディング・マガジン2009年6月号より)
LINE6
Pod Farm Platinum
43,050円
■Windows/Windows XP以上、INTEL Pentium4 1.2GHz以上のCPU(2.5GHz以上推奨)、空き容量512MB以上のRAM、空き容量1GB以上のハード・ディスク ■Mac/Mac OS X 10.4.6以上、INTELまたはPower PC G4 800MHz以上のCPU、空き容量512MB以上のRAM、空き容量1GB以上のハード・ディスク