音を手に取るようなレスポンスが魅力の4バンドEQ

GREAT RIVEREQ-1NV
NEVE 1081/1083などのブリティッシュEQをベースに開発

GREAT RIVER EQ-1NV オープン・プライス(市場予想価格/265,000円前後)今回レビューするGREAT RIVER EQ-1NVは、NEVE 1081/1083などブリティッシュEQをベースに開発されたとのこと。レコーディングやライブPAなどで音を加工したり作り込んだりと、いろいろと工夫をするのは楽しいものですが、周波数ポイントごとのボリュームを上げ下げするEQは、初心者の方でも変化が分かりやすいので、入門機材として最適なのではないでしょうか。この変化の具合や音色にモデルそれぞれの特色が現れるので、好みが分かれるところです。例えば車で言うと、ハンドルの切れ具合や乗り心地といったところでしょうか。運転していて気持ちよくカーブを曲がれたときは楽しいものです。

高級感漂う頑丈なボディ ハイパス・フィルターも搭載


ずっしりと重い段ボールの箱を開けてみると、ハーフラックの黒いボディで正面のパネルはザラザラとしたつや消しの製品が現れます。手に取ってみると丁寧で丈夫そうな作りで、高級感が漂います。電源部は3ピン・ソケットの好みのケーブルを使用できるのも便利でしょう。本機は4バンドに加え、18dB/octのハイパス・フィルター付きのEQです。フロント・パネルのレイアウトは、左からHI-PASSつまみ(17~270Hz)、INPUTレベルつまみ、LOW(22~470Hz)、LO-MID(220Hz~1.2kHz)、HI-MID(1.5~8.2kHz)、HIGH(2.2~18kHz)のセクションが並んでおり、各バンドには周波数セレクトつまみとレベル調整つまみ(すべて±15dB)が付いており、LOWとHIGHはシェルビングとピーキングの切り替えが可能、LO-MIDとHI-MIDは3タイプからQカーブを選択できます。また、一番右は電源スイッチとなっています。周波数セレクトつまみはNEVE風のカチカチとしたクリッカブル・タイプ(LOW/HIGHは8段階、LO-MIDとHI-MIDは11段階)。一番左のOFFポジション以外では緑色のLEDが点灯するので、オン/オフを確認できて便利です。これらのつまみのデザインは昔のTRIDENT Trident Series 80に似ているのが面白いところ。入出力系統はライン・イン(XLR)、ライン・アウト(XLR、TRSフォーン)に加え、さらにPATCHジャック(TRSフォーン)という機能が搭載されています。ここを介して同社のマイクプリME-1NVとリンクし、INPUTレベルつまみをMPIにすることで、これら2基を1Uのチャンネル・ストリップとして使用できるようになるというものです。eq1nv

▲リア・パネル。左から、電源ソケット、PATCHインプット(TRSフォーン)、ライン・アウト(TRSフォーン)、ライン・アウト/イン(XLR)

ドラムなどに独特のひずみを追加 マイナス方向への切れの良さも出色


では期待を込めて試用してみましょう。ちょうど生楽器を中心としたオーガニック系のボーカル・バンドのセッションが入っていたので、録音とミックスで試してみました。まずドラムで試したところ、中高域のアタック感と少しのひずみ感がシャープに加わり、ブリティッシュというよりは今までに無い良い印象を受けました。中低域はあまりひずみ感は感じられず、逆にふくよかでややソフトなかかり方なので、奥行きや倍音が豊かになります。次にベースでは、中低域のソフトさが物足りなく感じました。力強さももう少し欲しいところ。ただ最も狭いQ幅にした際2〜3kHzあたりは鋭く音楽的に切れるので、ノイズを取るには便利です。エレキギターとエレピでは、中高域のほどよいひずみ感がマッチしています。この手のエレクトリック系楽器とは相性が良いようです。逆にアコギや生ピアノでは、中低域の豊かさや奥行き感はうまく表現されますが、中高域はひずみ感によって和音の響きが汚れてしまう傾向にあるので、コード・バッキング重視の生楽器に使用する際には注意が必要でしょう。ビブラフォンやサックス、トランペットなどのブラス系に使用したところ、中高域のスピード感やひずみ感が音楽的で、ドラムと同じように好印象を受けました。最後にボーカルですが、ソフトな歌い回しでは子音がザラザラして聴きづらくなる傾向にあります。逆に力強く歌うボーカルでは、表現力が増し存在感がある音に仕上げることができます。これらすべての楽器に共通して言えることが、ハイパス・フィルターと中高域の効きの良さです。またS/Nも良く、ビンテージというよりは現代的なEQと言えます。しかしつまみを操作するに従ってブリティッシュなニュアンスが加わるので、工夫次第できっと好みの音色が作れることでしょう。簡潔に表現すると、LOWとLO-MIDはAVALON DESIGN+NEVE系のEQな感じで、HI-MIDとHIGHはAPI+NEVE系EQ、といった感じです。EQは中途半端に使うのではなく、勇気と自信を持って積極的に使えば楽しめます。特に本機は効きが良く音がすぐ変わるので、初心者の方でもいろいろチャレンジしてみてください。きっと誰でも車やバイクの運転のように、音を手に取るようなレスポンスを楽しめることでしょう。(サウンド&レコーディング・マガジン2009年6月号より)
GREAT RIVER
EQ-1NV
オープン・プライス(市場予想価格265,000円前後)
SPECIFICATIONS ■LOW/シェルビングとピーキングの切り替えが可能、22~470Hz、±15dB ■LO-MID/シェルビング・タイプ(Qカーブを3タイプから切り替え可能)、220Hz~1.2kHz、±15dB ■HI-MID/シェルビング・タイプ(Qカーブを3タイプから切り替え可能)、1.5~8.2kHz、±15dB ■HIGH/シェルビングとピーキングの切り替えが可能、2.2~18kHz、±15dB ■外形寸法/210(W)×45(H)×230(D)mm ■重量/2.5kg