SOFTUBEFET Compressor
UREI 1176を手本にサイド・チェインやドライ音ブレンド機能などを追加
SOFTUBE FET Compressor Native版：36,540円、TDM版：52,290円プラグインで音作りができるようになったことによる一番の進歩は、コンプ／リミッターだと思います。いわゆる"使えるモノ"が多くなり、今までアナログにこだわっていた人がプラグインで音作りをするようになったというのも、これが一番かもしれません。いわゆる"味"を演出できる製品が多く出てきましたからね。今回のプラグインはいかなる味を出してくれるか、早速チェックしてみましょう。
原音とのバランス調整が可能 サイド・チェイン・フィルターも装備
まず、画面のデザインは実在のハードウェアのコピーかと思うほど立体的。メーカーの説明では、"アナログ・コンプレッサーの中で最も有名なソリッドステート機を見本に、ほぼ完璧なエミュレーションを実現"とあります。ということはUREI 1176を元にしていると想像できますが、具体的にはどこにも表記されていないようです。実際に見ていくと、1176よりもパラメーターを細かく＆多くし、さまざまな用途で使えるようにしたものと言えるでしょう。スレッショルドは固定で、INPUTとOUTPUTで調整していくタイプ。そのほか1176でいう"ALL"も選択可能なRATIO、ATTACK、RELEASEといった基本的なものに加え、サイド・チェイン信号にかけられるフィルター（LPF/HPF）、入力信号を先読みするLOOKAHEAD機能も搭載。そして、とても便利なPARALLEL INJECTというコンプ音と原音のバランスが調整できる機能も搭載しています。また、メーターはVU方式のINPUT、GAIN REDUCTION、ピーク方式のOUTPUTという３つが同時に見られるのは非常に便利。OUTPUTをピーク・メーターにした辺り、にくい演出です。なお、このFET CompressorはNative版とTDM版との２種類のパッケージがあり、Native版はAudio Units/RTAS/VST対応。TDM版はNative版＋TDMの構成で、DIGIDESIGN Pro Tools｜HDに加え、Venueにも対応しています。
クリアで明るいキャラクターを基本にハード・コンプのひずみまで演出
今回は、ある作品のPro Tools｜HD内部でのミックスで随所に試してみました。途中デモ期間が切れてしまいましたが（笑）、最終までこのプラグインを使ったことをまず言っておきましょう。使ってみた印象では、基本的にどんなソースでも、個別の音作りからトータル・コンプまで対応できます。音色的にはクリアで明るめの音。中域がちょっと張り出す感じです。ですので個性の固まりというほどではないのですが、ハード・コンプにした状態のひずみ感も味わうことができます。"Distortion"というプリセットがあるくらいですから、この点は自信を持っているのでしょう。特に、ドラムではアタックの出具合が良い印象。個別トラック以外にもドラム全体の２ミックスで、サイド・チェインのLPF/HPFで高域／低域を少しカットすると、キックの低域やシンバルの高域で変にコンプレッションが強くなる現象を回避することができます。またボーカルでは、PARALLEL INJECTを活用し、"ハードにコンプレッションをしているけどナチュラルに聴こえる"というちょっと裏技的な使い方もできます。筆者が試したのはATTACKを３〜４時、RELEASEを12〜３時、RATIOはALL、そしてPARALLEL INJECTは12時くらい。普通ボーカルではめったにRATIO＝ALLという設定にしないと思いますが、原音とのバランスが調整できることにより、その音作りの幅が広まります。このPARALLEL INJECTはドラムでも有効で、本当においしい機能だと思います。ボーカルではそのほか、フィルターを使ってディエッサー的な使い方も可能でした。最後にLOOKAHEAD機能は、アタックを抑えたいときなどに有効ですが、このLOOKAHEAD分の遅延補正が効かないので、マルチ素材を扱う際は注意しましょう。明るくクリアな音色は、使っていてとても良い印象でした。最近ではちょっとイナタイ音色のプラグイン・コンプが多いですが、このFET Compressorはその中で別のバリエーションとして使える物だと思います。ただ、立体的な画像のため目盛りが見づらい部分もありました。数値を直接打ち込むことも現状ではできないので、その点は次のバージョンアップなどで期待したいですね。それでもぜひ欲しい一品です。（サウンド＆レコーディング・マガジン2009年５月号より）
SOFTUBE
FET Compressor
Native版：36,540円、TDM版：52,290円
■Native版：Mac／Mac OS X 10.4以降、Power PC G3以上またはINTEL製CPU、512MB以上のRAM、Audio Units/RTAS/VST対応のアプリケーション、iLok
■Native版：Windows／Windows XP以降、Pentium III以上のCPU、512MB以上のRAM、RTAS/VST対応のアプリケーション、iLok
■TDM版／上記Native対応環境に加え、DIGIDESIGN Pro Tools｜HD Accel（Pro Tools HD Software 7.0以降）およびVenueに対応
