補正機能を内蔵した同軸2ウェイ・モニター

EQUATORQ10
ソフトやマイクがセットになった専用オプションで自動補正可能

EQUATOR Q10 オープン・プライス(市場予想価格229,800円前後/1本)最近では必ずしも音響環境が完全に整ったスタジオで作業できるとは限りません。しかしパワード・モニターのEQUATOR Qシリーズは、たとえ多少音響的に難点があるスタジオでも、オプションのRoom Analysis Packageを使用することによって、ルーム・レスポンス特性を自動的に測定し、スピーカー内蔵のDSPが出音を自動補正してくれます。今回は、5モデル用意されている同シリーズの中から、254mmウーファー搭載の2ウェイ・モデル、Q10を見ていきましょう。

同軸ならではの定位の良さとすっきりとした音像


まず驚いたのは、大きさと重さ。1つで25kg近くあるので、ミッドフィールド〜ラージくらいではないかと思うほどです。ウーファーとツィーターの配置は同軸型で、ツィーターは25mm径となっています。続いてリア・パネルの確認。入力部はTRSフォーンとXLRです。ほかにコンピューターと接続するためのUSB端子とスピーカー間を接続するためのイーサーネット端子、8個のDIPスイッチが用意されています。なお、このDIPスイッチはサラウンド用のスピーカーID設定用のもの。今回は詳細は省きますが、サラウンドは8.2chまで対応しています。まずは素の音を聴くために、ミキサーとXLR接続で試聴してみました。いつも聴いているリファレンスCDを何枚か聴いていくと、見た目とは裏腹にかなりニアフィールドな音。同軸ならではの定位の良さと広がり、低域のまとまり方です。一方で、派手さやスピード感はなく中域がモタつく印象もあります。試聴したスタジオはもともと中低域がたまる傾向があるため、これは一概にスピーカーだけの性質とは言えません。しかし、筆者がいつも使っているスピーカーと比べると、ウーファーとツィーターのつながりがあまり気持ちよく感じられませんでした。そこで登場するのがルーム・レスポンス補正機能。Q10では2種類の補正方法が用意されています。一つは付属のControl Software(Windows XPおよびMac OS X 10.4以降に対応)にスピーカーの設置状況や部屋の寸法を入力し、補正データを計算させる方法。もう一つは、オプションのRoom Analysis Packageでより正確かつ自動的に補正を行う方法です。ここではRoom Analysis Packageを使ってみましょう。 

ルーム・レスポンス補正機能でさらなるモニター環境を追求


Room Analysis Package(オープン・プライス/市場予想価格59,800円前後)は、測定用マイク、マイク・ホルダー、ウィンド・スクリーン、さらに測定用ソフトのRoom Analysis Software(Windows XPおよびMac OS X 10.4以降に対応)で構成されています。EQUATOR_RoomAnalysisPackage.jpg

▲オプションのRoom Analysis Package。測定用マイク、Room Analysis Softwareと説明書が収められたUSBメモリー、マイク・ホルダー、ウィンド・スクリーン


まずソフトをインストールし、コンピューターとL側のスピーカーをUSBケーブルで接続します。さらに、イーサーネット・ケーブルでL側とR側のスピーカーをつなぎます。そして測定用マイクをコンピューターと接続するわけですが、その際はファンタム電源付きのマイクプリを搭載した48kHz対応のオーディオ・インターフェースが別途必要になります。今回は単体マイクプリのAVEDIS AUDIO MA5とオーディオ・インターフェースのDIGIDESIGN 192 I/Oを使用しました。次にマイクをいつもミックスを行う位置/高さにセットして、画面上のテスト・ボタンをクリックするとスピーカーからノイズやサイン波などが再生されます。この音をマイクが収音して自動でルーム・レスポンスを測定してくれます。測定が終わると、コンピューター上に二次反射音などを含めた部屋の特性が数値で表示されます。あとは補正用のデータをスピーカーへ転送すれば、内蔵DSPが自動的に補正してくれるのです。ここでまた、先ほどのCDを聴いてみました。まず思ったのは、"なんだこの変わり様は!"ということ。中域のにごりやひずみなどがすべて解消されました。ウーファーとツィーターのつながりの良さが実感でき、非常にスッキリしていて、上品で、リバーブの残響も分かりやすいです。ミックス時に使用すれば、何を削っていけばよいかというのがはっきり分かるでしょう。ちなみに、マイクの位置を卓前と、少し低音が回る場所でそれぞれ測定した結果をスピーカーに反映させて聴き比べたところ、どちらも補正の仕方は基本的にはエンジニアがスピーカーのスイート・スポットで聴いているような感じになりました。このスピーカーで盛り上がるような音にミックスしていけば、市販のスピーカーで聴いたときにかなり良い結果になると思います。そういう意味で、コンポーザーの方などはむしろ補正前の方が使いやすいかもしれません。本機の最大の特徴は補正機能。非常に優秀です。購入や試聴の際は必ずこの機能を試してほしいです。最近のパワード・スピーカーは、いろいろ補正できますが、これ以上に優れた物を知りません。これからのスピーカーの先駆けになるコンセプトを持ったものだと直感しました。前にも部屋の特性を補正するソフトをいくつか試しましたが、あまり実用的な物はありませんでした。しかし、このレベルであれば即戦力になるでしょう。(サウンド&レコーディング・マガジン2009年5月号より)

撮影/黒羽俊之

EQUATOR
Q10
オープン・プライス(市場予想価格229,800円前後/1本)
■周波数特性/32Hz〜22kHz ■最大SPL(ペア)/112dB ■クロスオーバー周波数/1.8kHz ■外形寸法/381(W)×381(D)×381(H)mm ■重量/24.5kg