MACKIE.の小型2ウェイ・パワード・モニター

MACKIE.MR5
豊富な入力部を備えさまざまな制作環境に対応

MACKIE. MR5 27,930円(1本)春です。新しい環境や生活が始まったり、制作スタイルを一新したりする方も多いのではないでしょうか。自分も去年、長年使っていたモニター・スピーカーを買い替えてプリプロからファイナル・ミックスをより意識した制作環境にシフトしました。最近はラフ・ミックスですらそれなりのクオリティを求められたりします。またプラグインやソフト音源などの著しい進化に伴い、自宅やプリプロ・スタジオなどでデータをトラッキングすることが一般化しています。そんな中、作業で最も重要な部分と言えばその音の聴こえ方。今回はMACKIE.より新しく発売された2ウェイ型のパワード・スピーカー、MRシリーズのコンパクトなモデルである、127mmウーファー搭載のMR5を紹介していきたいと思います。 

それぞれの制作環境を考慮しさまざまな接続に対応した入力部


同社のコンパクト・ミキサーはもう10年以上使用していまして、自分の初期のデモ制作には欠かせないモノでありました。現在でも、ライブなどで使用していたりと常にそばにある存在です。自分にとってかなり信頼性が高いので、どのような響きを提供してくれるのか興味津々です。さっそく届いた製品を箱から取り出します。本体は思っていた以上にコンパクトで、シンプルな見た目ではありますが黒を基調としたルックスで非常に好印象。自分としてはかなり好きな見た目であり、出てくる音に期待させてくれる感じです。MRシリーズは、バッフルやキャビネット、アンプなどの設計を見直し、ピュアでフラットなサウンドをコンセプトとして制作された高解像度のモニターとのこと。価格を先に知ると先入観にとらわれてしまいそうだったので、今回はあえて値段は調べずに音を聴いて感想を言おうと思います。また試聴もスタジオのコントロール・ルームにて、実際に作業する状況と変わらない環境で行いました。フロント・パネルはシブい感じの本機ですが、リア・パネルにはこのサイズでXLR、TRSフォーン、RCAピンと入力端子も豊富。幅広いユーザーの使用環境に対応できると思います。これによって、モニター・スピーカーの買い替えの際にスピーカー・ケーブルを買い替える必要が無いのはうれしいですね。MACKIE_MR5Rear.jpg

▲リア・パネル。左に入力端子(RCAピン、TRSフォーン、XLR)、右にフィルター設定とインプット・レベルつまみが用意されている


本機は、メイン・モニターとして使用する以外にもホーム・シアターなどのサラウンド環境で使うなどといったさまざまな用途を考慮して作られています。入力系統の豊富さはこんな所にも役に立ちそうな感じです。また、コンピューターやビデオ・モニターなどほかの電子機器のそばに設置しても問題なく安心して使用できる磁気シールドにまで対応し、あらゆる使用環境に対しての配慮もなされています。今さらながらですが、最近の、メーカーがあらゆる使用環境に対してさまざまな考慮をしている点にはホントに驚かされます。人それぞれの制作環境があるし、音楽の提供のされ方も以前とは変わってきているし。MACKIE.ブランドが長年培って来たノウハウがあるからこそだとは思いますが、それにしてもホントにスゴい。......話が若干逸れてしまいましたが、いよいよ肝心の試聴でございます。 

豊かな音の広がりを再現 部屋に合わせてチューニング可能


試聴では、リファレンスで使用しているCDなどを参考にしてみました。あらためて言いますが、実機のサイズは結構コンパクトなので正直なところ"まあそれなりに鳴れば......"ぐらいの感じで思っていました。しかし、音源を再生してみて、まず驚いたのがステレオ感というか、音の広がり具合の豊かさでした。広がり方がものすごく奇麗で、バランスも非常に良いと感じました。何度も言ってますが、このサイズでコレはホントにスゴい。好感度さらにアップです。同時に感じたのが低音、低域の再現性の高さ。特にローミッド辺りの、ベース・ラインのスピード感やパンチ力がものすごく聴き取りやすいです。サイズからすれば変に色付けしてるのではないかと思ってしまいそうですが、この辺りはかなりピュアに、大きめのサイズのものと比べてもそん色無いナチュラルな再現性になっているのではないかと思います。また、ハイミッド周辺の音に関してもチェックすべき帯域の再現はきちんとされているなという感じでした。音楽のジャンルにもよるとは思いますが、気になる部分は少なめです。どうしても、という方はリア・パネルにハイパス・フィルター、ローパス・フィルターを±2dBで調整できるスイッチが付いていますので、部屋の大きさに合わせていろいろ試してみるとよいと思います。

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自分の個人的な判断としては、"低域を中心とした音楽を制作する人には向いているかな"と感じました。いやぁしかし、コンパクトで高機能好きな自分にしてみればコレはかなりのヤツですよ。最後に取っておいたお値段の方も、確認してみれば1本30,000円以内で買えると知り、予想よりも低いことに驚きました。まずはぜひとも店頭でその実力を耳にしていただきたいと思います。(サウンド&レコーディング・マガジン2009年5月号より)

撮影/黒羽俊之(リア・パネルを除く)

MACKIE.
MR5
27,930円/1本
■周波数特性/60Hz〜20kHz(±3dB) ■最大ピークSPL(ペア)/113dB SPL@1m ■クロスオーバー・タイプ/24dB/oct ■クロスオーバー周波数/4kHz ■外形寸法/197(W)×266(D)×292(H)mm ■重量/6.5kg