英国老舗メーカーによる簡易ミキサー内蔵パワードSRスピーカー

WHARFEDALE PROTitan 12 Active
英国の老舗音響機器ブランドの1つ、WHARFEDALE PROの製品が日本の代理店イースペックを通して販売されることになった。1930年代にギルバート・ブリッグス氏によって創設された同社。今回はSRスピーカーTitanシリーズの中から、アクティブ回路搭載&ウーファー口径12インチのTitan 12 Activeをレビューする。

アンプ内蔵ながら軽量なボディ
フット・モニターとしても使用可能


1962年、近代スピーカーの基本技術であるフェライト・マグネットを用いた磁気回路と、コーン紙の最大振幅を大きくするロール・エッジを初めて採用したWHARFEDALE。1970年代オーディオ黄金期はTANNOY、CELESTIONと並ぶ英国三大メーカーの1つとしてあこがれの存在となり、1980年代には音響のプロ・ブランド、WHARFEDALE PROを設立。現在は英米で設計、中国で生産という体制で、世界90カ国で使用されているという。SRスピーカーだけでも3つのシリーズを展開し、今回紹介するTitanシリーズにもTitan 12 Activeのほかにパッシブ回路のTitan 12 Passive、さらに8インチ・ウーファー型のTitan 8 Passiveなどがラインナップされている。さてTitan 12 Activeだが、重量は12.8kgと他社のものより断トツに軽い。Titan 12 Passiveとの重量差もわずか800gで、アンプ部の軽量化に成功している。ハンドルがボディ両側に付いているので、スタンド設置時も取り回しが良く安全だ。ゴムが巻いてあって滑りにくいのも良い。本機はスタンドにセットしてSRスピーカーとして使うのはもちろん、アダプターを使うことなく横置きにしてフット・モニターとしても利用可能だ。フット・モニターとして置く場合、スピーカー面の角度は45度。ただし、電源コードが背面に突き出る形になるので、フット・モニターをお立ち台(古い!)と思っているような出演者の場合は、電源ケーブルの不要なパッシブ型の方が安全かもしれない。なお、本体には埋め込みナットが10カ所にあり、つり下げセッティングも可能だ。

全レンジをしっかり鳴らす音響特性
入力部には2chミキサーも内蔵


本機は2ウェイ・バイアンプ方式、ウーファー・ダクトは63Hzに調整され、能率は98dB W/mと高い。アンプ部は高密度に作り込まれ、低価格にもかかわらずチタン製ダイアフラムのドライバー採用など、志の高いシステム作りがなされている。残念ながら上の写真で確認はできないが、実際に電源を入れるとホーンのスロート部奥から青いLEDが精かんに光る。そんな今風のルックスに反し、中低域が豊かな音だ。しかし実際に計測してみると、低域も高域もしっかり出ている。いわゆるドンシャリな音が好きな人は戸惑うかもしれないが、私の経験上、オペレート難易度の高い会場で勝ち残れるのは、本機のような傾向のスピーカーであることが多い気がする。中高域は、ボディと一体化された90度×60度指向性の楕円型ホーンを通して出てくるのだが、クロスオーバー部に採用されたリンクウィッツ・ライリー・フィルターの長所とも相まって、ウーファーとの音のつながり方や指向角端の消え方が滑らか。好みや目的にもよるが、SRスピーカーとして多くても片側2本くらいで使う本機のようなタイプの場合、適切な特性かもしれない。なお、入力回路は2chあり、それらをリア・パネルのミキサーで混ぜて出力することが可能。入力の1つはマイク・インに切り替え可能だ。入力はXLR/フォーン・コンボが2系統あるほか、RCAピン入力のステレオ・ソースをモノラル化して出力することもできる。パワード・スピーカー付属のミキサー部にやたら機能を盛り込んだものも多い中、シンプルな作りが私は好きだ。出力段にはシェルビング・タイプの2バンドEQ(LOが100Hz、HIが10kHz固定)が付いており、小音量になるに従って60Hzをブーストするベース・オプティマイザーも用意されていて、"伝統の製品を伝統の製法で作る"という英国流を感じた。1960年代生え抜きの人たちが今の同社に残っているとは思えないのに、ブランド・マジックを感じる本機。ほかのシリーズも使ってみたい。

▲リア・パネルの入出力端子部。インプットA(XLR/フォーン・コンボ)とインプットB(XLR/フォーン・コンボ&RCAピン1系統)をミックスし、2バンドのEQ処理を施すことが可能。ライン・アウト(XLR)も用意されている

WHARFEDALE PRO
Titan 12 Active
89,250円

SPECIFICATIONS

▪スピーカー方式/2ウェイ・バイアンプ
▪周波数特性/55Hz〜20kHz(±3dB)
▪アンプ出力/HF:50W、LF:250W(RMS)
▪クロスオーバー/2.3kHz
▪最大入力レベル/+22dBu
▪外形寸法/384(W)×556(H)×312(D)mm
▪重量/12.8kg