２つのつまみでアンビエンスを操作
子音の強調やノイズの再付加も可能
NML RevCon-RRは、ダイアログやSEに含まれる不必要な残響を消去するAudio Suite専用プラグインです。早速立ち上げてみましょう。エフェクトをかけたいリージョンを反転表示させ、Audio SuiteからNML RevCon-RRを選択すると画面が起動、同時に波形が読み込まれます。まず左上のReleaseつまみ（50〜500ms）でリバーブを除去する時間を、そしてその下のReductionつまみでOriginalとDe-Rev、つまりDRY/WET量を決めるという、思いのほかシンプルな構造です。これらに加え、右側のAttack SuppressionとRelease Suppressionで細かく音を作ることができます。これらは残響を消した原音のみにかかるコンプとゲートのようなもので、前者でアタック後のレベルを圧縮し、後者で音のリリースをより短くします。これによりダイアログの子音が強調され、よりはっきりとした声にすることができます。また、Attack Suppressionは独自のコンプレッション・カーブを持っており、それに対し実際にかける割合を1/3、1/2、１から選べます。つまり、１にすると最も深くコンプがかかります。Release Suppressionは−3dB、−6dB、−10dBから選ぶことができます。いずれもスレッショルド値は波形上に表示されるので分かりやすいです。波形の下にはサーモ・グラフィのようなエリアがありますが、これは縦軸が周波数、横軸が時間で、レベルが大きい部分が赤く表示される仕様です。上の波形エリアとこのグラフは、Original（元の音）とProcessed（エフェクト後の音）を右下のボタンで切り替えることができるので、視覚的に効果を確認することができます。もう一つ重要な機能として、Noise Sep.機能があります。これをオンにしてRemix Noiseフェーダーを上げることで、リバーブを消す際にノイズを一度分離させ、残響を消去した後で再び加えることができます。これにより、ノイズ・ゲートなどとは違った自然なデッド感を生むことができます。
ブースの不要な箱なりも除去可能
ロケの保険として有効なツール
では実際に、音声の残響を消してみましょう。例えば掛け声などの録音時、ブース自体の箱鳴りまで録れてしまうことがありますが、このようなダイアログに対して本プラグインで処理をしてみたところ、奇麗に箱鳴り成分を除去することができました。ほかにもロケでしかなかなか収録できない発破／発砲系の音など、どうしても広がりが出てしまう効果音などに対して、実用性はかなり高いと感じました。設定としては、Releaseを300msくらい、Reductionは右にいっぱい回し切るくらいだと良い具合になりました。思った以上に効果のかかり方が緩やかなので、Reductionについては70〜100％くらいに設定しても大丈夫です。しかし元の素材や設定によっては、フィルターがかかった音になってしまうことがあります。また残響が消えることで音の太さとなる低域まで消えて細くなってしまうときなどは、Reductionつまみで少しずつDry音を足していき、自然に聴こえるよう調整するとよいでしょう。ダイアログのようにアタックがはっきりしている音ではなく、減衰がゆるやかなディケイの長いサンプルにはNoise Sep.が効果的です。自然に音の広がりを抑えることができ、ブツリと切れる不快な音になることを防いでくれます。ダイアログはオン・マイクで録音したデッドなサウンドであることが多く、またそれが望ましいのですが、一度の収録ですべてのダイアログを録ることができない場合は別録りを行います。また、リメイク作品のため音声を追加収録するようなこともプロジェクトによってはあるでしょう。このような録音環境の差異が原因で、素材それぞれの残響感が異なってしまうことがままあります。そんなときは本プラグインを使うことで、即座に問題を解決できる可能性は十分にあるでしょう。NML RevCon-RRは、ロケが主となる録音現場で非常に有効なツールであると思います。Audio Suiteなので長尺の処理をするのは大変ですが、EQやコンプ、フェード処理では消すことができないリバーブを除去すことができる心強いプラグインです。失敗の許されない現場で、収録の保険と考えれば安い投資ではないでしょうか？
REQUIREMENTS
■Windows／Windows XP/Vista
■Mac／Mac OS X 10.4以降
■対応プラグイン・フォーマット／Audio Suite
