アンプ・ヘッドとキャビネットの
膨大な組み合わせ
３Uサイズで見た目はギター・アンプのヘッドとマイクプリを合わせたような外観。ツマミ類もギター・アンプを意識したかのように大きく、回したときの感触も重めで扱いやすい。入力信号はマイク／ライン／Hi-Zに対応。フロント・パネルにはマイク入力（XLR）およびHi-Z入力（フォーン）を２系統装備しており、ライン入力（フォーン）×２はリア・パネルにある。出力は２系統のステレオ出力（XLR、フォーン）に加えて、ギター用のダイレクト・アウト（フォーン）、デジタル出力（S/P DIF、AES/EBU）も用意されている。また、ステレオ２系統のセンド／リターン（フォーン）も実装し拡張性も高い。ギター・アンプ・シュミレーターとしては78種類のアンプと24種類のキャビネットを自由に組み合わせることが可能で、ベースも28種類のアンプと22種類のキャビネットから選択できる。マイクのチョイスやアンプへのマイキング・ポジション、アンプからマイクまでの距離なども自由にセッティングが可能。全体的な音の印象は従来のPodシリーズ同様、スピーカーの"鳴る感じ"までもがきちんと再現されている。ギターを弾きはじめる瞬間に鳴るスピーカーの"ボフッ"という振動の感じまでがすごくよく再現されている。マイク用のプリアンプ・シミュレーターも良質。NEVE 1073などガッツリ録る感じのものからAVALON DESIGN VT737のようなハイファイなものまで、６種類用意されている。アコギをコンデンサー・マイクRODE NT2と1073のセッティングで録音するとガッツのある太い音になった。９種類を自在にルーティング可能なモデリング・エフェクトも98種類。ここでは、アナログの空間系エフェクトが良かった。特にECHOPLEX EP-1やROLAND RE-101などといったテープ・エコーのモデリングでは残響音でのテープがよれていく感じがうまく再現されている。同じようにBOSS CE-1のようなアナログ系のコーラス／フランジャーのモデリングもリアルに音が太く、好印象。ギター・シンセのプログラムもさまざまな種類が用意されていてなかなか面白い。昔のROLANDのギター・シンセGRシリーズのようなアナログ・シンセ・サウンドからレゾナンスのきついリード系の音色までが入っていて、プログレ好きのユーザーにはたまらないのではないだろうか？
２系統のプロセッシングを
独立して使用可能
本機は２系統の独立したプロセッシングが可能なので、それをうまくルーティングすることで面白い使い方ができる。２つの異なるアンプ／セッティングを用意し、１つの入力ソースで同時に鳴らすデュアル・トーン機能では、一方はクリーン・トーンにしてFENDER Twin Reverbでリバーブを深くかけ、もう一方をSOLDANO SLO-100をギンギンにひずませた音などにして同時に出すというトリッキーなセッティングが可能。また１人で作曲やアレンジを行う際に２種類の楽器やマイクなどをあらかじめセッティングしておけば、楽器を持ち変えるだけで速やかにパートごとに録音を進めていける。もちろん同時録音も可能だ。さらに本機の大きな魅力はDAWとの連携。USB2.0経由で２イン／２アウトのオーディオ・インターフェースとして使用できる。さらにダウンロードで無償提供されているPod Farmというソフトを経由するとWindows/Macで使用できるDSPプラグイン（VST/RTAS/Audio Units対応）となるのもポイント。コンピューターへの負荷が軽く、操作をパソコンの画面でできるのというのも大きな魅力だ。やれないことはないというくらい機能が凝縮されている本機。すべてのギタリスト／ベーシストにオススメしたいアンプ・シミュレーターだ。
▲リア・パネル。上段左より、デジタル入出力（AES/EBU、S/P DIF）、ライン／マイク切り替えスイッチ、ダイレクト出力×２（XLR）、グラウンド・リフト・スイッチ、ダイレクト出力×２（フォーン）。下段左よりFBV接続端子、MIDI入出力、Variax入力、USB2.0端子、センド／リターン×２（フォーン）、アナログ出力×２（フォーン）、レベル切り替えスイッチ、ライン入力×２（フォーン）
SPECIFICATIONS
▪モデリング・アルゴリズム／ギター・アンプ：78、ギター・アンプ・キャビネット：24、ベース・アンプ：28、ベース・アンプ・キャビネット：22、エフェクト：98、マイクプリ：６
▪外形寸法／482（W）×133（H）×229（D）mm
▪重量／5.9kg
