9種のエフェクトやオーディオI/O機能を備えた高性能DJミキサー

ECLEREVO5
さまざまな機種が発表され活況が続くDJ機材市場に、スペインのECLERからFireWireオーディオ・インターフェース+MIDIコントローラー+エフェクターといった機能が搭載されたデジタル世代なDJミキサー、EVO5が満を持して登場。既にNUOやHAKシリーズが確かな評価を受けている同社の新製品を早速チェックしていきます。

フルカラー・ディスプレイを搭載
フェーダーやEQを視覚的に調整可能


まず、フロント・パネル左側はチャンネル部。ステレオ×4+マイクの計5チャンネルが並びます。それぞれにGAIN、3バンドEQ、PFLボタン、LEDメーター、SENDノブとON/OFFボタン、クロスフェーダーへのアサイン・スイッチ(マイク・チャンネルにはTALKOVERボタン)、続いて縦フェーダーとクロスフェーダーが設置されています。そして真っ先に目につくのが、DJ機材としては珍しいディスプレイです。さまざまな設定はこの画面に表示されるので、"EFFECTS""MIDI""SETTINGS"のカテゴリーに分けられたボタンや、ディスプレイ真下の4つのツマミ、両サイドの6つのボタンなどで調整していきます。実は最初、"EQやクロスフェーダーになんか違和感があるな"と思ったのですが、EQでは3バンドの境界を示す2本の線が表示され、低域は50Hz〜2kHz、高域は1〜10kHzの間で変更でき、2種類のEQカーブ選択やゲイン幅の調節も可能でした。また、クロス/縦フェーダーともにカーブ特性も直線から曲線まで変更可能。こういったデジタルな機能をすぐに操作できるのも、視覚情報の多いディスプレイの採用による恩恵でしょう。ディスプレイ部のすぐ下はエフェクトを操作するセクションで、直感的にコントロールできるPARAMノブ2つ(タップ・テンポ・ボタンでもあります)やDRY/WETフェーダーが並び、その下には各フェーダーのカーブ調整ノブやヘッドフォン・アウトが設置されます。DJプレイ時に多用するであろう各ツマミは大きくて良い感じで、肝心の音質は、デジタル・ミキサーの特性を生かしているような、脚色無くクリア、分離が良く高域の抜けが良い、というシャープな印象でした。

9種の内蔵エフェクトは組み合わせ可能
Traktor ScratchやLiveと相性良好


エフェクトはDELAY/ECHO、FILTER、FLANGER、PHASER、TRANSFORMER、PANNORAMIC、PITCH、REVERB、VOCODERの計9種類で、それらを2個までチェイン接続してカスタマイズできます。またこの組み合わせは64個まで名前を付けてセーブ可能です。プリセットも基本的にはシンプルで実用的なものばかりなのですが、例えば、VOCODERを使用すればおかしな音もすぐ作ることができて、制作のアクセントに使用しても面白そうです。WET/DRYの調整がクロスフェーダーと同じく横フェーダー型なので、DJ時にはディレイのテンポを合わせて疑似的な2枚使い効果も可能ですね(笑)。また本機の特徴として、マスターにリミッターがかけられます。スレッショルドを±10dBの間で設定でき、これがまたメーター通りバシッとリミッティングされ、不用意な過大出力を防いでくれます。さらにこのような重要な設定にはパスワードをかけることもできるので、誤操作による不本意な設定変更の心配もありません。続いて最大24ビット/96kHzに対応するオーディオ・インターフェース機能。今回チェックに使用したAPPLE MacBook Pro+Mac OS X 10.4.11と本機をFireWireで接続しセットは完了。それだけで筆者のABLETON Live上でオーディオ・インターフェースとして認識されました。この手軽さは本当に素晴らしいと思います。イン/アウトがステレオ6系統ずつ用意されている入出力も至って簡潔で、各チャンネルへの入力音とマスター、マイク入力がそれぞれそのまま本機からコンピューター側に出力され、その逆にコンピューターからの音は本機のステレオ4チャンネルとPFL、マスター・アウトに立ち上げることができます。レコードの音を24ビット/96kHzで録り込んでみましたが、DJミキサー部分と同じく脚色無くクセの無い音質で、鳴っている音がそのまま録音されているような感触です。また本機は前述の通りMIDIコントローラー機能も備えており、69系統までソフト上にアサインすることができます。現時点でLive 6、NATIVE INSTURMENTS Traktor 3、Traktor ScratchのMIDIマッピングに対応。中でもTraktor Scratchは公認ミキサーとのことで、その相性の良さはまさに折り紙付きです。充実の仕様、シンプルな操作性で気軽に扱うことのできるEVO5は、これからコンピューターでのプレイや制作を考えているDJの方には特に扱いやすいであろう、多機能なデジタルDJミキサーと言えるでしょう。

▲リア・パネル。左からMIDI IN/OUT、OUT 2(RCAピン)、OUT 1×2(RCAピン、XLR)、REC OUT(RCAピン)、INPUT4〜1はそれぞれLINEとPHONO(どちらもRCAピン)。一番右のTRSフォーン/XLRコンボ・タイプのMIC INには−30〜−50dBのTRIMツマミが併装されている

ECLER
EVO5
オープン・プライス(市場予想価格/348,600円前後)

SPECIFICATIONS

▪AD/DA/24ビット
▪サンプリング・レート/44.1、48、88.2、96kHz
▪外形寸法/433(W)×370(D)×80(H)mm
▪重量/6.4kg