薄型&軽量で実用性も重視したUSB MIDIコントローラー・シリーズ

KORGNano Key/Nano Pad/Nano Kontrol
コンピューターを核にしたライブ、DJ、音楽制作において、もはやMIDIコントローラーは必需品と言っても過言ではありません。今回レビューするKORG Nanoシリーズの3台も今後いろんな場面で重宝されるであろう激熱アイテムです。この超スリム・サイズのUSB MIDIコントローラーたちにどんな可能性が秘められているのか? 早速、検証してみましょう。

従来の手癖から解放してくれる
新しい鍵盤スタイルのNano Key


まず何と言っても、3機種とも見た目のスリム&コンパクトなボディにくぎ付けです。実にキュート! 高さは14〜29.5mm(機種により異なる)で、幅は3機種共通で320mm。これはAPPLE MacBookの幅とほぼ同じで、手前にNanoシリーズを並べてみると、あたかもMacBookの純正アイテムのような案配になります。これが個人的にかなりツボだったのですが、テーブル・スペースの問題で今までMIDIコントローラーの配置場所がしっくり来たことが無く、場所を取らず実用面も妥協しないNanoシリーズは筆者にとって(また、恐らく多くの音楽家にとっても)まさに"待ってました!"といった代物なわけです。さて、ではNano Key(メイン写真上段)から早速いじってみましょう。25鍵から成るミニ鍵盤を採用し、同社のMicroKontrolよりさらに幅を狭めてスリムにした感じです。鍵盤を押すとキー全体が沈む構造(ノート型コンピューターのキーボードと同様の構造)や黒鍵が隣接している点など、通常の鍵盤と異なる点が多々あり戸惑いましたが、実際に弾いてみるとキー自体の反応がすこぶる良く、ベロシティ入力にも対応しているので(ベロシティ・カーブ3段階+固定の4種類から選択)、練習さえすればしっかり演奏できそうな印象。少なくともコンピューターのキーを使った演奏よりもはるかに弾きやすいのは言うまでもなく、また、打ち込み用鍵盤としてなら初めから何不自由なく使えました。このほか、左側の6つのボタンでオクターブ・シフト(OCTAVE DOWN&UP)、ピッチ・ベンド(PITCH DOWN&UP/ボタンを押し続けることで音程が変化)、モジュレーションなどのコントロール・チェンジの送信(MOD/初期設定ではCC♯1のモジュレーションがアサイン)、25個の鍵盤をコントロール・チェンジ送信用に切り替え(CC MODE)が可能。特にピッチ・ベンドやモジュレーションがホイールではないので慣れないと少々つらいかもしれませんが、スリム・サイズを思えば許容範囲です。むしろ、3本の指でピッチ・ベンドのアップ/ダウンとモジュレーション・ボタンを操作するのはなかなか快適でした。また、ベロシティ・カーブの種類やピッチ・ベンドの変化スピード、コントロール・チェンジの送信設定などは専用エディター・ソフトのKontrol Editor(画面①)を使って編集/保存が可能です。▲画面① Nanoシリーズに付属するコントロール・ソフト、KORG Kontrol Editor。画面はNano Key用で、ベロシティ対応の操作子に関してはカーブが選べるほか、任意のコントロール・チェンジをアサインしたり、それらの設定を記憶させておくことができる さらに、Nano KeyにはKORGを代表するシンセM1を再現したソフト版のM1 LE(スタンドアローン、Audio Units、VST、RTAS対応)のライセンスをバンドル。もちろん有名になったM1のピアノ・サウンドもしっかりと再現されており、同機でしか出せない音があることをあらためて認識しました。Nano Keyは通常のMIDI鍵盤とは違う、新しい入力インターフェースという印象でした。本機のキー構造と配列では従来の手癖がほとんど通用しなくなるため、例えばそこを逆手にとって斬新な和音や想像できないフレージングもひらめきやすくなるのではないでしょうか。手癖でお困りの方も試してみる価値があると思います!

指ドラムに最適なトリガー・パッドと
XYパッドも備えたNano Pad


次に、ドラムをリアルに打ち込む用途に適したNano Pad(メイン写真中段)をいじってみましょう。ボタン類が必要最低限まで省かれており、見るからに取扱説明書を読まなくてもすぐに操作できそうです。12個の高感度トリガー・パッドは、Nano Keyと同様に3段階+固定の4種類のベロシティ・カーブがKontrol Editorから選択可能。パッドを押す感触は心地良く、サイズも程良い大きさに設計されていて、好みのベロシティ・カーブを選んで自由な指ドラムを堪能できます。従来のMIDIパッドを使っている方にとって、本機の横2列に配置されたパッドは若干の違和感を覚えるかもしれませんが、これが実際にたたいてみると驚くほど操作性が良いのです! 例えば、Nano Padにライセンス・バンドルされているドラム・ソフト音源TOONTRACK EZ Drummer Lite(Audio Units、VST、RTAS対応)を使ったデフォルト設定では、左手でキック、スネア、タム、右手でハット、ライド、シンバル、フロア・タムといった格好になり、実際のドラム・プレイに近いたたき方を、わずかな運指だけで行えるわけであります。もちろん各パッドへのアサインは任意に変更できますし(4バンク切り替えで計48個分のアサイン可能)、ドラム以外のサンプルも割り当てられますが、生ドラムをイメージしながら忠実にたたきたい場合、この配列はかなり理にかなっているのではないでしょうか。さらに、リアルなドラム・プレイで必要とされるロール/フラム機能(各ホールド可能)も装備されており、スネアのゴースト・ノートなどの表情付けはもちろん、人間では到底不可能なトリッキー・プレイからダビーなドラミングまで表現できます。そのロール/フラムを自在にコントロールするのが左側のXYパッド。パッドのサイズは同社のKaoss Pad KP-2とほぼ同じ50×65mmで、わずかな指先の操作で多彩な表現が可能になります。例えばロールの場合はX(横)軸がロール・スピードでY(縦)軸がロール音量、フラムの場合はX軸が2打目が自動発音されるまでの時間、Y軸が2打目のベロシティに対応しています。このほかにもコントロール・チェンジやピッチ・ベンドにもXYパッドは活用可能。トリガー・パッドもコントロール・チェンジを送信できるので、DAWのトラック・ミュート/ソロにトリガー・パッドをアサインし、XYパッドでフィルターなどのエフェクトを操作するといったライブ・パフォーマンスもできそうです。その際も超スリムで持ち運びに優れた本機の恩恵を受けることは間違いないでしょう。なお、パッドのアサイン状態はKontrol Editorを使って最大4シーンまで記録でき、左のSCENEボタンで切り替えることが可能です。本体をスリム化した故にたどり着いた本機は、小手先だけでポチポチとドラムをたたきたい筆者にとってはお世辞ではなく現在最もたたきやすいMIDIパッドの1つでした。お見事!

168ものCCメッセージが操れ
小型フェーダーも独特なNano Kontrol


さて、最後はDAWの必需品、フィジカル・コントローラーのNano Kontrol(メイン写真下段)です。フィジコンに何を求めるかは人によって違いますが、この超小型ボディに1シーン当たりノブ×9、フェーダー×9、スイッチ×18、トランスポート・ボタン×6が装備され、最大4シーンを切り替えて使用可能。つまり、合計で168ものコントロール・チェンジ・メッセージが操れる本機を不満に思う人はそうそう居ないでしょう。ノブは実用に耐え得るよう、程良い重さに加減されており、回し心地も良好です。ノブ自体がかなり小さいので、一回しするのも楽で、パンやシンセのパラメーターを操作する際もスムーズに扱えます。フェーダーも程良い重量感のおかげで操作が行き過ぎることもありません。余談ですが、同社より本機を用いた使い方として"9本のフェーダーをオルガンのドローバーとして使用する"といった面白いアイディアがアナウンスされていますが、似たような用途として筆者がよく挑戦しているのは、ボコーダーのフリーケンシーを各バンドごとにフィジコンのフェーダーへアサインし、リアルタイムにボイス・キャラクターをコントロールするという方法。しかし、今までは筆者の手が小さ過ぎるという欠点から思うような操作が行えず、かつ同時に扱えるフェーダー数も限られるという悲しい状態でした。そこで、これを本機でやるとどうなるか......? フェーダー間の距離が短いため、片手につき4本の合計8フェーダーを無理なく、しかも同時に動かせるという画期的な操作が実現しました! こんな使い方をする方は皆無だとは思いますが、"このサイズだからこそできる"点を見出すのもNanoシリーズのだいご味ではないでしょうか。Nanoシリーズ3機種ともに専用エディター・ソフトKontrol Editorを併用すれば、相当使えるコントローラーです。というか、一刻も早く導入したいです。このサイズなら3機種並べてもそれほど場所を取りませんので、余裕のある方はコンプリートしてみるのもオツですね。ボディ・カラーは高級感のあるブラック・タイプもラインナップされていますが、写真の白×青のガンダム・カラーも捨て難いっすね!

▲上からNano Key、Nano Pad、Nano Kontrolを手前から見たところ。コンピューターとの接続に使うUSB端子は左側面に用意されている。電源はUSBバス・パワーで供給する

KORG
Nano Key/Nano Pad/Nano Kontrol
Nano Key(6,195円/上)
Nano Pad(7,350円/中)
Nano Kontrol(7,350円/下)

SPECIFICATIONS

▪外形寸法/Nano Key:320(W)×14(H)×83(D)mm、Nano Pad:320(W)×16.5(H)×82(D)mm、Nano Kontrol:320(W)×29.5(H)×82(D)mm ▪重量/Nano Key:220g、Nano Pad:330g、Nano Kontrol:290g

REQUIREMENTS

▪Windows/Windows XP SP2以降またはVista SP1、USBポート搭載マシン(USBチップセットはINTEL製推奨)