カラフルなパッチング・インターフェース採用のセミモジュラー・シンセ

FAWCircle
ハード・シンセを売却してから、さまざまなソフト・シンセをああでもない、こうでもないといじる日々が続いています。自作のソフト・シンセを改造して試行錯誤をしても、結局は“まあ、これでいいか”という妥協に落ち着くという始末。ああ、リニアなカーブを描き消えていく、もうすぐ“アラフォー”の大切な時間……そんな折、以前から気になっていたFAW Circleのレビュー執筆の依頼。珍しいアイルランド産ソフト・シンセです。早速チェックしてみましょう。

ボールをドラッグ&ドロップして接続
オシレーターに波形を追加可能


Circleはユーザーの好みで自由にモジュールを接続できるセミモジュラー・タイプのシンセです。と言っても構成されるモジュールはシンプルなものばかりで、パッチングもモジュールの右もしくは左に存在するカラー・ボールを、ターゲットにドラッグ&ドロップするだけと至極簡単。ターゲットには、接続されたモジュールと同じ色のボールが表示されるので、どこに何がつながっているのかひと目で分かりました。例えばLFOからオシレーターやミキサーに接続してピッチやボリュームなどの周期的な変化を、またはオシレーターを別のオシレーターのピッチに接続してFM変調を、といったことが思い付いたらすぐ実行できます! 細かい設定をする際も深い階層に入る必要が無く、一画面にほとんどを集約した単純明快なインターフェースとなっています。オシレーターは、シンプルにサイン/ノコギリ/矩形/三角の4つの波形から選ぶだけのAnalog Oscillatorと、100種類以上もの波形タイプから2種類を起動し、それをLFOなどでモーフィングしながら発音することができるWavetable Oscillatorに加え、ホワイト・ノイズを発生させるNoise、一度出力した信号をフィードバック入力し発振させるFeedbackの4種類があります。また、FAWのオフィシャルWebサイト(www.futureaudioworkshop.com)からCircle Wave Generatorをダウンロードすることで、独自の波形をWavetableに追加することも可能。自由度の高さを感じます。パラメーターをMIDIでコントロールしたい場合は、右上のMIDI Learnスイッチからアサイン・モードに入り、動かしたい操作子を選択、そして手元でコントローラーを動せば割り当て完了ととてもスムーズ。さらにJAZZMUTANT LemurやMonomeなどで採用されているOSCにも対応している点にも注目です。

モジュールを分かりやすく配置
年代別にもブラウズ可能なプリセット


Circleのモジュールは縦に3列並んでおり、それぞれの機能に合わせて分かりやすく整理されています。まず左側はソース系モジュール、つまり音そのものを発生させるモジュールのセクションです。ここでは前述した4種類のオシレーターから最大4つを起動することができます。中央にはモディファイア系モジュールが並びます。これは音を加工する部分で、MouthFilter/FuzzDistortion/ShelvingEQ/Crusherなど8種類のモジュールから2系統、そしてFilterとそれを2つ組み合わせたDual Filterのいずれか1系統を選択し使うことができます。本ソフトは黒を基調としているので、EQやフィルターの画面も非常に見やすいです。またここの上部にオシレーターの音量バランスを調節するMixer、下部にマスター・レベルを設定するVCAも装備しています。そして右端は、パラメーターに時間的/周期的変化を与えるモジュレーション系モジュールのセクションです。LFO、ADSRを設定するEnvelope、そして16ステップのSequencerの3種類が用意されており、これらを5つまで使うことができます。Sequencerはいわゆるアルペジエイターとしての機能だけでなく、リズミカルなエフェクトを作る際にも便利でしょう。このように左から音の生成、加工、そしてモジュレーターという順番でモジュールが並んでおり、信号の流れも非常に把握しやすくなっています。この3セクションに加え、ボトム・パネルに用意されたマスター・エフェクトとキーボード・フォロー機能を縦横無尽につなぎ合わせ、未知なる音を作り出すことがCircleのだいご味です。しかしながら、500種類以上の豊富なプリセットもあります。ベースやドラムなどのClass、Soft/Hard/WetなどのType、“1980”など年代で分類されたStyleという3つのカテゴリーがあり、これらを選んで絞り込みができるブラウザーが出色。さらに、パッチをランダムに生成することも可能です。サウンドはアナログ・ライクな“太い”系だと感じました。ブリブリとした音ならお手の物です。しかしこのシンセは、パッチング次第でどんな音にも対応しうるポテンシャルを秘めています。シンセのプログラミングは、精通した人でも面倒くさいときがあると思います。しかしCircleは、とにかくシンプルで作業がしやすく、音をいじる楽しさを実感できます。これからいろいろなモジュールが増えることをかなり期待しております。
FAW
Circle
27,300円

REQUIREMENTS

■Mac/Mac OS X 10.3以降、Power PC G4/G5またはINTEL Core Duo 1.66GHz以上のCPU、768MB以上のRAM
■Windows/Windows XP/Vista、INTEL Pentium/Athlon XP 1.4GHz以上のCPU、512MB以上のRAM
■対応プラグイン・フォーマット/RTAS、VST、Audio Units(スタンドアローンでも動作可能)