改良されたユーザー・インターフェースでミックスの本質に迫るDJソフト

NATIVE INSTRUMENTSTraktor Scratch Pro
パソコンでDJをするというコンセプトが登場して既に10年近く経ちました。僕とNATIVE INSTRUMENTS Traktorシリーズはその最初期からの付き合いですが、いよいよVer.4とも言うべきTraktor Scratch Proがリリースされました。では早速、本ソフトの試運転と参りましょう!

楽曲のアートワークを表示
シンク/ループ時の音質も良好


NATIVE INSTRUMENTSのDJソフト、Traktor ProとTraktor Scratch Proは、最大4つのデッキで音源をミックスできるDJソフト。MP3、WAV、AIFF、AACといったほとんどのオーディオ・フォーマットに対応するだけでなく、オーディオCDを使用することも可能です。BPMの自動シンクや自分でポイントを設定できるループ、曲の任意の場所にリズムに合わせてジャンプするホット・キューなどの機能を搭載し、多様なミックス・スタイルに対応します。今回触ることができたのはTraktor Scratch Proで、これにはオーディオ・インターフェースのAudio 8 DJ、接続のためのマルチコア・ケーブル、そしてコントロール・シグナルを記録したCD/バイナルが付属します。Traktor Scratch Proのみ、このCD/バイナルを使用して、ソフト上のデッキを操ることができます。まず本ソフトは、インターフェースのデザインが一新され、前バージョンより見やすく使いやすくなりました。楽曲のカバー・アートワークを画面上で確認できるようになった点は大きいでしょう。アートワークはTraktor Scratch Pro上のソング・エディターでリンクされた画像が表示されますが、iTunesから楽曲をインポートした場合はそのままアートワークが反映されます。僕のように曲をジャケットで覚えるDJは、タイトルとアーティスト名だけでは内容を思い出せないことが往々にしてあるので、これは夢のような機能です。各デッキのミキサー部には、独立したフィルターとピッチをコントロールができるキー・ノブが追加されました。フィルターはセンターから右に回すとハイパス、左に回すとローパスとなるという効率的な設計です。さらにテンポ・フェーダーが、一般のターンテーブルと同じように±8%に設定できるようになり、手動によるテンポ合わせが随分楽になりました。自動でテンポ合わせをしてくれるシンク機能も、アルゴリズムが飛躍的に向上しタイトになったので、4デッキを同時に再生しても大きくずれることがありません。ループ機能が見直され、ループ時にグリッチ音がほとんど出なくなったこともうれしいです。

2系統×3のエフェクト処理が可能
セットアップもスピーディ


本ソフトには、FX1/2の2系統のエフェクトをかけることができます。エフェクトは全部で20種類以上搭載されており、FX1/2それぞれで3つまで起動できます。各デッキのミキサー部にあるアサイン・ボタンを押すことで、エフェクト・セクションに信号が送られます。ディレイやリバーブ、フェイザーやフランジャー、オーバードライブやビット・クラッシャーなど、基本的なものはもちろん搭載。さらにゲーターやビート・マッシャーといった本ソフトならではのトラックのリズムにシンクしたパフォーマンスに最適のエフェクトもあります。リバース・グレインやトランスポーズ・ストレッチというグレイン系のものまであるので、原形をとどめないくらい破壊的にエフェクトをかけることも可能。特にアイスバーブというエフェクトは出色で、その名の通り凍りつくようなリバーブ音がとってもクール。すべてのエフェクトの設定は、スナップショットで記録しておくことができます。今回は付属のバイナルでデッキを操作してみましたが、これには高精度のシグナルが記録してあるとのことで、レスポンスも驚くほど良いです。DJソフトとしての完成度が非常に高いので、できれば専用コントローラーも欲しいと感じました。コンピューターでDJをする際はモニタリングやタイムコードの送受信を行う性質上、どうしてもセットアップが煩雑になりがちですが、俊敏な接続ができるよう専用のマルチコア・ケーブルが用意されている点も魅力でしょう。リッチー・ホウティンのように、曲のパーツをループさせてリアルタイムで曲を構築する、DJというよりはライブに近いプレイにもTraktor Scratch Proでは可能でしょう。どんなフォーマットのDJでも一番大事なのは選曲のセンスです。その点を考慮すると、楽曲のブラウジングに秀でる本ソフトは、最もDJの本質に迫れるツールなのではないでしょうか。

▲本パッケージにはソフトに加え、オーディオ・インターフェースのAudio 8 DJ、コントロール・シグナルが記録されたCD/バイナル、マルチコア・ケーブルが付属する

NATIVE INSTRUMENTS
Traktor Scratch Pro
オープン・プライス(市場予想価格/79,800円前後)

REQUIREMENTS

■Mac/Mac OS X 10.4.0以降、INTEL Core Duo 1.66GHz以上のCPU(Power PCには非対応)、1GB以上のRAM
■Windows/Windows XP/Vista、INTEL Pentium 4/Athlon 1.4GHz以上のCPU、1GB以上のRAM
■対応オーディオ・ドライバー/ASIO、Core Audio、DirectSound、WASAPI