明りょう度の高い音質が存在感を示す万能型コンデンサー・マイク

SE ELECTRONICSSE4400A
近年、個性的でハイクオリティな製品の数々を世に送り出しているSE ELECTRONICSから、コンデンサー・マイクのニュー・カマー、SE4400Aが発売された。まずその風ぼうを一目見て“おっ!?”と思った方も多いのではないだろうか。そう、このSE4400A、レコーディング・スタジオにおけるド定番であり、ボーカル、ギター、ドラム、etcと何にでも使える超万能マイク、旧型AKG C414シリーズに姿形が酷似しているのである。メーカーの紹介文の中にも“万能マイク”のうたい文句がある。というわけで、新旧C414と比較しながら本機の特徴を紹介していこう。

25mmの大型ダイアフラムながら
気配りの利いた小型ボディ


まずは外観だが、C414シリーズをやや幅広く薄くした形は、同シリーズと同一サイズの大型ダイアフラム(25mm)を備えたコンデンサー・マイクとしては小ぶりなので、取り回しも良くセッティングしやすい。さらに付属のショック・マウントもなかなか良くできていて、ショック・マウントの枠より前にマイクがセットされる作りになっているので、音源へより接近したときにも邪魔になりにくい。さらにネジ締めの稼働部内にポッチがあり、締め付け不良からガタついたり、不意に角度が変わってしまうのを防いでくれる。ほかにも、外観的特徴としてテレビの収録やライブ・ステージでの使用時に照明による反射を防ぐため、本体にマットな黒いラバー塗装を施し、スイッチ類も黒く塗装されている。そういった配慮も心憎く、プロ仕様を想定していることがうかがえる。正面側には、4つのスイッチが並ぶ。向かって左から−10/−20dBのPAD切り替え、60/120Hzのローカット・フィルター。この2つのスイッチは共にセンターでOFF、左右に倒してそれぞれの効果を得るのだが、“左と右”という選択をさせることによって設定ミスを防いでいるのはありがたい。C414シリーズはPADのOFF/−10/−20dB、ローカットのOFF/75/150Hzという切り替えを左から右への3点で行うため、慌てて切り替えた際に行き過ぎてしまい、狙いと違うポジションにしてしまうことがあるのだ。続いて指向性切り替えスイッチ。これも3点で、無指向/単一指向/双指向を切り替えることができ、さらに単一指向を選んだ場合は一番右のスイッチにより単一/超単一の切り替えが可能となる。各スイッチは小ぶりながら強度/操作性共に良く、狙い通りのセッティングを確実にできるようになっている。

伸びやかで明るさのあるサウンド
アコギのしんを立たせる押しの強い音色


続いて肝心の音色についてチェックしてみる。ちょうどとあるセッションでリズム録りの機会があったので、ドラムに使用してみることにした。ドラム・キット正面から1.5mほど離し、高さ1m辺りから全体を狙う感じでC414 EBと共にセットし、SSL 4000Gのマイクプリを通し聴き比べてみたところ、S/N、出力共に両者同等くらいの印象。低域から高域までストレス無く、全体的にふくよかで柔らかいサウンドが持ち味のC414 EBに対し、本機の方の低域は若干タイトで、直接音と床からの反射音の干渉から生じるダブつき感はC414EBより少なめ。中域のしんになる部分に“コリッ”とした特徴を持ち、スネアの鳴りにかなりの違いが見受けられる。腰のある強いキャラクターが強調される感じだ。ハイエンドは伸びやかでシンバルなどの余韻も十分に感じられ、全体的に明るくスッキリとした印象を受けた。また別の日に、ボーカルとアコギをソースにFOCUSRITE ISA430 MKIIのマイクプリを通して、今度はC414B-XLIIと比較してみた。C414B-XLIIは5〜7kHz辺りのハイミッドが強くジャリッと抜けてくる、ややギラついた派手めの音色が特徴であるのだが、それに比べると本機は伸びやかではあるものの、ハイミッドのピーク感には乏しいため輪郭の甘いややおとなしめな印象を受けた。恐らく現行機種であれば、よりフラットな音色が特徴のC414B-XLSの方がキャラクターは近かったのだろうが、手元に無かったため比較できなかったのが残念。本機でドラム・キットを狙ったときに感じられた中域の印象はここでも顕著で、600〜800Hz辺りの“コワッ”とした部分がアコギのしんを際立たせ、ストロークでもアルペジオでも存在感のある押しの強い音色が得られた。SHURE SM57でアコギを録ったときの中域の強さが、コンデンサー・マイクでの伸びやかな音色にプラスされている感じ……と表現したら分かっていただけるであろうか。低域がタイトで、スッキリして聴こえるのはやはりC414EBと比較したときと同じ。ボーカルに使用時の印象も今までのイメージ通りで、中域に特徴がありつつ伸びやかでスッキリとしたサウンド。C414B-XLII程のシャープな輪郭は得られないものの、声との相性が良ければ、しっかりとしたキャラクターを持たせつつ、明りょう度の高いボーカル・トラックが得られるであろう。新旧C414との比較という形でSE4400Aの特徴を探ってみたが、外観や仕様での共通点は多かったものの、肝心のサウンド・キャラクターには大きな違いが感じられた。SE4400Aによって強調される中域の存在感は、より音源のキャラクターを立たせるのに一役買うことは間違いない。ハンドメイドによるラージ・ダイアフラムの採用や、オプションでステレオ・ペアのSE4400A ST(176,400円)も用意されているという堂々のプロ仕様スペックながらも、やや安価な価格設定なので、宅録用に導入を検討する余地もあるのではないだろうか。セオリー通りのマイキングでしっかりとした音を録るも良し、指向性を変えることによって生じる音色、音像の変化を利用し、独自のより個性的なトラックを作るも良し、プロ/アマを問わずアイディア次第でさまざまな制作に十分なポテンシャルを備えた製品である。
SE ELECTRONICS
SE4400A
84,000円

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/20Hz〜20kHz
▪指向性/無指向、双指向、単一指向、超単一指向
▪外形寸法/2.5(φ)×140(H)mm
▪重量/140g