オーディオI/OとMIDIコントローラーを内包した最高級DJミキサー

ALLEN&HEATHXone:4D

確かな音質と操作性で、世界中のDJから厚い信頼を集めるイギリスの老舗メーカーALLEN&HEATHからXone:4Dがリリースされました。DJミキサーのルックスに、オーディオ・インターフェースとMIDIコントローラーの機能を内包したオールインワンな本機を、ここではABLETON Liveを活用した制作/ライブとアナログ/CDターンテーブルでのDJプレイでの使用を前提にチェックしていきたいと思います。

伝統あるフィルターを装備した
充実のDJミキサー部


まずはブラックを基調としたシックなルックスが、ハイエンド・モデルとしての存在感をアピールしてきます。明る過ぎない程度に自照する各操作子の視認性の良さに加え、印字部分はブラック・ライトで光る仕様(写真①)。こうした配慮からも、"現場"での使用が前提とされていることがうかがえます。コンピューターとの接続はUSBケーブル一本でOK。Xone:4DではUSB 2.0が採用されており、高速かつ安定したデータ転送を実現しています。Windows/Mac共にドライバーをインストールし、Live側でオーディオやMIDIの設定を済ませば、すぐに音を出せます。▲写真① Xone:4DはXone:3Dのグレーから一変した漆黒のボディを採用。精かんさが増しただけでなく、ブラック・ライトで印字が光るグロープリントの採用により、暗いDJブース内での視認性が大幅に向上している。またフィルターのON/OFFボタンなどパフォーマンスに重要な操作子は自照式になっており、大事な局面でも確実にオペレートできる それではまず、トップ・パネル中央にあるDJミキサー部の各操作子から説明していきます。入力はステレオ4系統で、内3系統がPHONO入力に対応。各チャンネルにはFX 1/2へのSENDノブ、PHONO/LINE、コンピューターなどの入力ソースを選択するボタン、トリム、3バンドEQ、クロス・フェーダーへのアサイン・スイッチ、ヘッドフォンでのモニター時に使用するCUEボタン、縦フェーダー、そして各chで独立したレベル・メーターがコンパクトに配置されています。最下部にあるVCAタイプのクロス・フェーダーは、動作が軽い上に切れ味も抜群で、調子いいです。チャンネル・インプット部の両脇には、SENDに対してのRETURNノブ×2、クロス・フェーダーの両サイド(X/Y)にアサインできるVCFフィルター(写真②)、エディット可能なLFO、BPMカウンター、マスター・レベル・メーター、MASTER/BOOTHへの出力やCUEレベルの設定をするノブなどが無駄なく配置されています。▲写真② Xone:4DにもALLEN&HEATH伝統のVCFフィルターを搭載。上からRES(レゾナンス)ノブ、HPF(ハイパス・フィルター)、BPF(バンドパス・フィルター)、LPF(ローパス・フィルター)の各ボタン、FREQ(フリケンシー)ノブ、ON/OFFボタン。LFOやEQとの連動で多彩な音作りが可能だ また、フロント・パネルにあるヘッドフォン端子は通常のフォーンに加えてステレオ・ミニにも対応。その横にあるMICセクションにはLEVELノブに加えて、ローパス/ハイパス・フィルターが用意されています。

24ビット/96kHzに対応し
レコードも高音質でデータ化が可能


続いて、機材の両サイドにあるMIDIコントローラー部。ノブ×8、フェーダー×4、ボタン×12など定番のものから、スイッチと一体となったロータリー・エンコーダー×5、自照式のボタン×4(数字はすべて片側)、ジョグ・ホイール(これもスイッチと一体化しており、4方向に押せます)といったユニークな操作子を本機全体で計105基用意。こちらも充実の仕様と言えるでしょう。最後にオーディオ・インターフェース部です。まずコンピューターへのオーディオ入力ですが、DJミキサー部のINPUT 1/MICのいずれかに入力された音声信号がch1&2に立ち上がり、INPUT 2/FX 2が3&4、INPUT 3/FX 1が5&6、INPUT 4が7&8、そしてS/P DIFデジタル(コアキシャル/オプティカル)が9&10と、計10chのインプット構成となっています。Xone:4Dは待望の24ビット/96kHzに対応したということで(画面①)、早速最高レートでアナログ・レコードの楽曲をLiveに録ってみました。結果、録り音はDJミキサーに立ち上がった音がそのまま録音されているような誇張の無いサウンド。レコードからのサンプリングも、クオリティが一段上がったような印象......DJや制作とは少し離れるかもしれませんが、本機は最大でPHONO3系統をDAWの別トラックに同時録音できるので、例えばRANE Serato Scratch Live用にひたすらレコードを取り込んでオーディオ・データ化している方も、納得のいく音質で、一気に作業を効率化できると思います。▲画面① Windowsでは付属のCD-Rより"XONE:4D USB ASIO driver 2.8.16"をインストール、各種設定はこのコントロール・パネルを使って行う。Xone:4Dは待望の24ビット/96kHzへの対応を果たした。もともとオーディオ回路の音質には定評のあるALLEN&HEATHだけに、DJ/ライブだけでなく、制作にもそのポテンシャルを生かせるようになったメリットは大きいと言えるだろう 次にコンピューターからの出力ですが、まず2ミックス(LiveのMaster)は、MIX OUT/MONITORなどから出力されます。加えて別途SOUNDCARD OUTPUTSというアサイナブルな出力端子がリア・パネルに6ch分用意されており、2chのデジタル出力と合わせて計10ch分の同時出力が可能。派手めのルックスから"DJ/ライブ用"と取られがちな本機ですが、基本的なサウンド・クオリティがしっかりしている上、豊富な端子を活用できるなど、多入出力オーディオ・インターフェースとして自宅スタジオの制作システムの中核に据えるような使用法も、十分"アリ"ではないでしょうか。

ステージでは"マウス要らず"の
高いコントロール性を実現部


ここからは実際に使用していった感触などを書いていきます。まずDJミキサーとしてですが、この分野では定評ある同社だけに手堅い作りで何も言うことはありません(笑)。音質はキメ細やかながらしっかりとしんがあり、フォノ・アンプの優秀さがうかがえます。ミックス時の音の混ざり具合も滑らかで"さすが"という感じ。EQの効きは+6dB〜オフ(フル・カット)までで、"脚色"という意味での派手さは無いですが、実戦に適した使いやすい設定だと思います。逆にダイナミックに音色を変えたい場合は、フィルターの使用がお勧め。HPF/BPF/LPFの3種類から好みのタイプをセレクトでき、20Hz〜20kHzで連続可変のFREQノブを回したり、TAPボタンでテンポ設定可能なLFOと組み合わせることで、過激に音質を変化させられます。しっかりとした作りは、MIDIコントローラー部も同様。ステージでの使用を念頭に置いた利便性の高いレイアウトとなっています。ちなみにXone:4Dには、あらかじめLiveやNATIVE INSTRUMENTS Tracktor用に操作子がアサインされたテンプレートが同梱。今回はそちらを使用したのですが、最近のMIDIコントローラーの例に漏れず、ソフト上のほとんどの操作がマウスに触れることなく可能となっています。例えばLiveの場合、ジョグ・ホイール右上のロータリー・エンコーダーを回すと"シーン"をセレクトでき、そのままロータリー・エンコーダーを押し込めば、そのシーンが再生されるといったダイレクトな操作性。もちろん自分で好みのMIDI信号をアサイン可能なので、ジョグ・ホイールで曲テンポをコントロールしたり、ソフト・サンプラーを併用して効果音をXone:4Dのボタンに仕込むといった小技も自由自在です。ほかにも、高機能なBPMカウンターを活用して、例えばターンテーブルでプレイ中のレコードから検出したBPMをマスターにしてDAWソフトとMIDI同期するといった芸当もお手の物。いやはや、便利な世の中になったものです。本機はオーディオ・インターフェースまで一体化しているので、面倒な配線や接続に気を取られることなく、制作やプレイに集中できます。アナログ/CDターンテーブル、エフェクターといったDJツールからシンセ、リズム・マシンなどのハードウェア、またはコンピューター内のソフト音源のコントロールを本機1台で統括し、DJ/ライブでのプレイからDAWを活用した録音やエディット、ミックスまでを高音質でスムーズに進められるシームレスな環境は、レビュー前に予想していたよりもずっと快適でした。状況に合わせてさまざまなソースをまとめ上げられるXone:4Dは、文字通り"ミキサー"としての面目躍如たる製品と言えるでしょう。

▲リア・パネル。上段左のINPUT 4はステレオのLINE×2系統(RCAピン)、その右のINPUT3〜1はLINE/PHONOがそれぞれ1系統(共にRCAピン)、その右はステレオのFX RETURNS×2系統(RCAピン)、下段左よりMIX OUT(XLR)、MONITOR、FX1 SEND、REC OUTも兼ねるFX2 SEND(すべてRCAピン)、ステレオのSOUNDCARD OUTPUTS×3系統(RCAピン)、S/P DIF入出力(コアキシャル/オプティカル)、ジョイスティックなどを接続できるGAME/MIDI(D-Sub 15ピン)、MIDI IN/OUT、FOOT SWITCH(フォーン)、USB 2.0端子

ALLEN&HEATH
Xone:4D
オープン・プライス(市場予想価格/370,000円前後)

SPECIFICATIONS

■出力レベル/+4dBu@MIX OUT、0dBu@MONITOR、−2dBu@FX1/2 SEND
■入出力レベル/最大+9dBu
■周波数特性/20Hz〜30kHz(+0/−2dB)
■全高調波歪率/0.02%@1kHz +0Vu Out
■外形寸法/432(W)×88(H)×358(D)mm
■重量/5kg

REQUIREMENTS

■Windows/Windows XP/Vista、1.5GHz以上のCPU(INTEL Core 2 Duoを推奨)、1GB以上のRAM、QuickTime 6.5以上、DVD-ROMドライブ、USB 2.0端子
■Mac/Mac OS X 10.3.9以上(10.4以上を推奨)、Power PC G4以上のCPU(INTEL Core 2 Duoを推奨)、1GB以上のRAM、QuickTime 6.5以上、DVD-ROMドライブ、USB 2.0端子