Cubaseとの親和性に優れた多機能オーディオ・インターフェース

STEINBERGMR816 CSX
2005年にSTEINBERGがYAMAHAの傘下になってから、YAMAHA製品へのSTEINBERGソフト・バンドルや、STEINBERG Halion OneへYAMAHA Motif音源の搭載など、さまざまなシナジー効果が発揮されているSTEINBERG製品群。MR816 CSXはその集大成といっても過言ではない製品になっています。オーディオ・インターフェースでありながらさまざまな要素を兼ね備える本機の詳細を見ていきましょう。

色付けのない素直な音の
マイクプリを8基搭載


まずは16イン/16アウト仕様である本機の入出力を見ていきましょう。アナログ入力はマイク/ライン対応の8ch(XLR/TRSフォーン)を備え、全マイク入力は48Vファンタム電源を供給可能なほか、ch1はHi-Z入力にも対応。本機のマイクプリは大変素直な音で、色付けなどもほとんど感じられません。その後段にあるADコンバーターも含め、大変実直に作られている印象です。マイクプリの搭載には、入力段階で細かなゲイン調整ができるという大きな利点があります。そのため前段階でミキサーが必要ありません。一方、アナログ入力のch1/2にはインサート・ポイント(TRSフォーン)があり、外部コンプなどのかけ録りも可能。ボーカル録りなどには必要不可欠となるでしょう。なお、アナログ出力はライン出力(TRSフォーン)が8ch用意されています。デジタル入出力はADATとステレオ1系統のS/P DIF(コアキシャル)を切り替えて使用可能です。さらに、それぞれ独立したレベル付きの2系統のヘッドフォン出力、ワード・クロック入出力と充実の内容。アナログ・シンセ好きとしては昨今のオーディオ・インターフェースには入出力が少なめものが多く困っていましたが、フル・ボリュームとも言えるこの入出力は心強いかぎりです。

2種類のエフェクトを内蔵
かけ録りからモニターまで活躍の


さて、“本機の目玉”と勝手に筆者が思っているのがエフェクトの搭載です。本機にはチャンネル・ストリップのSweet Spot Morphing Channel Strip(以下Channel Strip)とRev-Xという2種類が内蔵されています。Channel Stripはサイドチェイン付きコンプとEQからなり、透明感のある音質です。つまみを回したときの反応もよく、とても“よく効いてくれる”感じ。中でも特筆すべきはMORPHノブ! このノブの各位置にはプリセットが設定され、ノブを回すことで各プリセット設定間をモーフィングしていくことが可能です。この機能の素晴らしいこと! プリセットだけでは目的の音が得られない場合でもこのノブを回し、微調整で最適な設定を見つけ出せます。適当に回して新たな音を発見することもしばしば。数日間の試用でもいろいろな新発見をしました。また、Rev-XはYAMAHAのSPX2000などに搭載されているリバーブ・アルゴリズム直系のエフェクト。音はまさにYAMAHAです。オケ中で存在感があり、美しくなじむ音は昨今のリバーブ・ソフトでも頭一つ抜けている感じです。さすが積年の技術と言えるでしょう。この2つのエフェクト、単体でも十分製品になりうるクオリティです。これ本当に付属しちゃっていいんでしょうか……。これらのエフェクトの使い方ですが、本機には16chのデジタル・ミキサーが内蔵されており、各チャンネルにはChannel Stripが、さらにセンド・エフェクトとしてRev-Xが用意されていて、Cubase 4.5.1以降であれば拡張ミキサー画面から操作可能です。例えば、Channel Stripでかけ録りしつつ、モニターにはRev-Xをうっすらかける、なんてことが1台で完結するのです。しかも、CubaseのControl Room機能とリンクさせると、ゼロ・レイテンシーのモニター・ミックスを最大8系統まで作成でき、複数のミュージシャンへ個別のモニター・ミックスを送れます。さらに、本機を“外部エフェクト・モード”に切り替えると、Cubase 4.5.1以降であれば、これらのエフェクトをVSTプラグインとしても利用できるので、録音時だけでなく曲作りやアレンジなどでも活用できます。なお、ほかのDAWでは付属ソフトのMR Editorで内蔵ミキサー/エフェクトを操作でき、このMR EditorとDAWをルーティングすることによって内蔵エフェクトも使用可能になります。ほかにも本機には、Cubaseで使う際に便利な連携機能が用意されています。例えば、Cubase上で録音したいトラックを選択し、本機の各入力チャンネルに装備されたQUICK CONNECTボタン押すだけで、そのチャンネルがトラックへ自動的にアサインされます。最後になりましたが、本機は単体のデジタル・ミキサーとしても使用できます。コンピューターが起動していないときに演奏の練習をしたりすることもできるので大変便利です。エフェクトやデジタル・ミキサーとしての機能まで兼ね備えたMR816 CSX。オーディオ・インターフェースってくくりでいいんでしょうか? できることはもっと幅広いと思います。まさに音楽制作の中心に据えるに申し分ない次世代オーディオ・インターフェースと言えるでしょう。20081201-04-002

▲リア・パネル。左からAC ADAPTOR IN、S/P DIF入出力(コアキシャル)、オプティカル入出力(ADATとS/P DIFを切り替え可能)、FireWire×2、ワード・クロック入出力(BNC)、アナログ出力×8(TRSフォーン)、アナログ入力×6(XLR/TRSフォーン・コンボ)、インサート×2(TRSフォーン)

STEINBERG
MR816 CSX
オープン・プライス(市場予想価格/140,000円前後)

SPECIFICATIONS

■サンプリング・レート/44.1/48/88.2/96kHz
■外形寸法/480(W)×44(H)×305(D)mm
■重量/3.2kg

REQUIRMENTS

■Windows/Windows Vista/XP、1.4GHz以上のINTEL Core/PentiumまたはAthlonプロセッサー、1.7GHz以上のCeleronプロセッサー、512MB以上のRAM、DVD-ROMドライブ
■Mac/Mac OS X 10.4以降、PowerPC G4 1GHz以上、Core Solo 1.5GHz以上、512MB以上のRAM、DVD-ROMドライブ