大幅にパワーが向上し新機能も搭載されたDSPプラグイン・システム

UNIVERSAL AUDIOUAD-2 Solo
UAD-1の導入を考えたことのある人ならそれを確実に後押しするDSPプラグイン・システム、UAD-2がついに出ました。独特なプラグインの構成で人気の高かったUAD-1シリーズの弱点=パワー不足によるストレスを解消し、新機能も搭載してあるというUAD-1ユーザーも待望の本製品。今回は個々のプラグインではなく、そのパワーと新機能を主にレビューしていきます。

チップ数の違う3種類がラインナップ
パワーや機能だけでなく音質も向上


UAD-2はPCI-Expressカード・タイプで、Solo、Duo、Quadという3モデルが用意されています。これらはDSPチップ、ANALOG DEVICES Sharcプロセッサーの搭載数の違いで、Soloは1基、Duoは2基、Quadは4基となっています。DSPパワー的には、SoloはUAD-1の2.5倍、Duoは5倍、Quadは10倍という驚きのパフォーマンスを発揮します。付属プラグイン構成にもバリエーションがあり、UAD-2シリーズは合計9種類のラインナップになっています。また、UAD-2はいずれかの組み合わせで最大で4枚まで、さらに4枚のUAD-1との共存が可能で、UAD-1/2合わせて最大8枚まで同時に使用できます。今回は実際に、4枚のUAD-1と1枚のUAD-2 Soloを比較しながら使ってみます。なお、プラグイン形式はVSTおよびAudio Unitsに対応しており、RTASには未対応です。UAD-1用プラグインを所有しているユーザーは、プラグインをVer.5.0にバージョン・アップすることによってUAD-2で使用可能になりますが、一部UAD-2に対応していないプラグインもあります。メーカーによると、これらはRTASと合わせて今後対応していくとのこと。ソフトのアップデートは早いメーカーなので、その辺りは心配ないでしょう。では新機能について見ていきましょう。まず自動的にDSPリソースを配分し、プラグインの効率を最大限まで引き上げるL.O.D.E.(Live Optimizing DSP Engine)が搭載されており、ひとことで言えば頭の使い方がうまくなっております。その安定性による作業効率の向上だけでなく、出音の抜けもシャキっとクリアになっており、音質的にも良い結果を出しているなと、特に高負荷時に感じました。UAD-1はこの辺りが弱かったので個人的にはこの機能が一番の収穫です。また、UAD-1で作ったセッションがUAD-2でも完全に立ち上がるSessionMap機能もあります。これは当たり前のようで実はうれしい機能です。次はUAD-2でのみ機能する新たなローレイテンシー・モードのLiveTrack。実際にコンプのLA-2Aをインサートしてベースを録音し比べてみました。DAWはSTEINBERG Nuendo 4、オーディオI/OはRME HammerFall DSP 9652、バッファー・サイズは1,024サンプルで、サンプリング・レートは48kHz。この環境でLiveTrack機能をOFFにしたまま録音すると、レイテンシーは64ms。ONにすると43msとなり、20ms以上抑えられました。ホストCPUへ負荷がかなりかかりますので実用的かというと正直疑問は残りますが、新機能の一つとしての魅力は感じます。

Solo1枚でも十分なパワーを発揮
アナログなエッジ感はUADならでは


本製品の一番の魅力はパワーの向上でしょう。UAD-2 Solo1枚でも豊富にプラグインを使えるようになりました。例えば僕がドラム・トラックをビルド・アップする場合、サンプリング・レート48kHzで、Neve 1073と1176LNをキック/スネア/スネア・ボトムに使ってエッジ/アタック感や位置を調整し、トップやタムはそれぞれNeve 88RSでまとめます。アンビにはLA-3Aを使って部屋鳴りの空気やラウド感を強調。ドラム・バスにNeve 33609、Fairchild 670を軽くかけて、最後にPlate 140を全体のリバーブとして使います。このように適材適所で豊富なプラグインを用いることでエッジの利いたドラム・サウンドを作ることができるのですが、UAD-1のときはDSPパワーを必要としたNeve 33609も軽々と起動する点には感動です。またこのときUAD-2のDSP負荷は90%ですが、動作にストレスはありません。これをUAD-1で行うには3枚必要で、それぞれの負荷は平均82%となります。この差はチップの処理能力とL.O.D.E.機能によってリソースの無駄がなくなることに起因するようです。このように多くのプラグインを組み合わせ、皆さんのサウンドにUADシリーズならではのアナログ感あふれるスパイスを加えることができます。今回パワーアップしたUAD-2シリーズは既存のUAD-1ユーザーにはぜひお勧めしたい製品です。僕は今まで4枚のUAD-1を使ってきましたが、これならUAD-2 Solo1枚でこと足りるほどです。高サンプリング・レートでの作業効率を考えた上でも、本製品のパワーは音楽制作の可能性を大きく広げるものになっていると感じました。
UNIVERSAL AUDIO
UAD-2 Solo
オープン・プライス(市場予想価格/78,750円前後)

REQUIREMENTS

■Windows/Windows XP/Vista、256MB以上のRAM(512MB以上を推奨)、125MB以上のハード・ディスク空き容量、PCI-Expressスロット、CD-ROMドライブまたはインターネット接続環境、VSTが動作するホスト・アプリケーション(RTASは年内対応予定)
■Mac/Mac OS X 10.4.0以上、256MB以上のRAM (512MB以上を推奨)、125MB以上のハード・ディスク空き容量、PCI-Expressスロット、CD-ROMドライブまたはインターネット接続環境、VSTまたはAudio Unitsが動作するホスト・アプリケーション(RTASは年内対応予定)