8つの映像をミュージシャン・ライクな操作でミックスできるVJソフト

ARKAOSGrandVJ
VJソフト創成期より、MIDI信号を利用して映像をコントロールするソフトの開発にあたっていたARKAOSから、ユニークなソフトが登場した。映像も音楽も同じ感覚で操作できたら......そんな希望に応えてくれるのがGrandVJだ。

MIDIノートでの映像の切り替えや
フェーダーでの自然なミックスが可能


GrandVJは、映像の出力やエフェクトなどの機能をMIDIで制御できるVJソフトだ。QuickTime、MPEG-1/2/4、AVI、WMV、SWF、VOB、JPEG、PICT、BMP、GIF、PNGと多彩なファイル・フォーマットに対応している。多くのVJソフトはアスペクト比が4:3で固定されているが、GrandVJは4K(4,096×2,160)での入力に対応し、出力解像度は設定自由。プロジェクターとスクリーンの角度が合わずに台形になってしまった画面を補正するキー・ストーン機能もあるので、さまざまな会場で最適なセッティングが行えるだろう。プレイに際しては、シンセ・モードとミキサー・モードという2種類のモードが用意されており、いずれもユーザーの好みでウィンドウを配置することができる。シンセ・モードはARKAOSの過去のVJソフトで採用されていた伝統のスタイルで、鍵盤のインターフェースに素材(セル)をアサインし、MIDIやコンピューターのキーボードで切り替えるモード。音楽のタイミングに合わせてリズミカルに映像を切り替えたいときはこちらが向いているだろう。一方ミキサー・モードは、少し変わったインターフェースを採用していて、これがGrandVJを特徴付けていると言っても過言ではない。このモードではレイヤーが縦に8つ並んでおり、それぞれに横フェーダーを備えている。上部に位置する数字の大きい方のレイヤーに入っている素材が、下部に位置する数字の小さい方のレイヤーの前景となる構造になっている。例えば、合成設定を何もせずレイヤー1と2に素材を配置した場合、ともにフェーダーを最大値にすると、レイヤー1に入っている素材は全く表示されず、レイヤー2の素材しか見えない。この状態から、レイヤー1はそのままでレイヤー2のフェーダーを下げていくと、背景となっていたレイヤー1の素材が徐々に見え始め、最小値にするとレイヤー2の素材は見えなくなる。このような構造のレイヤーが8つ用意されており、自然なフェード・イン/アウトが可能だ。複数の短い映像を重ねるだけでも個性的な映像を生み出せるし、操作も横向きのオーディオ・ミキサーのようで分かりやすい。合成および透過設定は、加算、減算、乗算など6種類があり、さらに映像の無い部分の透過を設定するマスクモードにはルミナンスやクロミナンスなど5種類がある。この設定の豊富さもGrandVJの特徴の一つだ。

ReWireスレーブに対応
現場で助かる映像生成機能も


プレイに際し、今回はMIDIコントローラーのAKAI PROFESSIONAL MPD32を使った。ミキサー・モードで素材をパッドに、各レイヤーのフェーダーをMPD32のフェーダーに、そしてエフェクトの制御やバンクの切り替えなどをMPD32のつまみにアサイン。実際に両手で直感的に操作してみると、同時に複数のパラメーターを変化させることで本領を発揮するソフトであると感じた。またReWireスレーブに対応しているので、DAWからMIDIデータをGrandVJに送ると、映像を出すタイミングからエフェクトの制御まで完全に音と同期して出力することができる。音楽と映像、双方のパフォーマンスを同時に披露するオーディオ・ビジュアル系のアーティストにはとても魅力的な機能なのではないだろうか。また、Live Generatorsというムービー生成機能もある。これは外部からのオーディオ入力に反応し、音に同期して自動的に映像を生み出してくれる機能で、プリセット・パターンは全部で26種類。ムービー生成機能はVJ専用のワークステーションなどにも搭載されているが、GrandVJのそれは“音の変化に応じた生成”という特徴がある。これと内蔵の40種類以上のエフェクトを駆使し、ライブ・カメラの映像をミックスしただけでも十分なクオリティの映像が出力できる。極端な話、素材を用意しなくてもVJができてしまうのだ。音に対するレスポンスは想像以上に良く、サウンド・オリエンテッドなものになっている印象を受けた。GrandVJのコンセプトはMIDIやオーディオを使って映像を制御すること。ゆえに、特にお薦めしたいのはミュージシャン/DJといった“音”のパフォーマーだ。触ってみるとミュージシャン・フレンドリーな構造になっているのがよく分かるし、音楽的なプレイ経験がそのまま生かせると感じられた。音楽以外の分野にも表現を広げたいという向きにGrandVJはピッタリなソフトなのである。
ARKAOS
GrandVJ
56,490円

SPECIFICATIONS

■対応ファイル・フォーマット/QuickTime、MPEG-1/2/4、AVI、WMV、SWF、VOB、JPEG、PICT、BMP、GIF、PNG
■出力解像度/設定自由
■対応外部入力/DVカメラ(FireWire)、Webカメラ(USB)、キャプチャーカード
■バンク数/16
■セル数/1バンク最大16×16

REQUIREMENTS

■Windows/Windows XP/Vista、INTEL Pentium 4 2GHz推奨、512MB以上のRAM、300MB以上のハード・ディスク空き容量
■Mac/Mac OS X 10.3.9以降、Power PC G4以上のプロセッサー、512MB以上のRAM、300MB以上のハード・ディスク空き容量