フランス国立の音響音楽研究所がプロデュースする本格派

ULTIMATESOUNDBANKIRCAM SOLO INSTRUMENTS
IRCAM(イルカム)はフランス国立の音響音楽研究所。現代音楽と密接に結びついた音響研究は、広く音楽シーンに大きな影響を与え続けている。CYCLING'74 Max/MSPなど、ここでの研究が元になった製品も多い。そんなIRCAMの名を冠したライブラリー・ソフトの登場、筆者も興味津々である。

本ライブラリーに収録されているのは、管楽器と弦楽器のソロ音色。打楽器を除く通常のオーケストラ楽器はすべて網羅。さらに、シャンソンでは欠かせないアコーディオン、フランス近代音楽で多用されるサックス、フランスが本場でもあるクラシック・ギターなどがあるのも魅力的だ。パッチ構成は非常に丁寧で、バイオリンやチェロなどは、弦ごとにすべてのポジションを収録。特定の弦のみ、あるいはキー・スイッチで弦を切り替えながら演奏することが可能だ。さらに、全楽器に関して多数の特殊奏法も収録。管楽器の息だけの音、キー・ノイズ、弦楽器のバルトーク・ピチカート(弦を弾いて指板にたたきつける)、コル・レーニョ(弓の背で弦をたたく)などが収録されるなど、サウンドとしても面白いので、いろいろな使い道があるだろう。そして肝心の音色の方も、実に素晴らしい。IRCAMの室内楽団"アンサンブル・アンテルコンテンポラン"のメンバーが中心になって演奏したサンプルだけに、音色は粒ぞろいのもの。響きの良い楽器を、うまいプレイヤーが弾いた存在感のある音だ。とかくやせて耳障りな音になりやすいソロ・バイオリンの音も十分に太く、ほかの楽器もフランスらしいふくよかなサウンド。しかも、アンビエンスを抑えたハイファイでデッドな録音なので、エフェクトによる加工も容易だろう。"研究室的"な生真面目さと、フランスらしい音楽性が高次元で両立した好ライブラリー・ソフト。強く推薦したい。

ULTIMATESOUNDBANK
IRCAM SOLO INSTRUMENTS
オープン・プライス(市場予想価格/59,800円前後)

■メディア:DVD-ROM 2枚
■容量:15GB
■DATA FORMAT:WAV/AIFF/Apple Loops/REX2/UVI