リアルタイムの操作性が向上したユーザー・フレンドリーなDAWソフト

STEINBERGSequel 2

早いものでSTEINBERG Sequelのデビューからはや1年。分かりやすく便利なDAWソフトということですっかり定着した感のある本ソフトが、待望のバージョン・アップ。使いやすさはそのままに、かゆいところに手が届くユーザー・フレンドリーなアップデートとなりました。

高音質で本格的な楽曲を
簡単な操作で構築可能


ではSequelの機能を振り返りながら、バージョン2で強化された機能を紹介していきたいと思います。まず、そもそもどんなソフトだったのか、ざっとおさらいしてみましょう。Sequelは、簡単な操作で楽曲制作が可能です。この“簡単操作”というのがこのソフトのミソ。なにせ1年前のレビューでは“マニュアルを読まずに1曲作る!”をテーマに始めたところ、洗練されたワン・ウィンドウ・デザインのおかげか、いきなりスイスイできてしまいました。ループを並べるだけのお手軽制作も可能ですが、簡単なだけでなく付属のソフト・シンセHalion Oneを活用したMIDIプログラミング、レコーディング、編集、ミックスなど本格的な楽曲制作からライブ・パフォーマンスまで必要な作業は一通り行えます。買ったその日からすぐ制作を開始できるようなインターフェースで、資料にある“コンピューターで音楽作りを始めてみたい!という方のための”という文言もうなずけます。また本ソフトは楽曲制作の経験のある方にも、曲のスケッチを作ったりライブで使ったりと強力なツールとなってくれるでしょう。後述するバーチャル・キーボードや兄貴分にあたるDAWソフトCubaseとの互換性など有効な機能を多数そろえていますので、ノート・コンピューターにインストールしておいて外出先で曲のアイディアを練ったりと、さまざまなニーズに応えてくれます。本ソフトに搭載されるオーディオ・エンジン、プラグイン・エフェクトはCubase譲りの本格派。スタジオ・クオリティのサウンドを手軽に体験できます。対応OSはVista/XP Professional(SP2)/XP Home Edition(SP2)、Mac OS X 10.4以上とハイブリッド仕様で、Windows/Mac両OSユーザー共に安心。ちなみに、今回のレビューはWindows XP Professional(SP3)で行いましたが、Vistaでは“共通レイテンシーASIOドライバー(Generic Low Latency ASIO Driver)”を使用可能。これは、例えばノート・コンピューターのデフォルトのオーディオ・ドライバーでも、ASIOと同等の低レイテンシーで動作させられるというナイスな機能です。

制作時の各局面で便利に使える
バーチャル・キーボード


続いてバージョン2の新機能を見ていきましょう。 今回のバージョン・アップで特筆すべき点はフィジカル・コントローラーのアサインが劇的に簡単になったこと。画面上部のボタンをクリックした後、アサインしたいパラメーターを選択しコントローラーの操作子を動かすだけ(画面①)。プラグイン・インストゥルメントなどで見られるMIDIラーン機能に近い感じです。 この機能を用いてSequel 2のエフェクト、あるいはインストゥルメントのパラメーター・ノブにMIDIコントローラーの操作子をアサインするだけで、自由度の高いライブ・セットが完成します。もちろん制作に活用しても、とても便利です。さらにバーチャル・キーボード機能(画面②)では、画面上部のアイコンを押すだけでコンピューター用のキーボードでインストゥルメントを弾けるようになりました。もちろん、このバーチャル・キーボードを使ってMIDIプログラミングも可能。まぁコンピューター用のキーボードですから、正確なフレーズを弾くのは厳しいと思っていましたが、VSTインストゥルメントのプレビュー画面(画面③)でもバーチャル・キーボードを使用できることに気付くと、とんでもなく使いやすい! いちいちMIDIキーボードまで手を伸ばさなくとも手元で音色のキャラクターを確認できるのが、こんなに便利とは! この機能は外出先でノート・コンピューターで入力を行いたいときにも、すごく重宝しそうです。

サンプルの“ノリ”を制御する
フリー・ワープ機能


楽器名や曲のジャンルでループ素材を見つけ出していく、Cubase 4から直系のメディア・ベイも着実に進化しています(画面④)。パッと見ただけでは気付きにくいかもしれませんが、選択中のジャンル/カテゴリーに含まれるサウンド数が表示されるようになったり、動作速度が劇的に早くなったりと、改善された個所が随所に見受けられます。Sequel 2のこうしたユーザー・インターフェースの改良は、枚挙にいとまがありません。サウンドに直接関係は無いものの、トラック・アイコン機能では各トラックにアイコンを表示させられるようになりました(画面⑤)。トラック名のテキストだけでなく、使用している楽器を表示したりユーザーが指定した画像を使用したりできます。視認性の向上もバッチリです。個人的に“これはありがたい”と思ったのが、フリー・ワープ(画面⑥)。Sequelでは選択したサンプルが自動的にプロジェクトのテンポに追従してくれます。が、サンプルによってはシャッフル感が合わなかったり、あるいは逆にズラしたりしたいというのはままあること。そんなときに便利なのがこの機能。サンプルの中の任意の点を選択し、それを移動したいタイム・ポジションにドラッグするだけ。これだけで例えば裏拍のハイハットだけを遅らせたり、あるいは突っ込ませたりと自由自在。この機能だけでも、制作の自由度が随分上がります。 こうした細かなサンプル・エディットの際に使えるリバース機能も搭載し、飛び道具的な音色もすぐに作れます。先述の通り、Sequel 2ではサンプルが曲のテンポに追従するのですが、曲作りの途中でもコンピューター、あるいはMIDIキーボードをタップすることで、簡単にテンポ設定ができるようになりました。制作の途中でBPMを変更するのはなかなか勇気のいる作業ですが、後述するプリセットのサンプルはおのおの最適なタイム・ストレッチ・アルゴリズムが設定されていますし、自分で足したサンプル・ループもアルゴリズムを選択することができるので、タイム・ストレッチ特有のつぶれたような音にはなりません。また、さまざまな設定を含むSequelプロジェクトは、そのままCubaseで読み込むことが可能。もちろんプラグイン・インストゥルメントやエフェクト、アレンジ・トラックの設定などもそのまま生かせるので、例えば外出先でのラフ・スケッチからスタジオでの本格的な制作への移行などはとても簡単に、というかまるで意識することなく行えます。ここまでシームレスな環境を構築できるのは、さすがSTEINBERGという感じでしょうか。ここまで駆け足で新機能を列挙してみましたが、もちろんiTunesへの直接書き出しや、キーを入力するだけの自動転調など、至れり尽くせりな機能もバージョン1からそのまま継承。簡単便利をとことん提供してくれます。機能的なバージョン・アップではありませんが、忘れてならないのがプリセット・ループなどインストール時に付属するサウンド集です。Sequel 2には何と5,000ものループ・ライブラリー、600以上のインストゥルメント・サウンドが付属しています(一部の素材はユーザー登録後に無償ダウンロード)。これだけでも十分な数と言えますが、“まだ足りない!”という方は、ロックからヒップホップ、エレクトロまで各ジャンルに対応したSteinberg Content Setというサンプル集もダウンロード購入できますので、要チェックです。正直言って、今回のバージョン・アップではCubase/Nuendoユーザーとしてもうらやましい限りの機能がたくさん含まれています。STEINBERGさん、次世代Cubase/Nuendoにもぜひ同じような機能を!(笑)

◀画面① Sequel 2におけるMIDIコントローラーのアサイン。上の画面の右にあるエディット・リモート・コントロール・アサインメント・ボタンを緑色に点灯させて、操作したいパラメーターをクリックすると、下の画面のように表示される。後は、MIDIコントローラーの好みの操作子を動かすだけだ



▶画面② バーチャル・キーボードはTabキーで表示を切り替えることも可能



▲画面③ ソフト音源の音色を選んでいる際もバーチャル・キーボードは使用可能。手元の操作でプリセットがどのようなサウンドか手軽に確認できるので、作業効率もアップする



▲画面④ 進化したメディア・ベイ。選択したカテゴリー内の項目が数字で表示されるなど視認性が向上しているほか、レスポンスも大幅に早くなっている



◀画面⑤ トラック・アイコン機能により操作時の視認性が向上。アイコンは任意の画像を当てはめることもできる



▶画面⑥ フリー・ワープはサンプルの任意のポイントを選択して(黄色の縦線)、移動したい先にドラッグするだけ。簡単な操作でグルーブを自由に操れる

STEINBERG
Sequel 2
オープン・プライス(市場予想価格/18,000円前後)

REQUIREMENT

■Windows/Windows Vista/XP Professional(SP2)/XP Home Edition(SP2)、INTEL Pentium/AMD Athlon 2GHz以上のCPU、1GB以上のRAM、6GB以上のハード・ディスク空容量、Direct X/ASIO対応のオーディオ・インターフェース(ASIOを強く推奨)、DVD-ROMドライブ、インターネット接続環境
■Mac/Mac OS X 10.4/10.5、Power PC G5 1.8GHz/ColeSolo 1.5GHz以上のCPU、1GB以上のRAM、6GB以上のハード・ディスク空容量、Core Audio対応のオーディオ・インターフェース、DVD-ROMドライブ、インターネット接続環境