2種類の新プラグインやトラック・コンプ機能が強力な"DP"の最新版

MARK OF THE UNICORNDigital Performer 6

2008年も残すところ1クールちょい。個人的には比較的おとなしめだった去年の音楽ソフト進化事情でしたが、今年はTOONTRACKからSuperior Drummer 2.0が出たり、SPECTRASONICSからはAtmosphereの後継機、待望のOmnisphere のリリースなどなど、即戦力系のアップグレードが目白押しの中、最近ハードの方では先に大幅なアップグレードを果たしたMARK OF THE UNICORNから、機能よりもまずその意匠変更の方に驚かされることになったDigital Performer 6(以下DP6)がいよいよリリースの運びと相成りました。その全部を書き出せるものではありませんが、新機能を中心にご紹介します。

一新されたユーザー・インターフェース
大画面での操作性向上に寄与


早速インストールしてみます。手順は従来と変わることなく、ものの30分もあれば終了。インストール中の画面のロゴは少し丸みを帯びたエンブレムのようなデザインに変わっています。早速DP6を起動してみると、ユーザー・インターフェースが一新されています。これにより、旧バージョンに慣れ親しんだヘビー・ユーザーにとっては、直感的に操作するのが少し難しくなった面もあります。例えば、各ウィンドウのミニ・メニューが従来は左側だったのが右側に配置されたことにより、ウィンドウの幅を大きく取っている場面では、マウスを飛ばすのが少々面倒くさく感じられることも。また、その一方で、エフェクト/インストゥルメント・ラック機能であるV-Rackは、従来はV-Rackエディット・ボタン(以下Vボタン)でミキサー画面と切り替えて表示できましたが、このVボタンは廃止され、その代わり、ミキサー画面右上のタブ内にあるウィンドウ・ターゲット・メニューに統合され、このプルダウン・メニューを介してチャンクに作成したほかのV-Rackへも簡単にアクセスできるようになりました。これらの意匠変更は、DP3からDP4にバージョン・アップしたときに感じた一抹の憂いと同様なのですが、使っている間に慣れてきますので、そのうち気にならなくなるでしょう。まあ、好みの面で前の方が......って方が、最初は多いかも知れません。とは言え、洗練されたデザインで、車を新車に乗り換えたようなちょっとした清々しさもあり悪くない気もします。それでは、そのほかに気付いたデザイン変更の特徴的な部分を列挙してみましょう。
●トランスポート関連をつかさどるコントロール・パネルが大刷新(画面①)。▲画面①
●トラック・リスト、シーケンス・ウィンドウなどで表示色の変更や垂直方向ズームが可能。
●各種ウィンドウを一つのウィンドウに統合して表示できるコンソリデイト・ウィンドウのサイド・バー部分はタブの追加が可能に。これで各ウィンドウをタブで開閉することが可能になりました。併せてインスペクター・パレットも追加。これはグリッド設定やイベント情報、選択範囲といった詳細情報を表示できる画面です。
●各ウィンドウに用意されていたトラック・セレクターが統合。異なるウィンドウを開いた際は自動でその内容が表示されるようになった(画面②)。▲画面② 左側のエリアがトラック・セレクター画面。これまでは各画面に用意されていたが、統合された......などなど。中でも、個人的には"これは今まで何故なかったのか?"と思えるくらい欲しかった機能が、トラック・リストの垂直方向ズーム。これに伴って文字の大きさも変化するので、24インチなどの大きなディスプレイでDPを使う場合など、視認性に優れとても重宝すると思います。同様に、シーケンス・エディターのトラックの高さ調整にもバリエーションが増え、command+ドラッグで段階的なズーム、command+option+ドラッグで高さや幅の段階的なズームが選べるようになったりと、小技の利いた操作感はさすがです。タブの追加機能とも相まり、がぜん大ディスプレイの購入意欲が増しました。

作業時間を短縮するトラック・コンプ機能
ファイル・フォーマットが拡張


続いて、新しく加わった機能を見ていきましょう。まず目を引くのが、トラック・コンプ機能。これにより、複数のテイクからチョイスしてOKトラックを作るまでの作業が、"今までの時間を返して!!"と叫んじゃうくらい、大幅に改良されました。例えばサイクル録音などで幾つかのテイクを録った後、プルダウン・メニューから"テイクを表示"を選ぶと、録音したテイクがずらっと並べて表示されます。またそれらテイクの一番上には自動的に"コンプ・テイク"と呼ばれるトラックが作成されます。ツール・パレットから"Comp Tool"を選択して、使いたいテイクを選択していくとチョイスした通りに波形が並んでいくという優れものです。このコンプ・テイクは一つの独立したテイクとなるので、これをまた素材にして......など、かなり柔軟にトラックを仕上げることができます(画面③)。▲画面③ トラック・コンプ機能を使用しているところ。録音したテイクの中から、使いたい部分のみ抽出できる。画面では、下の4つのテイクから気に入った部分を選択した(濃い緑が選択した個所)。それらは画面上部のトラックに統合される 次に、従来のDPではSDIIファイル・フォーマットが使われていましたが、これに加えてDIGIDESIGN Pro Tools|HDなどで標準的に使われているBroadcast WAVや、Mac標準であるAIFFなどにも対応。同時にインターリーブド・ファイルにも対応しました。これだけでも結構な作業時間と、ハード・ディスク容量のセーブになるでしょうね〜。新規プロジェクトはBroadcast WAVにしておけば、これからはPro Toolsへのデータ移植も、よりシームレスにできますね。このファイル・フォーマットの拡充により、従来からあったOMF/AAF読み込み機能も改良されて、ファイルをコンバートする必要が無くなりました。ほかにはフローティング・ポイント・オーディオ・ファイルを直接扱えるようになったことにより、32ビット浮動小数点演算されたオーディオ・ファイルを低ビットへ書き出さなくて済むわけです。高次倍音の多いアコースティック音源などでは差が出ることでしょう。

新たに2種の強力なエフェクト
ソフト・シンセのレンダリング機能が追加


さて、今回は、新たに2つのプラグイン・エフェクトが追加されました。1つはオプティカル・リミッター/コンプレッサーであるTELETRONIX LA-2AをモデリングしたMasterWorks Leveler(画面④)と、▲画面④ 新規追加のプラグイン・エフェクト、オプティカル・タイプのリミッター/コンプレッサーのMasterWorks Leveler。TELETRONIX LA-2Aをモデリングしたプラグインコンボリューション・リバーブのProVerb(画面⑤)です。いずれも即戦力の優れもので、特に前者は簡易マスタリングなどで威力を発揮するでしょう。単独でドラムのマスター・コンプに使うのもグッド! 後者も、いわゆるサンプリング・リバーブの割には"何故ここまで!?"と思えるほど軽く、質感もシルキーで滑らか。プリセットも多く申し分ないです。旧ユーザーにとっては、この2つのプラグインのためにアップグレードするという選択も大いに有りなのでは!?▲画面⑤ 新しく追加されたプラグイン・エフェクト、コンボリューション・リバーブのProVerb。サンプリング・リバーブにもかかわらず非常に軽いのも魅力だ さらに今回のDP6に追加された機能で目玉となるのは、ソフト・シンセのプリレンダリング機能。これはソフト・シンセの再生が始まる前にあらかじめ演算することで、CPU負荷を軽減するというもの。あまり大きく差が感じられないものもありますが、確かに、概して軽快に動作するようです。さらに、この機能は試せていないのですが、APPLE Final Cut Proとの連携がさらに進化しているようです。XMLファイルを使ってのやりとりですが、前回との比較確認が容易にできたり、映像編集と足並みをそろえるのに持ってこいです。駆け足で特徴をご紹介していきましたが、筆者が使用したバージョン(6.01)は基本的には終始安定動作していて、すぐにでも使い始めたいと思う次第。GUIも一度乗り換えを決心しさえすれば、結構早く慣れちゃいそうですし、大ディスプレイに乗り換えての快適動作はすぐそこ!って感じがして、ちょっとうれしくなりました。
MARK OF THE UNICORN
Digital Performer 6
オープン・プライス(市場予想価格/74,800円前後)

REQUREMENTS

▪対応プラグイン形式/MAS、Audio Units、RTAS、HTDM、TDM
▪対応オーディオ・インターフェース/MOTU PCI Audio全機種、MOTU FireWire/USB Audio全機種、Mac OS X CoreAudio対応オーディオ・インターフェース製品
▪対応MIDIインターフェース/MOTU USB MIDIインターフェース全機種、Mac OS X CoreMIDI対応MIDIインターフェース製品