8000シリーズ直系の出音を誇るデスクトップ用コンパクト・モニター

GENELEC6010A

スタジオご用達のメーカー、GENELECより新しくウルトラ・コンパクト・サイズの2ウェイ・アクティブ・スピーカーが出ました。同社の代表的な2ウェイ・スピーカーである8000シリーズの形をそのままダウンサイジングした製品です。私も同社の2ウェイ・シリーズで最も大型の8050Aをモニターに使用しておりますが、送られてきた現物の小ささにびっくりしました。ではレビューしていきましょう。

8000シリーズをそのまま小型化
入力感度の高さと指向性の強さが特徴


本体の外形寸法は121(W)×181(H)×114(D)mmと、8000シリーズと比べると本当に小さくかわいらしいスピーカーです。ノート・パソコンの傍らに置いても何の違和感も無い大きさですが、アルミ・ダイキャスト製エンクロージャーと特製インシュレーターのIso-Podによる未来的なデザインは8000シリーズと全く同じなので気分はスタジオ・モニターです。入力端子はRCAピンで(ステレオ・ミニ→RCAピン・ケーブルも同梱)、本体カラーは写真のブラックのほか、シルバー/ホワイトの3色がラインナップされています。本機の背面には8000シリーズと同じように音質調整用のBASS TILTスイッチ(100Hz以下を−2/−4/−6dB)とボリューム・アジャスター、そしてDESKTOP CONTROLスイッチ(200Hz近辺を−4dB)も付属。8000シリーズにある高域調整用のスイッチは省略されています。工場出荷時はすべての調整用ツマミがオフで、ボリュームはフルの状態です。この状態で8050Aから切り替えて聴いてみます。同じ信号レベルを入力してみると6010Aでは飽和してしまいました。−20dBの信号だったのですがオーバーレベルです。ボリューム・アジャスターをかなり絞ったところで音が落ち着きました。本機の場合、もともと出力レベルの小さいパソコンのアウトプット・レベルを基準にしているためか、入力感度を高めに設定しているようです。音はこのサイズのスピーカーではなかなか良好な鳴りですが、少し超高域が足りない感じで、音が中域から中高域に固まっている印象です。そこで、耳に対して少しスピーカーの位置が低い気がしたので、イスを下げてみると急に音のバランスが良くなってきました。ほんの数cmで音がガラリと変わったのです。これは良い感じです! 8050Aと切り替えても音の印象が変わらなくなりました(もちろんサイズによる違いはありますが)。ここで真剣に取扱説明書を読むと、ツィーターとウーファーの中間辺りがこのスピーカーの“音響軸”と呼ばれる位置で、この音響軸が耳の高さに来るようセッティングするのがポイントだそうです。つまり、本機はかなり指向性が強く(鋭く)、少しポイントがズレると音が大きく変わてしまいますが、正しいセッティングで聴いていると実に気持ちが良い音がします。正しいセッティングをすれば定位もこのクラスでは悪くありません。

ノート・パソコン環境を想定した
DESKTOP CONTROLスイッチ


今回の試聴環境は机の上で行っていますが、音響軸に耳を合わせた段階でも、少し低域から中低域が持ち上がって聴こえるのが気になりました。ピアノの音などが少し“コーッ”っと聴こえる、いわゆる胴鳴り的な音になります。そこで取扱説明書に書いてあるように、DESKTOP CONTROLスイッチをオンにすると見事に中低域のモタつきが解消。このスピーカーは机の上でノート・パソコンとともに使うことが多いと思いますので、スタンドに設置しない限りこのスイッチは常にオンの状態で良いと思います。前述したように、このスピーカーはかなり指向性が強いので、少し離れた場所でBGM的に音を聴いてミックスを判断するタイプの人には向かないかもしれません。しかし、しっかり音楽と向き合って細かいところまで詰めたいとき(人)にはかなり良いと思います。音響軸に入ったときの“音に集中できる感じ”はレコーディング・エンジニア向きとも言えるかもしれません。いろいろと試聴しながら書いてきましたが、このスピーカーの一番のポイントは、このサイズで、この音で、このデザインのスピーカーが、いつでもどこへでも持ち運べること。実は先日も2週間ほど海外にマスタリングと音楽活動で行っておりましたが、そんなときにこのスピーカーが本領を発揮するのだと思います。旅先のホテルでもノート・パソコンとこのスピーカーがあれば、自宅と同じように音楽制作ができるのです。APPLE iPodで音楽を持ち歩くことが普通になりましたが、このスピーカーの登場で、ついに音楽制作の現場をも世界中のどこへでも持ち歩ける時代になったのです。スバラシイ!
GENELEC
6010A
39,900円/1本

SPECIFICATIONS

■周波数特性/74Hz〜18kHz(±2.5dB)
■HFユニット/19mmメタル・ドーム
■LFユニット/76mmコーン
■アンプ出力/12W(HF)+12W(LF)
■クロスオーバー/3kHz
■外形寸法/121(W)×195(H)×114(D)mm(Iso-Pod装着時)
■重量/1.4kg