高域の抜けがいいデジタル出力搭載で解像度の高い8chマイクプリ

PRESONUSDigimax D8

昨今、コンピューター・ベースでのデジタル環境が日に日に向上していますね。最近では安価で良質なマイクプリが各社から数多く出ています。PRESONUSは1995年に初めての音響製品を発表したアメリカのメーカーで、ユニークなことに何と製品の半数以上をマイクプリが占めているそうです。今回レビューするのもマイクプリで、各種デジタル出力を搭載している点が特長のDigimaxシリーズの中でも価格を抑えた最新モデル。とうとうチャンネル単価1万円を切った今回のDigimax D8。その実力はいかに!

上位機種と同様の
XMAXプリアンプを搭載


まず本機の外観から見ていきます。同社のFireStudioシリーズやほかのDigimaxシリーズを継承した淡いグレーのフロント・パネルで、その1/3近くを、4ポイントのLEDメーター・セクションとブルーのゲインつまみが占有しています。このLEDメーター・セクションはDigimaxシリーズでは初めて採用されたもの。電源を入れて操作してみると、オン時に薄いグリーンに光るPADスイッチが印象的。このPADは−20dB仕様です。入出力端子ですが、まずフロントには楽器を直接入力可能なHi-Z対応インストゥルメント入力(TRSフォーン)を2ch備えています。リア・パネルは、8chのアナログ入力(XLR)を装備。これはマイク/ライン対応で、2chずつではありますが48Vファンタム電源を送ることもできます。当然、アナログ出力(TRSフォーン)も8ch用意されているほか、デジタル出力としてADAT出力(オプティカル)も搭載しています。そのほか、外部とのデジタル・シンクがとれるワード・クロック入力(BNC)も装備。デジタル出力は24ビットで44.1/48kHz対応です。フロント/リア・パネルともに、シンプルな設計で、マニュアルを見なくとも簡単に使えるデザインだと言えます。アンプ部も上位機種と同様のディスクリート設計のXMAXクラスAプリアンプを採用。本機の価格から考えると、大変期待の持てるスペックですね。

スピード感のあるデジタル出力
抜けのいい高域の倍音


では、実際にマイクをつないで音を聴いてみましょう。今回はSSL SL6000Gのヘッド・アンプを比較用に使用し、マイクはNEUMANN U87とSHURE SM57を使って、まずは声で試聴します。1本のマイクの出力を2つに分岐し、1つはSL6000Gのヘッド・アンプを通してコンソール・アウトへ、もう1つはDigimax D8に入力してデジタル/アナログの双方で出力。これら3chをDIGIDESIGN Pro Tools|HDに録音しました。マイク2本ですから、合計6トラックの録音です。マイクのセッティングもオン/オフの両方を試し、声の音量も大小取り混ぜてチェックしてみました。まずデジタル出力では、オンマイク時の比較的大きな声で、SSLよりも少し中高域が強調されたキャラクターになりました。逆にアナログ出力は、若干中低域に粘りのある太めの音という印象でした。これは、ADコンバーター部のキャラクターの差かもしれません。とは言え、SSLとの音質の差は想像よりも小さくキャラクター的にもよく似た音です(恐らく手本にしたのかな......)。声のチェック以外にアコギでの試聴時もデジタル/アナログ同様の印象で、特にデジタル出力時はスピード感があり、高域の倍音の抜け、解像度も高く、中低域もやせないサウンドで、SSLと比較してもサウンドにそれほどそん色が無くて驚いたほどです。マイクプリの感度は、SSLと同程度でしたが、ダイナミック・マイクなどの出力の小さな場合の感度は、若干Digimax D8の方が余裕がありました。ただし、アナログ出力は若干小さめでした。Pro Toolsの入出力のレベル設定にもよりますが、基本的に本機は出力の調整ができないので、ライン入力のヘッドルームの低い機器との接続や、アウトボードのEQやコンプとの接続を踏まえての出力設定だと思われます。全体的な印象としては、価格から想像できないほど好印象で、サウンド・キャラクターも優等生という感じです。ADコンバーター部のレイテンシーも、48kHzの場合はDIGIDESIGN 192 I/Oよりも26サンプル程早く、非常に優秀です。8ch入力のプリアンプで最近出ている製品の多くは、量子化ビット数は16〜24ビット、サンプリング・レートは44.1〜96kHzまでのフォーマット対応で、フィルターなどさらに多くの機能を盛り込んだ機種が多い中、24ビットで44.1/48kHz、Hi-Zの入力も2ch分にして、ローカット・フィルターなどもそぎ落とす......非常に割り切った現実的な設計で、このコスト・パフォーマンスを実現しているのでしょう。機能が絞られている分、設計がシンプルになり、それによりサウンド・キャラクターもより素直になっていることも多分に想像されます。また、同社のFireStudioシリーズのテクノロジーや、Digimaxシリーズのコンセプトを基本にできたことも、このパフォーマンスの高さを実現できたことと思います。多くの入力チャンネルが必要になるライブ録音時にも重宝しそうですね。また、ADAT出力を装備していることを生かしてデジタル・ミキサーやADAT入力を備えたオーディオ・インターフェースの拡張プリアンプとしての使用も良いと思います。あなたはADAT入力を無駄にしていませんか?

▲リア・パネル。左より電源スイッチ、ワード・クロック入力(BNC)、デジタル出力(オプティカル)、アナログ出力×8(TRSフォーン)、アナログ入力×8(XLR)、48Vファンタム電源スイッチ×4

PRESONUS
Digimax D8
オープン・プライス(市場予想価格/60,000円前後)

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/20Hz〜50kHz(±0.5dB)、20Hz〜150kHz(±3.0dB)
▪インピーダンス/1,600Ω
▪SN比/101dB
▪ゲイン/−4dB〜50dB
▪PAD/-20dB
▪外形寸法/482(W)×44(H)×178(D)mm
▪重量/2.7kg