サラウンド・モニター環境を構築するTDMプラグイン&コントローラー

TAC/NEYRINCKV-Mon Bundle

最近、ホーム・シアター・セットを買いたい人が増えてきたそうです。地上波デジタルでサラウンド放送が流れるようになり、ならば体感すべく環境を構築したいというのが自然な欲求。サラウンドが収録可能なDVDやBlu-rayといったメディアが出そろったことや、ハードの価格が下がってきたこともあるのではないでしょうか。消費者からのニーズがあるということは、制作現場でもサラウンドの作業は増えていくことになるのでは? そんな時代の流れからサラウンド機材が多数発売されていますが、今回レビューするのはプラグインで制御が可能なサラウンド対応モニター・コントロール・システムです。

Pro Toolsのミキサー内に
サラウンド・モニター・セクションを構築


DIGIDESIGN Pro Toolsの販売などでなじみ深いTAC SYSTEMが、NEYRINCKと共同で開発したのがこのV-Mon Bundle。Pro Tools|HD Accelのミキサー内にモニター・コントローラーを構築するTDMプラグイン・バンドルV-Mon(単体価格186,900円)と、USB/RS422接続の専用コントローラーVMC-101(単体価格228,900円)で構成されています。主な機能から見ていくと、近い将来のことを考え最大7.1chサラウンドまで対応。入力ソースが14系統、スピーカー出力4系統の切り替え可能、ダウン・ミックス出力&モニタリング機能、各スピーカーのレベル&ディレイ補正、トークバック&スレート(録音)機能が付いている8系統CUE出力、アウトボードやほかのプラグインをインサートできるモニター・インサーションなど多彩な機能が盛り込まれています。モニターを制御するプラグインは、モニターしたい音声信号を入力するV-Mon Input、入力した音声を実際にコントロール/選択するV-Mon Main、そして音声を192 I/OなどのオーディオI/Oに出力するV-Mon SPKの3つから成り立っています。まず、モニターしたいソースのトラックにV-Mon Inputをインサート。同様に、パワー・アンプ&モニター・スピーカーと接続したオーディオI/Oに対応するトラックにV-Mon SPKをインサートします。そして任意のトラックにV-Mon Mainをインサートすると、V-Mon間でInput→Main→SPKの順に信号が流れるのです。V-Mon Mainには入力選択があるので、外部機器(DVDやBlu-ray)などをPro ToolsのAUX入力に立ち上げ、そのトラックにもV-Mon Inputをインサートしておけば、ワンクリックで切り替えが可能に。サラウンド・ミックス時にリファレンスDVDなどを聴きながら作業することもできます。V-Mon Mainには入力選択で選ばれた音声信号をコントロールするメイン・トリム、DIM、各チャンネルのSOLO、MUTE、スピーカー選択、LISTEN MODE選択(モノ/ダウン・ミックス)、トークバックがあります。さらにセットアップ画面に入るとインプット・レベル、ダウン・ミックス時の各チャンネル・レベル、ピーク・ホールド設定、DIMレベルなど細かいところまで設定できます。特にダウン・ミックス時の各チャンネル・レベル設定はDolby用のプリセットなどがあるだけでなくお気に入りの設定を作ることもできるので、重宝するのではないでしょうか。サラウンド・ミックスを行うときに誰もが悩むモニター・ルーティングも、V-Monには設定テンプレートもあるので、そこから始めるといとも簡単にサラウンド・モニター環境が構築できてしまいます。そんな優れものという印象が強かったです。ところでV-MonはTDMプラグインですのでDSP消費量も気になるところですが、HD Accel DSPチップ1つでV-Monすべての処理が行えるように設計されています。Pro Tools内でサラウンド・ミックスする際にはプラグインで多量にDSPを消費することになるわけですが、V-Monでの消費はそんなに気にすることはないでしょう。

メーター・セクションも充実
192 I/Oとスピーカーを直結可能に


また、V-Monにはメーター・セクションとなるV-Mon Stem Meterもあり、モニタリングしている信号のほか、ダウン・ミックスや各トラックをある程度まとめたステム・トラックの信号を送り込めば一緒にメーター表示ができるようにもなります。例えば、メイン・メーターのレベルを著しくオーバーさせている素材は何か、なんて確認したいときには便利だと思いました。そして、V-MonはオーディオI/Oから直接アンプ&スピーカーにつなぐことができるのがメリットの一つと言えるかと思います。外部のモニター・コントローラーによる音への着色を避けて、純粋にI/Oから出力される音を聴くことができるようになります。さらに、専用コントローラーVMC-101によって画面上ではなくハードからプラグインをコントロールできるというのも画期的な切り口です!このVMC-101はMacとUSBで接続し、見た目も非常に分かりやすく、大きさもコンパクト。スタジオを移動する際でも持ち運びに便利でしょう。ドラえもん、ポケモンと、日本から発信された世界に通じるものはありますが、このモニター・システムもグローバル・スタンダードになるでしょうか? 皆さん触ってみたらいかがでしょうか。
TAC/NEYRINCK
V-Mon Bundle
365,400円

REQUIREMENTS

▪Mac/Mac OS X上で動作するPro Tools|HD Accelシステム。Pro Tools HD 7 Software以降

SPECIFICATIONS

▪サンプリング・レート/44.1/48kHz(96kHzにも対応予定)
▪VMC-101外形寸法/110(W)×53(H)×150(D)mm
▪VMC-101重量/668g