素材に入り込んださまざまなノイズを除去するオーディオ修復ソフト

IZOTOPERX
IZOTOPEと言えば、低価格かつハイクオリティな製品をコンスタントに発表しているイメージがあります。筆者も同社のマスタリング・ソフトOzone3に毎日お世話になっています! 今回紹介するRXはオーディオ修復ソフト。オーディオ修復ソフトというと、効果&録音マンにはもはやマスト・アイテムと言えると思いますが、このRXの実力はいかがなものでしょうか?

クオリティの高いハム・ノイズ除去
A/D時の音割れも修復可能


まず、本ソフトはスタンドアローンのほか、RTAS/Audio Units/VST/MAS/DirectXの各種プラグインとしても動作します。内容は“Hum Removal”“Declipper”“Declicker”“Denoiser”“Spectral Repair”の計5つのオーディオ修復ツールを搭載。早速使用してみましょう。まずはハム・ノイズを除去したいときに使用するHum Removal。50Hzと60Hzのハム・ノイズ除去に加えて、その他の周波数でのハム・ノイズ除去も可能です。テストとしてワイアレス・マイクで録音したノイズ入りのファイルを試してみました。すると、ものの見事にノイズだけを奇麗に除去することができました。処理後の音質変化もなく、非常にクオリティが高いです。またHum Removalは“極度に切れのいいEQ”としても使えるので、目的とは違いますが、音素材や2ミックスの音像のダブついている音域をピンポイントでカット!という使い方もできるでしょう。次はA/D時のオーバーロードによるひずんだ部分を取り除くDeclipperです。いわゆる“割れている音”を元に戻すのというのですが……。やや疑問のまま、まずはオーディオ・インターフェースからオーバーロードで入力したCD素材でテストします。結果、かなりイケます! オーバーロードの度合いにもよりますが、“あっ、しまった、赤イッちゃったよ!”というくらいなら確実に元に戻ります! さすがに元の素材と比べると“処理した感”は出ますが、もともと問題になっている音割れは予想していなかった&取り返しのつかない事故なので、十二分の出来だと言えると思います。さらにDVカメラ付属のマイク音声素材で試してみました(ドキュメンタリー作品用の素材)。これはオーバーロードによる音割れが無数にあるという代物だったのですが、試した結果、音割れはきっちり取れ、作品の音声として問題なく使える素材に変身しました(かつてはこの波形を超拡大して1つずつ修正してました……)。Declipperはシングル・バンドだけではなく、マルチバンド・タイプも用意されているので、追い込めば修復の精度はさらに上がると思います。

古いレコードやカセット・テープも復元
余分な音もピンポイントでカット


続いて、クリック、クラックル、ポップなどのノイズを除去するDeclickerを試してみます。身近な例で言うとレコード盤の傷ですね。古いプログレのレコード盤起こしのCD(パッとレコードをかけられる状態ではないので……)で試したところ、100%クリアとはいきませんでしたが、かなりの傷ノイズが取れて格段に聴きやすくなりました。そしてテープ・ヒス、環境/背景ノイズ、カメラのモーター・ノイズなどを除去するDenoiser。これはカセットからファイルに起こしてあったものでテストしたのですが、ほぼ完璧にノイズを除去することができました。そして、最後が“Spectral Repair”。これが一番の売りなのではないでしょうか。簡単に言うと映像作品の録音現場でせりふのバックにかぶってしまった自動車のクラクションだけを消したり(!)、破損した音声ファイルを修復(!)できるツールだというのです。“え〜、本当〜!?”と思いながらやってみたのですが、できるんですよ、コレが! ここで大活躍するのが音声ファイルのスペクトログラム(周波数スペクトルのグラフ)表示です。スペクトログラムで見える邪魔な素材、例えば先ほどのクラクションなどの部分をマウスで選択するだけです。視覚で判別できるので、これは非常に便利。破損ファイルの修復については、アコギのソロの一部(ロング・トーン)の途中を0.5sほど無音にした素材を処理してみたのですが、音色も音程もそのままに再生されたのには正直驚きました。いや、たいしたものです。Spectral Repairはリアルタイム・プラグインとしては作動しませんが、そのほかのツールはリアルタイム・プラグインとしても使用可能で、DAW上でオートメーションもかけられるので、ノイズが気になる音数の少ないイントロ部分だけDenoiserをかけるなどということも簡単に行うことができます。ポスプロ業界には既にほかのオーディオ修復ソフトが定着していると思いますが、“Spectral Repair”だけでも購入する価値は十分だと思います。また、効果仕込み用のサブコンピューターなどに入れておくのは、性能面でもコスト面でも有効です。ホビー・ユーザーにもレコードなどのデジタル化には絶大な威力を発揮すると思います。安価な録音ソフトにもノイズ除去機能が付いていますが、それらとはやはり段違い。また、プリセットが非常に良くできており、Spectral Repair以外はプリセットを切り替えてプレビュー、決定、バッチ処理で大量のファイルも一気に処理!という流れで作業をほぼ終えることができるので、決して敷居の高いソフトではないと思います。
IZOTOPE
RX
オープン・プライス(市場予想価格/32,800円前後)

REQUIRMENTS

▪Windows/Windows XP(X64含む)/Vista(X64含む)
▪Mac/Mac OS X 10.4以降(10.5対応)