正確な表現力で優れたコスト・パフォーマンスのパワード・モニター

M-AUDIOBX5A Deluxe

M-AUDIOの小型パワード・モニターBX5Aがバージョン・アップされ、BX5A Deluxeとして発売された。近年、大変な充実ぶりを見せているパワード・モニターたちの中で本機がどのような個性を発揮してくれるのか、興味津々である。

小さめの本体サイズでも
70Wバイ・アンプで十分な音量


本体のサイズは小さめで奥行きも200mmと短く、重量もペアで5kgと軽め。ホーム・レコーディングにはほどよい大きさだ。黒のカラーリングで、フロント・パネルの中央に配置されている電源LEDのみがブルーに点灯する。ルックスの特徴は、何といっても防弾チョッキにも用いられるケブラー素材を使ったウーファーで、綾織のような細かい凹凸のある表面が目立つ。ポリプロピレンや紙のコーンに比べて格段に高い再生能力を持つという。リア・パネルには2系統の入力(XLR、TRSフォーン)、ボリューム・コントロール、電源スイッチ、60Hz以下の再生に効果を発揮するバスレフ・ポートなどを備える。普段使用しているほぼ同サイズのモニターと切り替えながらいろいろな音源を試聴してみた。まず第一に、本機は音が大きい! カタログのデータではウーファーが40W、ツィーターが30Wのバイ・アンプとなっているが、体感的には普通のミックス・ルームでも爆音で鳴らせるくらいの音量が出る。上げすぎるとさすがに箱鳴りや音割れを起すが、ホーム・スタジオで使うのには十分すぎる音量だ。また、リア・パネルのボリュームは絞りきった音量0の状態から少しひねっただけですぐに音量が上がり、そのままどんどん音が大きくなるので、設置時にきっちりと左右の音量をそろえるのが重要。第二に、このサイズからは予想できないほど低音が充実している。周波数特性に56Hz〜22kHzとあるように、かなり低いところまできっちり再生してくれるので、サブウーファー要らずである。ヒップホップやクラブ系の音源でバスドラを複数使っているものや、サイン波の低音が足してあるものでも、はっきりと低音の区別がつく。とはいえ、全体にカラっとした元気な音で、低域がだぶつく印象はない。リズムの入ったポップス系の音源の方が得意で、オーケストラや室内楽のような奥行きのある音源ではやや物足りなさを感じるかもしれない。実際にサイン波で計測してみると、40Hzでもかなり音が出ているが、低域には目立ったピークはなく逆に5kHzあたりがやや飛び出している。高域はきれいに伸びていた。

化粧のないフラットな音質で
コンプによる前後関係の変化にも敏感


音楽制作ではどうだろうか? 打ち込みでリズムを作っていくのには向いていて、とても気持ちよい。人工的な低音で何をやってもかっこよくなってしまうのでは、と危ぐしたが、バスドラやシンセ・ベースでしんのない音はその通りにしょぼく再生される。音源や音ネタの組み合わせでちゃんとした音にすると、その通りに聴こえる。モニター・スピーカーとして正確なのである。ギターやシンセ、ボーカルなどの中域は化粧のないフラットな音質で、リバーブの量感や音質変化がよく分かるのには感心した。コンプレッサーによる前後関係の変化にも敏感である。ヘッドフォンと比較してみると、さすがに細部の音決めでは分解能が劣るが、これはもっと高価な20〜30万円台のモニターでも同じことである。バイオリンやアコースティック・ギターなどをマイクで録音してみると、本機の特徴がさらにはっきりする。中域から高域にかけての、楽器やボーカルのメロディの魅力になる帯域がフラットなために、音が正確かどうか、しっかりと魅力のあるサウンドにレコーディングされているかどうかがあからさまになってしまうのだ。マイクと楽器の組み合わせや演奏内容の良しあしが正確に反映される、という点で本機の能力は高い。ここで説得力のあるサウンドを作ることができれば、曲作りはうまくいっている。このほか、左右の定位や音量による音色の変化、音のスピード感などについてもそれぞれ確認してみたが、音量を出しすぎたり絞りすぎたりしなければ問題はない(リア・パネルのボリュームの設定が重要!)。スピーカーの後ろに十分なスペースを置き、障害となるものがないように左右対称に設置すれば、本機はその能力をフルに発揮してくれるはずだ。結論として、本機のコスト・パフォーマンスは高く、音楽制作用のモニター・スピーカーとして推薦できる。クラシック鑑賞で味わいを求める、という用途以外であれば、普通に音楽鑑賞用としてもオール・ジャンルで使える。正直に言って、この価格帯でちゃんと使えるパワード・モニターが次々に登場していることは驚きで、コンピューター、オーディオ・インターフェース、パワード・モニターの3つを組み合わせるだけでハイクオリティなホーム・スタジオができてしまう。ラジカセやコンポ・ステレオ、パソコン用スピーカーなどをモニターとして使っている人たちは、ぜひ買い替えを検討するといいだろう。
M-AUDIO
BX5A Deluxe
オープン・プライス(市場予想価格/29,800円前後/ペア)

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/56Hz〜22kHz
▪ツィーター/25mm
▪ウーファー/127mm
▪クロスオーバー周波数/3kHz
▪アンプ出力/40W(LF)、30W(HF)
▪外形寸法/176(W)×250(H)×200(D)mm
▪重量/5kg(ペア)