ドラムやピアノなど楽器の収音に便利な超小型コンデンサー・マイク

AUDIXM1255

普段レビューの依頼があると、事前にインターネットなどでその製品をチェックするのですが、今回のAUDIX Microシリーズ、M1255の写真を見た感じはAKG C451Bのような細めのマイクかと思っていました。しかし届いたものは僕の小指程度の大きさのコンデンサー・マイク。ナイロンのケースに入っていたのですが、それでも中を探してしまうほどの大きさです。少し大げさかもしれませんが、開けてびっくりしてしまいました。口径12mm、長さ50mm。“何だこれ?”というのが最初の正直な感想です。

低音が少なめながらナチュラルな音
ほかのマイクと混ぜて使うのも効果的


AUDIXのマイクは残念ながらこれまで使ったことがなく、詳しく知らなかったのですが、調べてみるとさまざまなタイプがラインナップされており、AUDIX Microシリーズだけでも何種類も出ています。今回レビューするのは単一指向性のM1255ですが、そのほかにも無指向のM1255O、超単一指向のM1255HC、ショットガン・タイプのM1255Sなどもあります(それぞれオープン・プライス、M1255O:市場予想価格/29,800円前後、M1255HC:市場予想価格/31,800円前後、M1255S:市場予想価格/33,800円前後)。また、それぞれのボディがホワイトのモデルもラインナップされています(それぞれオープン・プライス、M1255W:市場予想価格/31,800円前後、M1255WHC:市場予想価格/33,800円前後、M1255OW:市場予想価格/31,800円前後)。箱の中は、ナイロンのケースに入ったマイク本体のほか、専用ケーブル(一般的なXLRタイプよりも小さいです)、マイク・スタンド・アダプター、ハンギング・クリップというシンプルな内容。マイク自体もマットな黒で質感も良い感じ。ほかにアダプターなども必要ありません。実際使用するときは、コンデンサーなので、ファンタム電源をかけて動かします。とりあえず何に使ってみようかと迷っていたところ、Terraのエンジニア連中も面白がって集まってきたので、アコギを弾いてもらいその音を録って聴いてみることにしました。ここで比較としてAKG C451Bに登場してもらいましょう。両方のマイクをSSLのアナログ・コンソールに立ち上げました。音の印象は、高域の感じは良いのですが、低域は少なめといった印象。ダイアフラムも小さく、周波数特性を見てみると80Hz〜20kHzとなっております。低域はC451Bよりも少ない印象を受けました。とはいえ、実際の現場では低域を切ってしまうことも多いので使い方次第だと思います。低域が少ないからか、少し高域が上がっているようにも聴こえますが、それ以外は耳に痛い感じも無くナチュラルなすっきりした出音です。ギターとマイクの距離を変えてみたりもしましたが、ギターから近めにセットした方が良い印象を受けました。このようにオンマイクの音はしっかりしていますが、オフマイクのセッティングでは薄い感じの音で、奥行き感などは少々分かりづらいように感じました。そのような特性なので、アコギを2本重ねる際などに、高域を聴かせる役割のアコギのレコーディングに使うと良いかもしれません。

ドラムやピアノの収音に最適な
狭いところでも狙えるサイズ


そこで、早速C451Bで録ったアコギに重ねてみると、なんだかブズーキ(弦楽器)のようなニュアンスが生まれ面白いと思いました。両方の音の輪郭がはっきりととらえることができます。さらに、たまたまそばに立てていたリボン・マイクと混ぜてバランスを取ってみたところ、リボン・マイクの質感にパキッとしたラインの部分が足されて良い感じになったので、ほかの素材と混ぜて使うのも良いかもしれません。続いてピアノでも試してみましたが、印象はアコースティック・ギターのときとほぼ一緒。今回は1本でのみの試用になったので音色を試す程度でしたが、ハンマーの上を3〜4本くらいで狙ってみたら中抜けしなくて良いかもしれません。さらに本機を手で持ってピアノをいろいろな所から狙い、普段使っているマイクのサイズだったら絶対に立てられないような場所などにも立てて録り音を聴いてみたのですが、トイ・ピアノのような音が出たりして面白かったです。やはり本体のサイズが高さ50mmと小さいので、いろいろなところに立てやすく新鮮でした。一通り使ってみて、このサイズでこんなにしっかりした音が出るとは思ってなかったのでびっくりしました。コンプなどをかけてもキンキンする帯域が持ち上がる感じもしなかったので、使いやすいです。資料には“ドラムのオーバー・ヘッド、アンビなどにも良い”と書いてあったので機会があればぜひ試してみたいと思いました。やはりこのマイクは立てやすさが一番の利点です。僕はレコーディングでのスタジオ・ワークがメインになるので、あまり小ささを求めることは少ないので、これ一本で何かを録るというシチュエーションはあまり無いと思いますが、オプションでDCLamp(2,400円)というスネアなどに直接マイクを取り付けることができるアイテムが用意されているので、ドラム回りに立ててみたいです。そういったオプションが充実しているのもこのシリーズの魅力だと思います。初めに外観だけを見たときは、正直ライブ時におけるスペース・パフォーマンスを重視しただけのマイクかと思っていたのですが、しっかりした音を出してくれたのにはびっくりしました。コンサートなどで、ドラム・セットなどの見た目を気にしつつこのクオリティのサウンドを出せるなら素晴らしいと思います。ライブ・レコーディングなどでも使ってみたいと思わせてくれるコンデンサー・マイクです。20081001-01-002

AUDIX
M1255
オープン・プライス(市場予想価格/29,800円前後)

SPECIFICATIONS

▪指向性/単一
▪周波数特性/80Hz〜20kHz
▪感度/34.5mV/Pa
▪最大SPL/137.5dB
▪外形寸法/12(ø)×50(H)mm
▪重量/17g