上位機と同様のツィーターを備えたデスクトップ・パワード・モニター

ADAMA5 Pro

私事ではありますが、7月の頭まであるアーティストのツアーで全国を回っておりました。リハーサルも含め約4カ月、音楽をなりわいとしてる者として大変意義のある旅でした。今年の半分近くは家を空けていたわけで、とは言いつつも同時に通常の制作などもあったりして。帰ってからでは間に合わない仕事などもあり、旅の途中で小型モニター・スピーカーを買ったりもしました。ツアー終了と同時にこのレビューのお話をいただき、何かと運命を感じたりも。ADAMというメーカー、最近なかなか評判がよろしいようですね。というのも、独自のARTツィーターという伝家の宝刀的なモノがあるんだそうです。

蛇腹のような構造のツィーターと
新素材ウーファーの組み合わせ


ARTツィーターはいわゆるリボン・ツィーターの応用で、広帯域かつ位相性に優れ、繊細に高域の表現が可能というところがウリであるとか。その帯域は35kHzと、可聴帯域をはるかに超えています。とにかくまずその値にビックリです。単なるリボンではなく、構造がびょうぶもしくは蛇腹のような構造を採っているということ。大きな面積の振動板で空気を送り出すことで、一般的なツィーターの約4倍のスピードで空気を送り出す仕組みなのだそうです。確かに最初に目に入るのがこのツィーターです。ウーファーも素材は“カーボンとロハセル”。“ロハセル”は初めて聞く名前ですが、新幹線や人工衛星のボディにも使われている発泡体だとか。でありつつオゾン層を壊さず、地球にも優しいという、何ともハイテクな素材だそうですよ。本体のサイズも予想以上にコンパクトだったので、どんな音が出るのかと期待度は上がる一方でした。ちなみに今回試聴したA5 Proはつや消しのブラックでありましたが、ピアノ光沢仕上げのA5 Piano Black、A5 Piano White(いずれもオープン・プライス。市場予想価格/52,800円前後/1本)もあるそうです。

パンチがありつつ上品な出音
リミッターの有無も再現する実力


まず初めにCDで、いつもリファレンスで聴いているモノを何曲か試してみました。いきなり好印象です。本体のサイズをはるかに超えるほどの音量に驚きました。やはりこのARTツィーターの成せる技なのでしょうか。ウーファーも55Hzからとなかなかの低域が出ますし、パンチのある、それでいて上品な感じに聴こえます。ハイハットの鳴り具合がいつもスタジオ・モニターで聴いている感じというか、高域の余裕がこのような印象を生み出すのかなぁと思いました。ローミッドの出方にも嫌みな感じが無いかな、と。さらに左右の音の広がり方にも無理をして出している感が無く、本当に自然にLからRまでを再現できていると感じました。またオーディオI/Oから直にハード・ディスク上のAIFFファイルを鳴らしてみたり、APPLE iPodを使用してみたりと、さまざまなジャンルのサウンドを、さまざまなアウトプットからダイレクトにつないでみたりもしましたが、いずれの場合も悪目立ちするような、“おや?”という気になる聴こえ方はほとんどありませんでした。ただ、やはりオールマイティと言えるかというとそうではない部分も少しあります。いわゆるドンシャリを基本としたクラブ・ミュージック的な音源に関してはまず問題が無かったのですが、ほんの一部ではありますがロックなどのギターのエッジがキモとなるようなモノでは多少物足りなさを感じた曲も。高域をはじめ、低域もスピード感が良過ぎるためかエレキギターのグッとくるリフのミッド〜ハイミッドの辺りがもう少し欲しいなと思ったりもしました。この辺りは自分で選んだ曲との相性や、エイジングもあると思いますので、もう少し慣らしてから聴いてみたかったです。しかし、トータル・コンプやリミッターがしっかりとかかっているモノとそうでないモノの差をキチンと表現できるということはとてもしっかりと作られているのだなぁと感じました。本体背面に調整のツマミなどもありますので、足りない部分はそこで十分に補えるとは思います。また、A5シリーズはボリュームのステレオ・リンク機構を搭載。アンバランス入力でのみの対応ですが、左右のスピーカーを中継するケーブルを使用することにより、片方のツマミでL/R両方の音量調整ができます。モニター・コントローラーやミキサーなどの無い環境で使用する場合にはとても有効な機能ではないかと。さらにはオプションで傾斜を付けて机に乗せられる専用スタンド(9,800円/ペア)がありますので、自身のモニター環境を素早く構築する際に何かと役に立つのではないかと思われます。
ADAM
A5 Pro
オープン・プライス(市場予想価格/49,800円前後/1本)

SPECIFICATIONS

▪ツィーター/710mm2 ARTツィーター
▪ウーファー/147mm(5.5インチ)ロハセル・カーボン
▪アンプ/25W+25W
▪周波数特性/55Hz〜35kHz
▪クロスオーバー周波数/2.2kHz
▪全高調波歪率(80Hz以上)/1.5%以下
▪最大SPL (100Hz〜3kHz@1m)/101dB SPL以上
▪外形寸法/171(W)×285(H)×200(D)mm
▪重量/5kg