
オーソドックスでシンプルな外観
同社ならではの効きの良いEQ
まずは、フロント・パネルの概要から見ていきます。左からモノラル・チャンネル×12、ステレオ・チャンネル×2と並び、パネルの右端がマスター・セクションとなっています。各チャンネルを見ていくと、上からマイク・ゲインつまみやハイパス・フィルター・スイッチ、位相反転スイッチなどを配置。その下にはEQセクション、一部プリ/ポストの切り替えも可能な6系統を備えるAUXセクション、フェーダー部と続きます。では、チャンネルの仕様を細かく見ていきましょう。マイク入力部のゲイン幅は−5〜60dBまでの65dB。またマイク入力の最大入力は、ゲインを絞りきったとき−15dBまで耐えられます。ライン入力なら30dBまでOK。もしひずんでしまった場合でも、急に悲鳴を上げるようなひずみ方はしません。このつまみは、12時の位置からフルまで動かすと、30dB変化するのですが、その上がり具合も滑らか。ファンタム・スイッチがチャンネルごとに付いているのも重要なポイントですね。またハイパス・フィルターは、100Hz以下を18dB/octでカットする設計。かなり急なカーブになっていると言えます。個人的には75Hzぐらいからカットする仕様が好みなのですが、昨今の強力なサブウーファーの影響を配慮すると、どうしてもこうなるのかもしれません。最近"ボーカルには必ず使っている"という人を多く見かけます。続くEQセクションは、周波数可変型でハイミッドとローミッドからなるEQ部と、周波数固定のHF(13kHz)とLF(80kHz)で構成されています。モノラル・チャンネルのハイミッドは590Hz〜13kHzで、ステレオ・チャンネルは2.5kHzと固定。またローミッドはモノラル・チャンネルが80Hz〜1.9kHzで、ステレオ・チャンネルは450Hzで固定です。オーソドックスな仕様になっていますが、同社のコンソールがデビューした32年前から変わらない、SOUNDCRAFTならではの定評ある効き方がすると感じました。当時、"今までの卓のEQの、2回転させたぐらい効く"などと言われたものでした。大げさな言い回しですが、"触れば効く、触らなくても良い音が出せる"ということを学んだのも、同社のコンソールからです。そういう意味で、私自身同社の音にあまりに慣れているので、正しく評価できていないかもしれません。AUXセクションは、AUX3〜4がプリ/ポスト切り替えが可能で、AUX1〜2はプリ、AUX5〜6はポストになっています。送り用のノブには、一般的なAカーブのボリュームが採用され、非常に使いやすいです。AUXにもきちんとマスター部が用意されていて、AUX1〜4は出力端子がXLRコネクター、AUX5〜6はTRSフォーン。すなわち、モニター用4プリとエフェクター用2ポストが標準と考えられているようです。プロ用コンソールとしてとても素直な設計をしていると感じられました。そしてフェーダー部。カーブはPA用として多く見かける+10〜−30dBタイプになっていて、扱いやすいです。ただし、フェーダーの下にはドラフティング・テープを張るスペースがありません。またGB2R 12/2の場合、各チャンネルにサブグループへの送りスイッチが装備されています(GB2R 16モデルでは、L/RへのMIXスイッチのみの仕様です)。ソロ・スイッチとミュート・スイッチは離れたところに配置され、誤って押すことが無い安全設計になっています。オペレート中、"ソロを押すつもりが、ミュートを押してしまった"といった経験は私にもあります。また、ステレオ・チャンネルはGB2R 12/2のみに装備されていて、GB2R 16にはありません。ユニークなのは、1つのステレオ入力で、マイク入力(XLR)をステレオで受けてフェーダーにアサインしつつ、ライン入力で受けたステレオ信号を、マスターのL/Rへ送るなんていう使い方も可能な点です。ライン入力には独立したレベル・コントロールつまみも用意されています。つまり、この2つのステレオ・チャンネルで、最大マイク4本、ラインを2ステレオ扱えることになるのです。例えばホールなどで、サブグループも併用してPAのライン入力+エア・マイクを同時に録音したりと、さまざまな使い方の工夫ができそうです。もちろん、ライン入力をフェーダーで受けることもできます(この場合、マイク入力は使えなくなってしまいます)。また、AUXへの送りはモノラルになりますが、モノラル・チャンネルのAUXセクションと同様に6系統あるので、例えば"ステレオ・チャンネルだけAUXの送りが4系統しかない"という中途半端な制約が無いところがとても好印象です。インプットとしてはほかに、ステレオ・リターン×2(TRSフォーン、AUXへの送りも各1系統装備)、さらに2トラック・インプット×1(RCAピン)が1つで合計3系統のステレオ・ライン入力を搭載していますので、SEなどを使用する小劇場などでは役に立つのではないでしょうか。
設置位置を背面/裏面と選択可能な
コネクター・パネル
続いてはコネクター・パネル。本機のコネクター・パネルは、本体背面/裏面のどちらにも取り付け可能。持ち運びが多い場合は背面に(写真①)、


上位機種とそん色の無い
これまで同様すっきりとした高域
それでは、本機を早速試してみたいと思います。吉祥寺の劇場で、とあるカントリー・ミュージシャンのライブPAをする機会があり、そこで出音のチェックをしたところ、まさに"SOUNDCRAFTらしい音"だと感じました。というのも、高域のすっきりした感じに同社の魅力が出ているのです。特にクセがあるわけではなく、誠実かつ素直な音。この誠実さこそがプロ機器として長きにわたって愛され続けた理由であり、本機が小さいながらも、完全にプロ用機器の標準に達していることの証拠。普段から同社の上位機種を使い慣れていますが、本機は上位機種とそん色のないすっきりさを再現していると感じました。一点だけ欲を言えば、ヘッドフォン用のアウトが、ヨーロッパ仕様の20〜600Ω用になっているのですが、これでは日本で多い8Ωのヘッドフォンを使うと音量が小さくて聴こえません。私自身は70Ωのヘッドフォンを用意し使っていますが、多くのユーザーは、同社のヘッドフォン・アウトは出力が足りないと誤解しているところがあります。SOUNDCRAFTは30年以上も前からプロ用コンソールの標準になり得るサウンドを提示していた会社だと思っています。本製品は、デジタル・コンソールや、最近多い同価格帯でコンピューターとリンクできるようなコンソールに比べると地味に感じられるところもあるかもしれませんが、誠実さと変わらないサウンドは大きな魅力。今後も、"作品"と言っても過言ではないような製品を作っていただきたいものです。

▲コネクター・パネル。上段左よりステレオ・リターン・インプット L/R2〜1(TRSフォーン)、2トラック・インプット L/R(RCAピン)、レコーディング用出力 L/R(RCAピン)、その右はステレオ入力×2で、各チャンネルにライン入力 L/R(TRSフォーン)、マイク入力 L/R(XLR)を装備。続くモノラル入力×12は、チャンネルごとにインサート(TRSフォーン)、ライン入力(TRSフォーン)、マイク入力(XLR)、プリ・スイッチ、ダイレクト・アウト(TRSフォーン)が実装されている。下段左のMONITOR O/Pセクションは、モニター出力 L/R(TRSフォーン)、モノラル出力(XLR)で構成。MIX OUTPUTセクションはインサート・ポイント L/R(TRSフォーン)、メイン出力(XLR)、SUB OUTPUTはインサート・ポイント L/R(XLR)、メイン出力(XLR)。AUX OUTPUTセクションはAUX1〜4(XLR)、AUX5〜6(TRSフォーン)で構成されている
SPECIFICATIONS
▪周波数特性/20Hz〜20kHz
▪クロストーク/チャンネル・ミュート:−97dB以下、フェーダー絞りきり:−95dB以下
▪最大信号レベル/マイク入力:+15dBu、ライン入力:+30dBu、ステレオ入力:+15dB(マイク入力)、+30dB(ライン入力)
▪インピーダンス/マイク入力:2kΩ、ライン入力:10kΩ
▪電源/AC100V 50/60Hz
▪消費電力/150W未満
▪外形寸法/卓上使用時:441(W)×209(H)×535(D)mm、ラック・マウント使用時:483(W)×139×444(D)mm
▪重量/12.5kg