高音質アンプ・モデリングとリズム・マシン搭載のマルチエフェクター

ROGER LINN DESIGNAdrenalinn III

ロジャー・リンが作ったマルチエフェクターがあるらしい。しかもリズム・マシン付きで! その名はAdrenalinn。かつてその事実を知ってAdrenalinnを手にしてから数年、気が付けばもう第三世代だそうです。基本的には自分が使っている第一世代と変らないのだが、それぞれのパートがより進化したようです。早速チェックしていきましょう。

クリーン系のモデリングも充実
40種類のアンプ・モデリング


まず一番驚いたのは40種類用意されているアンプ・モデリング部分の音質向上です。どうしても音質面で若干の頼りなさが否めなかった第一世代と違い、本機一台でステージに十分耐えうるほど。具体的に言えば、元来この手のマルチエフェクターの多くはひずみ系には強いものの、クリーンなトーン〜クランチにはライン直出しとほぼ変らないか、最悪の場合それ以下になりがちなのですが、本機はFENDER Bassmanのク リーンや、Deluxe Reverbのクランチ、MARSHALL Plexiでのクリーンなどクリーン系のモデリングも充実かつ良質。良いですよ、とっても!ステレオ・リバーブ、コンプ類も加わり外部エフェクターはほとんど要らなくなっちゃいましたね。ひずみにしてもありがちな、“ただひずんでます”的なものではなくタッチの感度が良く、“ちょっと強めに弾いたときだけジャッていってほしいんだよな”というようなマニアックなプレイヤーにこそ弾いていただきたいです。ということは楽器の個性が出ている訳で、何で弾いても同じ音がしてしまうマルチエフェクターとは違います。そうそう、本機はベースもいけるんですよ! ベース・アンプのモデリングもあるし、うーむ、リンさん親切なお方です(笑)。モジュレーション、フィルター系の音に関してはもう他の追随を許さないですね。ビートにシンク可能なこの機能がAdrenalinnの最大の持ち味でしょう。これは第一世代から一貫しています。まだ未体験の方はこの機能にさぞや驚くことでしょう。単音だけではなくコードの入力も可能なギター・シンセ(というかシンセ)になり得る、かなりシンセライクな機能も搭載しているのです。特に筆者のお気に入りはステップ・シーケンスで、ビートと完全にシンクできるのが素晴らしいです。これは後述する内部リズム音源でも、外部音源とのMIDIでリンクすることも可能。トレモロやオート・ワウ、ステレオ・パンもビートにシンクするのでアフター・ビートだけ左にとか、1小節かけてゆっくりワウがかかるとか、使い方は無限です。結構飛び道具も充実してまして……これ以上書くと自分のネタバレしそうだ(笑)。しかもアンプ・モデリング部分の音質向上によってよりクリアに聴こえるようになったので第二世代まで手にしていたユーザーも試してみる価値は十分にあると思います。

200用意されたプリセットは
ユーザーがエディット可能


旧ユーザーにもアピールするといえばファクトリー・プリセットの追加で何と200(!)ですってよ。本機を自宅で試奏していた筆者はファクトリー・プリセットがなかなか終わらないことに驚いて、“あれ? ユーザー・プリセットないじゃん”とまた驚きました。結構ありがちなのが200あるプリセットとはいうものの実際はその内の100がユーザー・プリセットというもの。しかし本機は、エディット可能なファクトリー・プリセット、すなわちユーザー・プリセットが200あるのです。しかも一度上書きされたファクトリー・プリセットは簡単操作でそのプリセットのみ復帰可能。うーむ、リンさん親切なお方です(笑)。これは目からウロコものです。ファクトリー・プリセットの時点でかなりよく作り込まれているので、“あと一塩振る”とか“一味減らす”とかその程度の操作で十分です。リズム・マシンは言わずもがな、本家ですからね(笑)。あの音ですよ! 太い太い! これまた200のプリセット。コンピューターを持ち込まずに一人でバンド演奏なんてことも、もちろんリズム・トレーニングにも最適。実はリズム・マシンとしても相当充実してます。この辺はリンさんのこだわりでしょう。また、本機右下のスイッチがエフェクト・スイッチに変更されたのもうれしい新機能です。このスイッチはユーザーが任意に選んだエフェクトのみをオン/オフできるので、“サビのみ付点8分のトレモロを”なんて使い方も可能ですな。いやはや全くリンさん親切なお方です(笑)。このように至れり尽くせりの本機ですが、あえて苦言を述べるなら、プリセットを幾つか記憶して呼び出せるフット・スイッチ内蔵の上位機種を作ってほしいです。もっともMIDIコントローラーにつなげば事足りるので問題無しかな(笑)。20080601-01-002

▲リア・パネル。左から電源、MIDI入出力、ヘッドフォン出力、ライン出力L/R(フォーン)、ギター入力(フォーン)

ROGER LINN DESIGN
Adrenalinn III
オープン・プライス(市場予想価格/60,000円前後)

SPECIFICATIONS

▪ユーザー・プリセット数/200
▪リズム・プリセット数/200
▪外形寸法/188(W)×65(D)×120(H)mm
▪重量/650g