伝統のウェーブテーブル波形68個で特異な音作りが可能なシンセ

WALDORFBlofeld

昨年のNAMM Showで久々の復活を遂げたWALDORFから待望の新シンセ、Blofeldが登場です。個人的にも注目していた製品だったので、編集部からレビュー依頼が来たときはうれしさのあまり小躍りしてしまいました……。

驚くほどの小型ボディ
操作性に寄与する大型ディスプレイ


箱から取り出した本機を見てビックリ。小さい! よくあるバーチャル・アナログ・シンセのテーブルトップ・モデルのような大きさかと思っていたのですが、一般的なものより2回りは小さいのでは? そこで実際に計ってみると約12cm×30cmという大きさ。DVDケースとCDケースを一つずつ横に並べたくらいと言えば分かりやすいでしょうか。また、写真では伝わりづらいかもしれませんが、ボディはメタル製でノブはステンレス製。持ち運びに困るほどではありませんが、ずっしりとした重量感と質感は、格好いいガジェット好きにはたまらない魅力を持っています。また目を引く大きな液晶の視認性もバッチリ。今現在どのパラメーターを触っているのか、エンベロープ・カーブがどのように描かれているのかがグラフィカルに表示され一瞬で把握できます。背面はMIDI IN、USB端子、ステレオ・アウトプット、ヘッドフォンとシンプルな構成。USBは標準ドライバーを使用したMIDI入力端子として使えますので、面倒なドライバーのセットアップなどの必要もなく、接続すればすぐに使用可能です。本機はこの小さなボディに同社のお家芸、ウェーブテーブルや高品位なフィルター、モジュレーション・マトリクス、16マルチティンバーなどさまざまな要素を盛り込んだシンセ・ファン垂ぜんの、そして待望の一台になっています。

魅力はやはりウェーブテーブル波形
多彩なモジュレーションで威力を発揮


さて、サウンドを確かめようとパッチを選んでいると膨大な量が搭載されていることが分かります。資料によればその数は1,000以上! さすがにすべての音色は追いきれません……が、今時のシンセらしくカテゴリー・サーチ機能があるので、簡単に目的の音を選べます。音源部には通常のオシレーター波形ももちろん搭載されていますが、やはり魅力的なのは68個にわたるウェーブテーブル波形でしょう。複雑に変化するウェーブテーブルの音は同社シンセでしか味わえない独特なものです。キラキラ光るパッドやうねるSE音などは久々に“WALDORFの音を聴いた!”と思えること請け合いです。このウェーブテーブルは同社の名機、Microwave II/XT/XTKすべてのウェーブテーブルを搭載、という豪華仕様です。加えて通常のオシレーター波形が使用されたサウンドも素晴らしい出来です。そして、特筆すべきは同社の他製品の例にもれず高品質なフィルター。ノブを回しているだけで気持ちの良いサウンドを体感できます。フィルター・タイプもローパス/ハイパス/バンドパス/ノッチに加え、2つのコムフィルター、さらにPPGローパス(PPG Waveのモデリング・フィルターです!)も装備。もう困っちゃうぐらい格好いい音作りが可能です。また、これらのフィルターは1ボイスごとに2つ設定することができます。それらを直列するか並列するか、どのようにオシレーターを割り当てるかなど柔軟に設定可能。フィルターの設定だけでも複雑なサウンドを得られます。さて、忘れてはならないのがモジュレーションの多様性です。この小ささでありながら強力なモジュレーション・マトリクスを持ち、オシレーター同士でのFMなど多彩なモジュレーションを実現可能です。ここでもやはり面白いのはウェーブテーブルを使った音作りでしょう。ベロシティからウェーブテーブルを変調させたり、あるいはウェーブテーブルをソースとしてFMさせたり、はたまたLFOでウェーブテーブル内のポジションを変化させていったり……やはりこのセクションが複雑な音作りの肝になるのではないでしょうか。ユーティリティ機能的な面としては、USB経由はもちろんMIDI経由でのOSアップデートも可能。新製品ということもあり今後の発展にも大いに期待できます。アップデータは独WALDORFのオフィシャル・サイトにあるArchiveコーナーからダウンロードできます。既にバージョン・アップがなされているのでご購入後はご自分のバージョンを確認してみてください。小さなボディにこれだけの機能を詰め込んでいることもあり、使い始めは操作が多少煩雑に思えることもあるでしょう。特に細かいエディットは液晶周辺の3つのノブだけを駆使しなくてはならない場合があり、取っつきにくさは否めません。が、そんなさまつなことで敬遠してしまうのがもったいないと思えるぐらいのクオリティを持っています。ほかのシンセとは完全に違う個性をもった本機。この一台があるだけで制作の幅は格段に広がるのではないでしょうか。ぜひその実力を確かめてみてください。なお、今回お借りしたデモ機を石野卓球氏とのスタジオ・ワークでも使用させていただきました。氏も大変気に入ったようで、筆者ともども早速購入を検討中です。さらに余談ながら、スウェーデン産赤いシンセの右肩にコイツを乗っけるとサイズもぴったりな上、紅白で大変縁起がよろしうございます。制作のゲン担ぎにもぜひ。20080601-03-002

▲リア・パネルの接続端子。左からヘッドフォン、アウトプットR/L、USB、MIDI IN

WALDORF
Blofeld
99,000円

SPECIFICATIONS

▪最大同時発音数/25
▪パート数/16マルチティンバー
▪オシレーター/1ボイスあたり3基
▪フィルター/1ボイスあたり2基
▪LFO/3基
▪エンベロープ/4基
▪外形寸法/304(W)×54(H)×132(D)mm
▪重量/1.3kg