アルペジオ機能など制作欲を刺激するUSB/MIDIコントローラー

YAMAHAKX61

日本を代表するブランドであるYAMAHAが強力なUSB/MIDIコントローラー、KXシリーズを発表した。20年以上前から続く名シリーズのモデル名を使用することからも、同社の並々ならぬ意気込みが伝わってくるだろう。

ソフト・シンセに最適な
ベロシティ・カーブを設定可能


今回発表となったのは、KX25(25鍵/オープン・プライス29,800円前後)、KX49(49鍵/オープン・プライス34,800円前後)、KX61(61鍵)の3機種で、使用環境に合わせて鍵盤数を選べるラインナップとなっている(機能は3機種同じ)。また、ホストDAWとしてSTEINBERG Cubase AI4が同梱されており、ソフト/ハード間での非常に高い親和性を実現。今回はその中からKX61をAPPLE Power Mac G5(2×3GHz Dual Core、16GB RAM、OS10.5.2)に接続し、Cubase AI4とMARK OF THE UNICORN Digital Performer 5.13上で、USB接続で使用した。ルックスは同社のシンセ、MM6系統だが、やはりコントローラーなので4.3kgとかなり軽量。ちょっとした作業スペースのレイアウト変更においても小回りが利いてうれしい。鍵盤上のコントロール・パネルは、各種ボタン類のほかに、4つのCONTROLノブとLCDディスプレイを装備。全体的にスッキリまとまりつつも、トランスポート、モジュレーション・ホイールなど、使用頻度の高い重要な機能は使いやすいように"1機能1ボタン"と配置されており音楽的なアイディアを妨げることのないレイアウトだ。そして気になる鍵盤だが、打鍵はやはりさすがと言うべき感触で、離鍵時の戻りも非常に心地よい。ベロシティ・カーブは、"VELOCITY CURVE"ボタンで瞬時に切り替えられる5種類の基本設定のほか、30種のVSTi用に最適化されたベロシティ設定も用意されている。これは後述する"コントロール・テンプレート"に含まれていて、同じベロシティでもソフトごとによって異なるレスポンスを考慮しベロシティ・カーブをチューニングしたもの。これらにより、すべて自分の感覚やタッチのクセにベロシティ・カーブをアジャストできる。実際の演奏においても持続音系と減衰音系ではタッチが大きく異なるので、まさに"自分だけのマスター・キーボード"としてカスタマイズしていく上でもこの機能は非常にありがたい。

4つのノブでVSTiの操作も簡単
最大540のアルペジオ・フレーズを内蔵


さて、実際にDAWを立ち上げてみると、本機左上部の4つのCONTROLノブ(切替ボタンによる4×2バンク=8設定。うち4設定分はユーザーが自由にアサイン可能)の使い勝手の良さに驚く。前述の30種類のVSTi用に用意されたコントロール・テンプレートをボタンで切り替えるだけで、現在使用しているさまざまなVSTiそれぞれに最適化された機能がCONTROLノブに割り当てられるのだ。しかもCubaseシリーズ使用時には、ソフト上でVSTiを切り替えるだけで自動的にテンプレートが切り替わる。この機能の便利さは制作作業が始まればすぐに実感できる。画面とキーボードの"目線の往復"が少なくなるのだ。慣れてくると、画面から目を離さずに操作できるようになるので、作業が長時間になるほど身体的なストレスは格段に減るだろう。また、それらの設定はKX Editor(同社Webサイトからダウンロード可能、URLは下記)というソフトで、設定をカスタマイズ/保存できるので、曲調に応じた自分なりの設定を瞬時に切り替えることも可能だ。ほかにも特筆すべき機能として、アルペジオ機能の充実ぶりが面白い。"ARP ON/OFF"ボタンで簡単に起動するので使い勝手が良く、シンセ・リードはもちろん、ドラムやベースにも対応した342種類の基本アルペジオ・パターンに加え、"UP"、"DOWN"など6種類のバリエーションを内蔵(最大540パターン)。さらにARP EDITボタンを押せばエディット・モードに切り替わり、ゲート・タイムやスウィングなどの細かい設定/編集もできる。例えばドラムに最適化されたパターンにノコギリ波のベース音を組み合わせるなど、アイディア次第で"おっ!"と思わせるようなフレーズも作成可能だ。使い始めの段階ですぐにその使いやすさが体感できるような高い操作性を実現しているKXシリーズ。単なるUSB/MIDIコントローラーの枠を超え、フレーズのアイディア・マシンとしても非常に創作意欲を刺激される瞬間も多かった。キー・タッチやノブのカスタマイズ設定も簡単なので"楽器としてのコントローラー"を探している人にとってはうってつけの機種だと言えよう。

▲リア・パネル。左から電源スイッチ、DC入力端子、MIDI IN/OUT、外部フット・ペダル用のSUSTAIN、USB端子



▲パネル左側。コントロール・テンプレートを選択することによって、左上のCONTROLノブには30種類ものVSTiの重要パラメーターを設定可能。その下のVELOCITY CURVEボタンではベロシティ・カーブを設定できる。そのほかアルペジエイターやオクターブ切り替えボタンなども装備



▲パネル右側。トランスポートやミュート、ソロといったDAWの基本操作を行えるほかアサイナブルなボタンやカーソル・キーなども用意。またCubaseシリーズの各ウィンドウを開くことができるCUBASE FUNCTIONボタンも搭載している

YAMAHA
KX61
オープン・プライス(市場予想価格/39,800円前後)

SPECIFICATIONS

▪リモート対応DAW/Cubase 4、Cubase Studio 4、 Cubase AI4、 SONAR 6、Logic 7.2、 Digital Performer 5
▪付属品/電源アダプター、USBケーブル、DVD-ROM×2
▪外形寸法/937(W)×343.9(D)×114.6(H)mm
▪重量/4.3kg