位相/定位感が良いステレオ・マイクを搭載するハンディ・レコーダー

EDIROLR-09HR

ハンディ・レコーダーR-09HRをレコーディング・スタジオに持ち込んで実力をチェックしました。その音質がフィールド・レコーディングにどう生かせるかを見ていきたいと思います。

低域はすっきりしていて
メリハリのある明るい音色が特徴


R-09HRは最高24ビット/96kHz仕様のステレオ・レコーダー。サンプリング周波数は前モデルの倍となり、ディスプレイの面積も約2倍、ステレオ・マイクの機能向上やリモコンが付属する点などがリニューアルされているとのこと。オーディオ・データはWAV/MP3ファイルとしてSD/SDHCカードに記録します。入力や出力のレベル調節スイッチがサイド・パネルに搭載されており、携帯電話のように片手で操作可能なのも魅力。早速ステレオ・マイクの音質をチェック。アコギをR-09HRで狙い、トップにあるヘッドフォン出力から卓に立ち上げてみました。フェーダーを上げて感じたのは意外に静かな点。目的の音が鳴ってないときに周囲から発せられる暗騒音がかなり少ない印象です。低域が控え目なのでしょう。その特徴はアコギのサウンドにも出てきます。低域はやはり控え目で1kHz辺りにガツッと前に出るポイントがあり、そこから上の帯域はなだらかに落ちていく感じ。さらにアコギではシャリっとした部分となる10kHz辺りも持ち上がっていて、全体的にはメリハリのある明るい音質です。フィールドでの録音を想定すると、例えば人の声が響く辺り(1kHz)は上がっていて、鳥の声などの自然音に臨場感を持たせる辺り(10kHz)の高域が効いてきつつ、その間の帯域となる工事現場などから発せられるようなカンカンうるさい音が抑えられるといったところでしょうか。それはバンドでのメモ録などでも言えますね。低域にたまった感じがなく歌やギター・アレンジなどが聴きやすく録れるということです。

位相のバランスが良く
定位の見えやすいステレオ・マイク


内蔵のステレオ・マイクは無指向で、2基のマイクは外向けに約120°の角度で広がっている仕様。前モデルよりも位相や定位感が改善されているそう。楽器に使う場合、フロント・パネルを上に向けて、上方斜め45度くらいから対象に向けると一番バランス良く録れますが、リア・パネルを演奏者に向けると低域が出てくる感じです。また、トップをストレートに対象に向けると中域が持ち上がりカチッとしたサウンドになります。ステレオ感も好印象。位相のバランスが良く、定位もリアルでマイクが広がり過ぎていない感じです。アコギと歌などでデモを吹き込むときは、これくらいの方が音が前に出てくるはず。逆を言えば奥行き感が少なく感じるかもしれませんが、歌などはマイキングでベストな距離を見つければDAWなどに取り込んで、ステレオ・ファイルのまま使ってもしんのある音像になるでしょう。ディスプレイは視認性が良く、ピーク・メーターの振れが若干機敏過ぎる感もありますが、使っているうちに“このくらい振れていればOK”みたいな感覚がつかめるようになると思います。また、フロント・パネルとトップにある2つのピーク・インジゲーターと付属のリモート・コントローラーも親切。ピーク・インジケーターは入力がピークに達すると点滅するのですが、ピアノでステレオ感のチェックをしようとスタンドに取り付けたときに重宝しました。リモート・コントローラーで入力レベルを調節できるので手の届きにくい場所にセッティングしても、点滅したら入力レベルを下げればよいのです。最後にマイク入力にSHURE SM57をつないでADコンバーターをチェックしてみました。さすがにモノラルなので低域は落ちますが、非常に素直な音質でした。ドラムのオフ・マイクなどに使っても良いですね。さすがに高音質をうたっているだけあって音楽録りにたけていると思いました。マイクもADも共通して明るい音です。そしてもう一つ、電源アダプターを使うと、よりなめらかで素直な音が録れ、電池を使うとトーンのはっきりしたシャープなサウンドになります。フィールドでは電池ですからこれも理にかなっていますね。20080601-05-002

▲左から左サイド・パネル、右サイド・パネル、リア・パネル。左サイド・パネルには入力レベル(+/−)、アナログ入力(ステレオ・ミニ/外部マイク入力用)、アナログ入力(ステレオ・ミニ/ライン入力用)、右サイド・パネルには出力レベル(+/−)、電源スイッチ、ACアダプター端子がある。リア・パネルにはホールド・スイッチ、リミッター/オート・ゲイン・コントロール・スイッチ、ファンタム電源スイッチ、ローカット・スイッチ、マイク・ゲイン・スイッチ(L/H)が装備されている

EDIROL
R-09HR
オープン・プライス(市場予想価格/40,000円前後)

SPECIFICATIONS

▪信号処理/AD/DA:24ビット、44.1/48/88.2/96kHz
▪周波数特性/20Hz〜40kHz
▪データ・タイプ/MP3フォーマット(サンプリング周波数:44.1/48kHz、ビット・レート:64〜320kbps)、WAVフォーマット(サンプリング周波数:44.1/48/88.2/96kHz、ビット・レート:16/24ビット)
▪記録メディア/SD/SDHCカード
▪外形寸法/62(W)×112.9(H)×27(D)mm
▪重量/174g(電池、メモリー・カード含む)