繊細で優しいサウンドのリモート・コントロール可能な8chプリアンプ

MILLENNIAHV-3R

MILLENNIA HV-3Rはそのルックスも同社の製品らしい、豪華な印象の8chプリアンプです。本機の特徴はイーサーネットやMIDIを経由してリモート・コントロールができること。イーサーネット経由では最大99ユニット、792ものチャンネルをリモート操作することが可能です。それでは早速レビューしていきたいと思います。

ハイエンドまで奇麗に伸びる
ワイドかつクリアなサウンド


フロント・パネルは左端に大きなジョグ・ダイアルが1つと、ミュート/位相反転/PAD/48Vファンタム電源/LINKスイッチが並び、その右にチャンネル・ディスプレイと8ch分のセレクト・スイッチが配置されたシンプルなレイアウトです。各スイッチは色分けされ、認識しやすく非常に使いやすいです。チャンネル・ディスプレイはチャンネルごとのレベル・メーターのほか、ゲインの数字表示(1dBステップ、8〜65dB)で分かりやすく、その右にはメニュー・ディスプレイとメニュー・ナビゲーション・スイッチ類が並びます。まず女性ボーカルでテストしました。マイクにはNEUMANN U87Iを、コンプ/リミッターは使用せず、本機のみでのチェックです。ソリッド・ステートのプリアンプはピークに弱く、ひずみやすく、抜けは良いけど細くなって腰高になる、というイメージだったので“音は大丈夫かな?”という不安がありました。しかし、試してみるとその不安は一気になくなりました。ハイエンドまで奇麗に伸びていて、音の粒子がきめ細やかで濁りが無く、視界がクリアになった印象。さらに、より繊細なニュアンスが感じられ、柔らかく聴こえました。歌っている表情までもが伝わってくる感じです。高域だけが強調されて細くなるといった印象は無く、中域から低域もしっかり収音され、癖のないフラットでワイドな音で、今までのU87Iの印象とは違った、一皮むけた音になりました。次に、トランペット、トロンボーン、サックスの3管にU87Iを1本ずつ、男女13人のコーラスに、無指向に設定したU87Iを2本用意。ブラスはかなりレベルを突っ込みましたが、ヘッド・マージンにかなり余裕があるため、ひずみっぽくはならずにエッジがあって、しっかりと輪郭を出せた上、シャウト系のコーラスも濁らずに勢いのある音で収録できました。また両方ともオーバーダブで別パートを数トラックずつ重ねましたが、1本1本がしっかりと録れているので、音が団子状態にならずに人数感がよく分かります。機会があれば、ドラムなどの大音量の楽器や、ストリングス、アコギなどの楽器にも試してみたいです。また本機はこうした複数のマイクの場合に便利なリンク機能も用意。チェック時には、程良かったレベルが、全員で合わせてやると、音量が大きくなるケースがあります。慌ててレベルを下げようとして、せっかくとれたバランスを崩すことがありますが、LINKスイッチでグループを組んでおけば、複数のマイクの場合でもバランスを変えずに全体のレベルを調整でき、大変便利です。

リモート・コントロール時も
1dB単位のレベル設定が可能


さらに、リモート・コントロール機能を試してみました。これにはイーサーネットとMIDI経由、2通りの方法があります。イーサーネット経由の場合は、Windows専用の付属ソフト、AELogicを使用しコントロールします。ゲインやミュートなど本体のすべての機能がリモート操作できます。 MIDI経由の場合は、手持ちのMIDIコントローラーなどに、本機のパラメーターに割り振られたコントロール・チェンジ・ナンバーをアサインして操作することになります。また、DIGIDESIGN Pro Tools|HDシステムでは、同社のリモート・マイクプリであるPreのプロトコルを利用することが可能なので、Pro Tools HD Software上から直接、本機を操作可能です。ただし、操作できるパラメーターはゲイン/PAD/位相反転/48Vファンタム電源に限られます。今回はDIGIDESIGN IconのD-Control上から、MIDI経由で操作してみました。MIDIチャンネルを合わせ、HV-3Rをマイクプリとして設定、Pro Tools HD SoftwareのMic Preampsコントロール・パネルから前出の4パラメーターを操作できます。リモート操作時も、1dBステップでの細かいレベル調整が可能で、チェック中にヘッドフォン・モニターのプレイヤーに気を遣いながらやっていたボーカルなどのゲイン・コントロールがスムーズに調整できます。なお、本体のみの使用時では1グループしか組めませんが、AELogicを使用したリモート操作時は最大10グループまで作成可能です。MUTEも各チャンネルで設定できるので、慌しく編成が入れ替わる現場でも、安心して抜き差しができます。さらに、AELogicでは全パラメーターやレベル情報を16個まで保存できるので、スタジオを移動しても瞬時に再現できるところも便利です。本機はプリアンプとしての色付けをしたりするためのものではなく、マイク本来の特性をフルに引き出す製品。また、ソリッド・ステートでありながらも真空管とは一味違う、繊細で温かく、優しいサウンドが印象的なプリアンプでした。20080401-10-002

▲リア・パネル。左から電源インレット、イーサーネット接続端子、MIDI IN/OUT/THRU、右上段からマイク入力(XLR)×8,マイク出力(XLR)×8、オプション出力(D-Sub24ピン×2)、今後対応予定のD-Sub25ピンとSERIAL接続端子

MILLENNIA
HV-3R
オープン・プライス(市場予想価格/766,500円前後)

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/3Hz〜300kHz
▪ゲイン/8〜69dB
▪出力インピーダンス/24.3Ω
▪外形寸法/482(W)×89(H)×406(D)mm
▪重量/8.6kg