ミキサーを強化しエフェクトも搭載した最新版ドラム専用ソフト音源

FXPANSIONBFD2

マイクのかぶりまで収録した限りなく本物のドラム・レコーディングに近いサウンドで、ソフト・ドラム音源の金字塔となったBFD。その後継となるBFD2がついに登場です。

良い音を手っ取り早く使いたいライト・ユーザーにとっては取っつきやすく使いやすく、一方ドラムの音にこだわるドラム・マニアにとっても大幅な機能追加など、BFD2はビギナーとマニア両方に懐を広げた感じの改良です。機能だけでなく、ロンドンのエアー・スタジオで収録された55GBもの巨大ライブラリーも圧巻! あまりにも多くの機能追加と改良で全部紹介しきれるか? がんばっていきますよ!

ロンドンのエアー・スタジオで収録した
55GBの新規サンプルが付属


まずこれを語らなければ次へ進めないという話題が音質の改善です。BFD2は改良されたオーディオ・エンジンに加えて、d.camと呼ばれるモデリングものをはじめとする後述のFXPANSION独自エフェクト群をミキサー部に内蔵しました。BFD2ではこのエフェクト処理を内部で行えるようになり、内蔵のドラム・キットをミックスの最終形に近い音で提供してくれるのです。さらにプリセットでは音楽スタイルに合わせてキットのバランスやエフェクト処理が異なっており、ドライでタイトな1970年代風のものから、アンビエンスたっぷりのヘビー・ロック向きまで多数用意されています。旧BFDは良くも悪くもリアルな生ドラム素材を提供してくれたという感じで必ず自分で調整が必要でしたが、BFD2は細かなエディットが苦手な人も、すぐにパーフェクトな音で作曲に入ることができるのです。エフェクトだけではありません。根本的なオーディオ・エンジンの向上も目を見張るものがあります。“Ayotte”というBFDの付属キットをBFDとBFD2にロードしてエフェクト・オフで聴き比べてみました。明らかにBFD2のほうがサウンドに腰があって粒立ちも良く、音質の存在感、立体感が増した感じなのです、BFDでも十分良いサウンドだと思っていただけに驚きでした。最後に控えしは、ロンドンのエアー・スタジオで収録された55GBのドラム・ライブラリーです。今まで以上に、例えばスネアはセンターとエッジ寄りといった打点の違いでバリエーションを作るなど、収録音源を増やすことにより、根本的なリアルさを再現する改良が加えられています。音の入り口から出口まで抜かりのないパーフェクトな改良なのです。

ユーザー・インターフェースを一新
最大32ピースのキットを構築可能


ここからは変更点を詳しく追っていきましょう。まず驚いたのがユーザー・インターフェースの大幅な変更です。キット・ページは中央に大きく仕切られたマス目が設けられ、そこにバスドラ、スネアなど、どのメーカーのどんなサイズのドラムか、イラスト付きで表示されています。左側のKit Sizeボタンで変更すれば、基本的な10ピース・キットからパーカッションをも含めた32ピースまでマス目をどんどん増やしていけます。このマス目はホントに旧BFDよりも一見の情報量が違います。ここでは基本的な音量やパン設定、ソロやミュートなどの操作ができる上、さらにここをダブル・クリックすればすぐにキットのライブラリー選択画面に移動できるのです。旧BFDではドラム・パーツの変更に手間がかかっていたので非常に効率的になったと言えます。そして画面右下に従来のBFDでもおなじみのキット全体での調整セクションが設けられ、ドライ音、オーバー・ヘッド、ルーム、アンビエンスの調整ができます。さらにドラムにこだわるマニアをもうならせるであろう機能も追加されています。メイン画面の右上側は選択したドラム単体の詳細(プロパティ)が表示され、ここで非常に細かいパラメーターの設定ができます。ドラム単体のピッチのみならず、オーバー・ヘッドやルーム、アンビエンスへの送り具合の設定、キックやスネア・マイクのカブリの設定など通常の生ドラムでもできない個別のパーツごとの変更もできるのです。さらにベロシティによる音色の変化の調整も細かく行え、従来よりも圧倒的に表現力の幅が広がったといえるでしょう。

DAWをしのぐほどの高機能ミキサー
高品位なエフェクトも内蔵


大幅に改善されたミキサー部(画面①)はもう既にDAWのミキサーを凌駕しているかもしれません。まずパラアウトです。BFD2自体に8ステレオ+16モノ、合計32のパラアウトを備えています。それだけでもすごいのですが、ドラム・パーツをいったんまとめることができるAUXフェーダーを備えているのがさらにすごいのです。例えばスネアのトップ側とボトム側のマイクをAUXで1系統の出力にまとめたり、複数のタムを1つのステレオ・バスからパラ出しできます。ミキサーに詳しくない人には分かりづらいかもしれませんが、これでパラアウトのアサインは自由自在なのです。20080401-01-002▲画面① ミキサー・ページ。従来のBFDが1画面内にいろいろな表示が現れていたのに対して、こうしたページ切り替え方式を採用しているのもBFD2の特徴だ。ここでは左端にあるスネアの3本のマイク(トップ×2+ボトム×1)をモノラルのAUXでまとめてマスターへ出力している。こうした信号の流れがマウスのカーソルを乗せると実線で表示されるのが新しい。上部にはFXラックがあり、チャンネルごとに4基のエフェクトが使用できる。画面右下にはBFDの象徴とも言える、オーバー・ヘッド/ルーム/アンビエンス・マイクのコントロール・セクションを用意 ナビゲーション機能も特筆もの。例えばスネアのフェーダーの上にマウス・カーソルを持っていくと、自動的に音の出力先のAUX、その後のマスター・フェーダーと音の流れを赤い線で示してくれます。ミキサーに苦手な人のみならず、得意な(?)私たちですら音の流れが分かりやすく、非常に便利。DAWソフトにも搭載してほしいくらいの機能です。ミキサー部のエフェクトもBFD2のポイントの一つ。15種類のエフェクトが内蔵されていて、EQ、コンプのみならずBit CrusherやFreqShiftなどもあり、正統なドラム・サウンドから過激に変化したテクノ・サウンドまで自在に作れます。この中でもd.camとラベルされたコンプに代表されるダイナミクス系のエフェクトが特に素晴らしく、プロ・スタジオのアナログ機材の質感を与えてくれます。実際プリセットでも多用されていて、BFD2のプリセット・サウンドがまるで市販CDから抜き出したかのように聴こえるのはまさにエフェクトの素晴らしさからなのです。またエフェクトを含めたミキサー設定のプリセットもあるので、一から音を作るのが苦手な人も安心です。

パターン作成機能も新規搭載
パラでの書き出しも一発で完了


ドラムを打ち込むのが苦手な人にも超リアルなドラム・パターンを提供してくれるのがグルーブ機能です。今回さらに磨きがかかって5,000種以上のパターンに増え、さらにそのうえ自分でパターンを作成できるようになりました(画面②)。パターン作成にはDAWソフトにもよく見られるドラム・マトリクスを採用し、作成したパターンやほかのパターンも容易に鍵盤上に並べられるようにレイアウトされています。また、このパターンを画面上部に並べて、1曲分のドラムのトラックを完成させることも可能です。20080401-01-003▲画面② 新たにパターン作成/エディットも可能となったグルーブ・ページ。DAWソフトなどでも一般的なドラム・マトリクス方式を採用しているが、縦軸上にはキット・ピースはもちろんピースごとの奏法の違いなども用意されている。例えば、ハイハットのオープン具合なども画面上で確認しながらプログラミング可能だ。その右側にはパターンをMIDIノート・ナンバーへアサインするセクションを用意。そして画面上部では曲の構成に合わせてパターンを並べ、1曲分のドラム・トラックを構築することもできるこのグルーブ・エディット・ページの中で、非常に楽しみな機能があります。それはパターンを並べてドラム・トラックを作成したら、それをオーディオ・データとして“書き出し”できるのです。どの音をパラで書き出しするかはミキサーページでフェーダー下にある赤い“R”ボタンを選択し、実行するだけ。これで1曲分のドラム・レコーディングがあっという間に完成してしまいます。頭の良い人はすぐに思いついたと思いますが、“DAWで作成した1曲分のデータをパターンとして取り込めば、DAWで録音=オーディオ・ファイル化する手間がなくなるのでは?”。これは大正解です。取り込みにはDAWとシンクするやり方といったんスタンダードMIDIファイルに書き出してインポートするやり方と両方できます。現状では少しバグがあるようで、たまにうまくいかないこともありますが、バージョン・アップで改善されれば手放せない機能となるでしょう。使えば使うほどそのリアルさに惚れ込んでいったBFD2。小さな難点といえばCPUパワーの消費量がすごいこと、メモリーもふんだんに用意する必要があります。コンピューターのパワーアップとインストール用ハード・ディスクの空き容量を確保するのが悩みの種でしょうか?
FXPANSION
BFD2
52,290円
(アップグレード版/27,300円)

REQUIREMENTS

▪Mac/Mac OS X 10.4以降、PowerPC G5もしくはINTEL製CPU(Dual/Quadもしくはマルチコア推奨)、1GB以上のRAM、60GB以上のハード・ディスク空き容量。Audio Units/RTAS/VSTおよびスタンドアローン(Core Audio/ReWire)対応
▪Windows/Windows XP(SP1以降)/Vista 32、Pentium 4以上のCPU(INTEL/AMDマルチコアCPUを推奨)、1GB以上のRAM空き容量(2GB以上を推奨)、60GB以上のハード・ディスク空き容量。RTAS/VSTおよびスタンドアローン(ASIO/ReWire)対応