USBオーディオ・インターフェースを内蔵した小型パワード・モニター

ALESISM1Active 320USB

ALESISから小型パワード・モニターでUSBオーディオ・インターフェースとしても使用可能な新製品が発売された。最近熱いこのマーケット、興味津々で早速チェックしてみた。

間違った音作りに
敏感なスピーカー


まず箱から取り出して、小さくて軽いのに驚く。左右合計で3.4kg、特に、アンプを搭載していない左スピーカーはあまりの軽さに落としそうになる。すべての入力やヘッドフォン・アウト、ボリュームなどは右スピーカーに集中している。外観は実際に見ると落ち着いていて大人な感じ。右スピーカー背面にはアナログ入力が、TSフォーン、RCAピン、ステレオ・ミニ端子の3系統で搭載されている。それぞれにオーディオ・インターフェースやCDプレーヤーなどを接続して鳴らしてみた。右スピーカー前面のツマミを右に回すと、まず電源が投入され、次第に音量が上がっていく。アナログ3系統はパラレルに接続され、同時に3系統すべての入力の音を再生可能だ。つまり、この3系統の入力はすべてをつなぎっぱなしにしておいてもいいわけで、外部ミキサー要らずだ。左右とも出力は10Wなので3系統分をつっこむと音が割れるのだが、基本的にニアフィールドで使うスピーカーなので音量的な問題はないだろう。幾つかのソースを試してみると、音がうまくまとまっていてウーファーとツィーターのコンビネーションが良いことに気がつく。クラシックやアコースティックな楽曲もそつなく再生してくれる。逆に打ち込みもなどで中低域のピークがきつくなると、音量がさほど出ていなくても箱鳴りを起こす。音作りの間違いには敏感なスピーカーだ。スペック上は、80Hz〜20kHzという周波数特性ではあるが、実際の低音はけっこうあって、60Hz以下のサイン波もその存在が確認できる。背面のBASS BOOSTをオンにすると小音量でも低音を楽しめるが、音の変化が大きいので音楽制作時にはオフにしておいた方がよい。なお、背面にダクトがあり、ここから音が抜けるので、壁にぴったりつけると低音が反射して音が不正確になるため、壁から離して設置した方がいいだろう。ちなみに、いつも自分で使っている小型パッシブのスピーカーと比較しながら聴いたのだが、音のスケール感や奥行き、広がりなどはサイズ的に劣るものの、全体像のつかみやすさという点では本機の方が分かりやすい。また、音量を上下しても音の印象が変わらないのも長所である。

気軽に接続できるUSB入出力は
すっきりした音質


本機のもう1つの特徴は、USB端子を通じて直接パソコンにデジタル接続可能な点。最高16ビット/48kHzに対応しており、DAWなどの音をUSB経由で再生できるだけでなく、前述のアナログ入力3系統に接続した外部音源をDAWなどに録音することもできる。Windows/Macともにプラグ・アンド・プレイに対応し、特別なドライバーは必要ない。WindowsでASIOを使いたい場合にはASIO4ALLドライバーをwww.asio4all.comからダウンロードすればよい。手持ちのWindowsノート・パソコンとUSBケーブルで接続すると、すぐに認識し音が出る。DAWソフトのSTEINBERG WavelabでASIOドライバーを使用し、レイテンシーの設定を256サンプルまで下げてみたが、ノイズもなく音質も問題なし。デジタル接続を全く意識させない気軽さだ。アナログ接続した機器の音を再生しつつUSB端子から録音、すぐにUSBから出力して再生、という手順は大変便利だ。USB接続の場合の音質は、アナログに比べるとすっきりしているのだが、ここで1つ気になる点が。アナログ接続に比べると、USBのデジタル出力の音量が小さいのである。DAWから0dBの信号を送り本機の音量を最大にしても、アナログ入力時の半分くらいの音量になってしまう。実際の音楽制作では、トラックのノイズ確認などで基本的にもっと音量が必要になる。しばらく作業したところで、音量がもの足らなくなり、アナログ接続に戻してしまった。M1Active 320USBの長所は素直で聴きやすい音質だ。余計な色づけをしていないし、サイズを大きく聴かせるための無理はしていない。作業デスクの上で耳を正確に狙うように設置すれば、ほどほどの音量でかなり快適に作業できる。ホーム・スタジオであまり音量を出せない場合は、本機で作業を進め、低域や奥行き感などはヘッドフォンを併用する、というのも良い作戦だろう。3系統のアナログ入力で他の音響機器をまかなうのも良い。また、3.4kgという機動性を生かし、さまざまなロケーションの録音時にモニターとして持ち出すのも良い。ただし、USB入力とアナログ入力の音量のバランスは今後の修正点だ。20080401-04-002

▲右スピーカーのリア・パネル。左上から左スピーカーとの接続端子、AC VOLTAGE SELECTスイッチ、電源インレット、右上からUSB端子、ステレオ入力(ステレオ・ミニ端子)、BASS BOOSTスイッチ、アナログ入力(TSフォーン、RCAピン×各1系統)

ALESIS
M1Active 320USB
20,790円/ペア

SPECIFICATIONS

▪周波数特性/80Hz〜20kHz
▪ツィーター/25mm
▪ウーファー/75mm
▪アンプ出力/10W
▪外形寸法/127(W)×153(D)×190(H)mm
▪重量/3.4kg(ペア)